婦人科便り245 退院の基準 | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

ネタ提供ウェルカムですが
最近ご質問内容が
すでに記事になっていることが多くなってきました。
お手数ですが、まずはブログ内をご検索ください。

ネタ提供ありがとうございます。

 

まだまだコロナが祟っておりやす。

いい加減、「ふつうの風邪」認定してもらいたいものだが

未だ、「手術室に持ち込んでなるものか」

ってことで手術の前後のマダムには

コロナPCRが課されているようです。

 

コロナが猛威を振るって

大事な人をたくさん亡くしていた頃の

あの記憶がまだまだ医療の最前線に根強く残っていて

「ふつうの風邪」とか言ったら

殺されそうな雰囲気もまだあります。

もう「ふつうの風邪」だけど。

インフルエンザとほぼ同等と思われるがいかが。

 

 

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Q.

術前、入院期間は10日〜2週間と言われていましたが、

主治医、執刀医がコロナにかかり

自分も濃厚接触者とされたことから急遽、

術後5日目に退院となりました。

もう少し病院でゆっくりするつもりだったのが

いい意味で?予定外となりましたが、

退院の基準はあるのですか?

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私が駆け出しのころは開腹術だと

がんに対する大きな手術でなくても

1か月くらい入院させてましたことよ。

術前検査も精密検査も入院してやろうぜ!

という風潮でした。

検査も処置も手術も全部

「出来高」という、名目ごとにお値段設定されており

検査すればするほど儲かるシステムになっていたのが

その理由。

 

今は、入院すると

その病名に対しての価格がおおよそ決まっており

何か想定されない検査や処置が加わると

病院がその定価の中で負担する「丸め込み」システム。

誰が作ったんだろうね~

性格わるーい、ちょっと禿げたお役人を今、

想像してる。

 

例えば、腹腔鏡下子宮全摘術

全額自費だと手術の料金は

45万円くらいとお上が決めている。

合併症が起きてしまい、

入院中にもう一つ別の手術をしても

45万円以上は支払われないため

そこは丸め込まれてしまうわけです。

(ただし、麻酔は2回かけますんで、

麻酔料金はダブルで取られるでしょう。)
 

ところで入院費は

手術、麻酔、処置プラス、何にもしなくても

1日2~3万円が「看護料」ってことで

かかってきます。

 

病名によって何日まで入院していてよい、

とされる期間が

3段階くらいに分かれて値段設定されており

ある一定の期間を過ぎると

一日当たりの料金がぐっと下がります。

腹腔鏡手術だと術後3日目から3万円から25000円に下がるイメージ。

(私も詳しい値段までは覚えていない)

長期に渡ってぐずぐず入院してても

まあ、なんとかゼロにはならないので

大部屋で何もしないで

ぼーーーーーーーーーっとするだけでも

ビジネスホテルに泊まるくらいのお金が垂れ流しにはなる。

 

ただし、いつまでも患者さんを

用事もないのに入院させていると

前述の性格のわるーいちょいハゲおやじ

(と、想像してるだけ)が

「無駄に儲けるな!」といちいち口をはさんでくるんで

せっせと退院を促す羽目になります。

お上、怖いんだもん。

 

医療上は「完全社会復帰」までには

腹腔鏡手術=2週間

開腹手術(良性)=1.5か月

開腹手術(悪性)=3ヶ月

程度と個人的には考えておりますが

上記のような政治的、医療経済的事情から

腹腔鏡手術=1週間

開腹術(良性)=10日間

開腹術(悪性)=14日間

程度を入院期間と設定している病院が

多いと推測されます。

 

それに基づき

病院にはそれぞれ「クリニカルパス」なる、

標準治療の日程の目安が作成されており

それに則って、

「いついつくらいが退院ですよ~」と言っております。

 

あとはこれに沿わない病状の方も大勢いらっしゃるんで

貧血のチェックだの、創の治りだの

異常な出血や熱が出てないかだの

照らし合わせて最終的には主治医が退院を決定します。

具合が悪い人を帰れ!とは言えないし

チョ~~~~~元気な人を帰るな、とも言えない。

言えないが、まあパス通り帰ってもらう方が

全てにおいてすんなりは行く。

どうしても帰りたくないマダムがいる場合

元気ならとっとと帰ろ?と言わねばならんのは

こういう理由です。理不尽

 

病院も営利団体、霞を食っては生きてはいけぬため

ある程度、生き残っていくための事情も

ちょいと加味されておる、と

お考えいただければ。

病院が無くなったらさすがに困るやん?みんな

 

料金について気になる人は清算時に渡される、

あのちょーめんどくさい明細票をご覧ください。

たいていのマダムは請求書をもらっても

額面だけ見てぽーーい、としている可能性があるが

あれは「厚生労働省からのお便り」

と思って間違いない。

性格の悪いちょいハゲおやじ(しつこい)が

性格の悪さを思い存分発揮して張り切って作った

診療報酬のルール

何度見ても泣ける。号泣。

 

そんなこんなが入り混じって

決められている退院日。

この話を参考に、今一度振り返ってみていただけると

新しい世界が開けてくる・・・かもしれないYO