婦人科便り182 手術延期の基準とは | 婦人科備忘録

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ある婦人科医の独り言です

渋りに渋り、そこをなだめすかされて

ようやく手術が決まったのに

やけに体調不良があり

明日入院だというに

「・・・わたし、手術受けて大丈夫なん?」的な

疑問が湧くマダムも少なからずおられると思う。

 

このブログのどっかに

既に書き散らしたと思うのだが(無責任)

自分で探すのがめんどいため

もう一度まとめておきます。

分かるように小見出しつけるの重要ね・・・

もはや自分でも手に負えない。

 

さて、

20数年前、わが子がとある手術を受けることになり

某こども病院にかかっていたのでありますが

万難排して日程を調整したにも関わらず

直前に「とびひ」なるものになってですねー

主治医に「延期したほうがいいんちゃうん」

言われたことがあります。

ところで医者ってのは

若けりゃ若いほど融通は利かないもので

修行中の身、ほぼ奴隷待遇

有休休暇?それっておいしいの

えー、おいしいんだー。

で、どこに売ってあるの?くらいの勢い。

ゆえになっかなか「休みを申請しなおす」ことが難しい。

働き方改革に期待したいところだが

今現在もそんなに大手を振って

休める環境ではあるまい、と推察する。

 

当時、主治医の先生は私より

ちょっとばかりおにーさんであったが

休みを変更する、その手続きの道のりと

上司の斜め45度のご機嫌を思い出し

少しばかり目眩がしていた私の立場を瞬時に察し

「・・・ま、おかーさんがいいなら

 予定通りしましょう」

と言ってくださった。

いや、止めてよ。体当たりで。

 

時に親には、わが子に伏して

詫びねばならぬ事案が発生する。

手術そのものはとてもうまくいったが

まあ、とびひ、悪くなったよねー

休みが日程通りいかなかったのは言うまでもない。

おーまいがー

その後無事に大きくなりましたけどね、

うちのコムスメ。とびひって怖いね。

話には聞いてたけどさあ。

 

ヒトの体の中には免疫システム、

という独自の軍隊のようなものを持っていると

想像していただけると分かりやすい。

この軍隊は、個人で戦力が異なり

しかも限界がある。

同時に二つ、三つの敵をやっつけようと思うと

いかんせん、戦力を分散せねばならず

一つ一つの戦闘に苦戦する。 

 

結論として

術前に風邪をひいた、仕事が忙しくて過労気味

歯が疼いて腫れてきた、熱がある!

喘息の発作を起こした、などなど・・・は

本当は手術を延期したほうが無難である。

特に嫌なのは「歯のトラブル」と「喘息発作」です。

歯に取り付き歯肉炎など起こすばい菌は

感染性心内膜炎などの原因になりやすいし

喘息は元気な成人が死ぬかもしれない、という

可能性のある病気であるからして

できれば「今、あたし、絶好調~!!」な時に

手術を受けに来ていただきたい。

 

一番元気な時に手術はするもの、という

一見本末転倒な物言いではあるが

人間の免疫システムは万能ではない。

術後になかなか退院許可が降りず

やきもき&心痛するよりは

担当医の言うことを

大人しく聞いておかれるがよろしい。

万が一術前に体調が悪くなった場合、

このブログ全体を通して繰り返すが

アメリカ大統領以外は全世界的に替えが利くため

一時的に職務を離れても世界情勢には変化がない、

とご承知おきの上

日程の再調整をお願いします。


とはいえ、術後

ちょっとばかし肺炎になってもよければ

まあ、手術しないこともない。

(誰か止めてー)

そこらへんは恨みっこなしってことで。