ケルンパ先輩の一言 | 団塊世代の"愚考にため息"

団塊世代の"愚考にため息"

ふと思い出す過去の出来事と後悔。次々と、浮かんでは消えていく愚考を書きとめていけば、いつかはネタ切れになるはず。きっとその後は、良き日々の思い出だけが浮かんでくるにちがいない。

学生時代、ケルンパ系全学連の活動家であった先輩の一言を、今でも折に触れて思い出します。


「疲れたら休めばいい」


当時、この一言は日和見主義ではないかと反発しました。何よりも、ヒヨル(闘争現場で逡巡して逃げる)ことを嫌う武闘派セクト出身者が口にする言葉ではないと思いました。永くしがない勤め人を経験してはじめて、先輩のこの一言を理解できるようになりました。年齢差は数年なのですが、とても超えられないほどの格差を感じました。


「休む」と「動かず」の戦術はだいたい同じかと思います。
疲れたり、問題解決に行き詰ったり、どうしてもこれ以上前に進めないときに「休み」ます。一旦休んで、気力を回復させて再挑戦します。孫子は、兵法「五道あり」で、前・後・右・左・動かずという5つの兵法を説いています。情報不足では十分な戦況分析ができず、十分な分析ができなければ勝率は不透明になりますので、動かないという最高の戦術をとるといいます。


宮本武蔵は生涯無敗であったと伝えられています。
無敗の理由はシンプルで、勝てる相手とだけ戦ったからだといいます。勝てる自信がないとき、勝つ方法がわからないときは、逃げる、戦わない、すなわち戦いを「休み」ます。勝てない相手を前にして、いかに負けるかが次につながると考え、突撃して玉砕する戦術は、負け組みの美学です。ケルンパの先輩は、孫子と宮本武蔵の兵法を学生時代に、機動隊の厚い壁にぶつかりながら学んだに違いありません。


「ヒヨル」とか今なら「ブレル」の嫌うのは、過去の状況に基づく意思決定にこだわることになります。美学とは違うのかもしれません。環境の変化に応じて「変わる」ことができる生き物だけが生き残るというのが定説ですから。