韓国で、総理室(日本で言う内閣府)が民間人数千人に対し尾行や監視など不法に系統的な査察を行ってきたことと関連して、KBSの「リセットKBS」が特集を組み、大々的に真相を暴露したことから、韓国が大変な騒ぎになっています。しかもこの査察には総理室ばかりか、さらに「HP盗聴便覧」とも書かれていたと言いますが、HPとはハングルで「ヒュデポン(携帯電話)」を意味するようです。つまり総理室による民間人に対する不法な査察が、BH(ブルーハウス=青瓦台)、国情院(KCIA=韓国中央情報部の後身)、機務司(全斗煥時代の保安司令部の後身)の共同作業だったと言うことです。
慌てふためいた2MB政権は急遽、民間人査察は過去ノ・ムヒョン政権下で行われていたことであり、それは査察の対象となった2,619件のうち、2200件が現民主統合党の代表であるハン・ミョンスン氏が首相を務めていた時期に行われたものであると言うことで、責任を前政権に被せようと必至です。
しかし、前政権の時は検察による内査であり、合法的方法によるものであったことを隠したものでした。しかもノ政権下の歴代の安企部長官らが国会聴聞会で安企部が民間員を査察した事実は一切無いと証言していることなどから、ノ政権下での査察と今回の総理室による不法民間人査察とはその質がまったく違うものエアる事が明白になっています。
そればかりか、民主統合党は民間人不法査察を行っていた総理室傘下の公職倫理支援室のメンバーらが、査察が行われていた間に総195回もBH(青瓦台)に行き来していた記録を公表し、民間人査察と関連して名の上がっているイ・インギュ前公職倫理支援官、ジン・ギョンラク前公職倫理支援官室企画総括室長、キム・チュンゴン前点検1チーム長、ウァン・チュンシク前事務官らが2008年7月16日から2010年6月23日までの青瓦台に足げく出入り(報告)していた事実を明かしたのです。もちろんこの全てが民間人不法査察を巡る報告あるいは指示を受けるためだとは言えませんが、民間人不法査察と青瓦台との関連は事実に間違いなく,統合民主党は全出入り記録とその内容を明かすことBHに要求しています。
この民間人不法査察の実態が明るみになったことから、いま韓国の政局は蜂の巣をつついたようなパニック状態に陥っています。
ところでこの問題を考える際に大事なことはなぜ「リセットKBS」がいまになってこの衝撃的な事実を暴露したのかという事です。つまり背景を正確に認識することです。
第1に11日に総選挙があるという点です。11日には総選挙があります。今回の選挙は2MB政権の退陣を巡る選挙となるでしょう。泡沫野党は別にして野党は選挙協力を実現し各選挙区で1体1の対立構造を作り上げ、2MB政権の国会を野党が牛耳ることで2MBの手足を縛ろうとしているわけです。いや、これまでの2MBの失策、わけても今回の政権ぐるみの民間人不法査察の責任を追及して大統領弾劾を行おうとする気配もはっきりと表れています。事実2MBの弾劾の理由には事欠くことが無いでしょう。
特に今回の事件で世論は2MBから大きく離脱しており、野党支持率がうなぎ登りです。公認候補問題を巡り一時下回った野党支持率が急激な回復を見せ、セヌリ党の控えめな目標である120議席確保もほとんど不可能な状況です。民主統合党は無論、分けても進歩党合党の支持率は急激に高まり、進歩党合党は40以上の議席を確保する可能性まで出ています。
第2に、現在韓国のマスメディアが2MBのマスコミ囲い込みに反発して軒並みストに突入していることです。2MB政権はMスコミ掌握を狙っていわゆる「落下傘人事」を通じてMBC、KBS、YTNなどの3大公営放送の社長を強制的に2MBに忠実なイエスマンと首をすげ替え、言論統制を強化し御用言論に作り替えることを狙って、言論の使命に忠実であろうとする記者らを大量に解雇したのですが,これが逆に言論人の強烈な反発を生み、マスコミ関係者らのあいだで「独立運動」が大々的に起きています。
政権からの「独立」を勝ち取るというわけですが、実は管理人はこの問題で連載を書こうと準備していたのですが,韓国の政情が急変を見せたことから、マスコミ闘争については次の機会に書くことになりそうです。
さて、解雇記者、カメラマンらは民主言論獲得を目指して自主的に独自のメディアを作り、これまでにないマスコミのあり方を市民の前に示したのであり、市民らの圧倒的な支持を受けています。今回の不法査察問題を暴露した「リセットKBS」はKBSを解雇された14人の記者、カメラマンが自主製作した番組です。以前に管理人は「ニュース打破」を紹介しましたが、このメディアもやはりこうした過程で生まれたものです。他に現在YTNもストを続けています。すでに3ヶ月を過ぎようとしています。また、国民新聞、釜山日報がストに入っています。3月15日には聯合ニュースのマスコミ労組が全面ストに入りました。ほとんど同時に海外特派員27人もストに入りました。通信社がストに入る事によって各言論社の記事は著しく縮小し,その質も悪化しています。
彼らの共通した主張は言論者人事に対する政権,または資本の干渉、編集権侵害、公正性の確保、解雇記者らの復職です。つまり真に民主的言論システムの確保です。「リセットKBS」による民間人不法査察の暴露はこうした言論闘争が生み出した成果の一つだと言うことです。(つづく)