韓国総選挙で野党は負けたのか?(上) | 朝鮮問題深掘りすると?

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韓国の第19代総選挙が与党の勝利で終わり、年末の大統領選挙での野党候補の勝利がおぼつかなくなったというのが一般の感想のようです。しかし選挙結果を冷静に分析してみると勝利した与党も決して安心してはいられないと言えそうです。


何よりも今回の総選挙での与党の勝利は決して積極的な意味合いを持てないからです。一言で言えば与党が勝利したのではなく、野党が勝利を捧げたと言うのが真相のようだからです。野党が選挙戦術を間違ったというわけです。いくつかの例を挙げてみましょう。


まず総得票数を見ますと総有効投票数2千154万326票中セヌリ党は932万4千911票(43.3%)で、民主統合党は815万6千45票(37.9%)、統合進歩党は129万1千306票(6%)で野党連合が944万7千351票(43.9%)の得票で、野党連合が与党よりも12万 2千440票多く得票しています。


仮にこれが大統領選挙であったら野党候補が勝利したことになるでしょう。ところが総選挙では負けたと言う事です。総得票数で勝っているのになぜ獲得議席では負けたのでしょうか。去年の6.2地方選挙よりもセヌリ党は23万票少なく,野党連合は10万票を多く得票しました。


全国の得票分布を見てみましょう。議席配分を見るとソウル(46議席)と慶尚北道(16議席)京畿(56議席)釜山(18議席)大邱(11議席)に集中しています。この5地域だけで147議席です。つまりTKもしくはPK地域だけで45議席, これに伝統的な保守地盤である江原道(9議席)を含めると54議席となります。国会総議席の過半数の3分の1強です。ここを固めやはり伝統的保守地盤である忠清南北道(19議席)で数議席を獲得すれば過半数確保も難しくないと言うことです。


ところがこの慶尚道、大邱、釜山、地域で野党がまったく歯が立たなかったわけです。ソウルでは勝ったが慶尚南道と釜山、江原道では完敗したということです。


ところで慶尚南道は朴正熙独裁政権時代の与党の完璧な地盤でした。朴独裁政権はいわゆるTK(大邱、慶尚北道)を地盤としてきたわけですが、その地盤はセヌリ党の代表であり、与党の時期大統領候補として揺るぎない地位を保っているパク・クネ(朴正熙の娘)が譲り受けており、李明博政権登場後、釜山をこれに加えてPK勢力と呼ばれる保守地盤を作り上げました。


結局、金大中―ノ・ムヒョン政権の10年にわたる民主化の流れは朴正熙独裁政権の社会政治的地盤を崩せなかった、つまりそれだけ民主化が安易なかたちで留まってしまったことのつけを払わされたと言うことです。つまりTK(PK)を崩せなかったのが最大の敗因だと言うことです。もっとも民主統合党のムン・ジェイン氏が釜山で当選していますが、こう言ったら孤軍奮闘した本人に対して失礼ではあり,身も蓋も無い言い方になりますが、せいぜい五寸釘を一本打ち据えたと言う程度でしょう。


もちろんパク・クネの拠地地で当選したのですから大統領選挙でその五寸釘が風穴となり,台風の目となるかも知れませんが。いずれにしても民主統合党はこの地域を崩すのに失敗したと言う事です。


つぎに昨年以来の民衆闘争の拡大と勢いに野党連合が依存する一方で「李明博審判論」だけで選挙をたたかおうとした点も挙げられるでしょう。具体的には次回に譲ります。(つづく)