数千人の民間人不法査察が明るみに パニックに落ち込んだ2MB政権(下) | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

民間人に対する2MB政権ぐるみの不法な査察(尾行、盗聴、身辺調査など)が行われていたことが明るみになった事から、総選挙を前に早くも「台風」予想が出ています。総選挙ばかりか、年末の大統領選挙にも大きな影響を与えるのは必至です。すでに308人の市民社会団体の代表者ら,著名な人士らによる「民間人不法査察真相究明および責任者処罰訴求非常時局会議」(時局会議)が発足しました。


同時局会議は記者会見で「今回の事件は単純な職権乱用事件ではなく,民間人を不法に査察し査察の証拠を隠滅し、これをむましようとする中で青瓦台、国務総理室、検察、与党などが全て直接あるいは間接的に係わっている総体的な権力型非理事件」だと規定しています。


また「民間人不法査察と隠蔽は民主主義を蹂躙し、憲政秩序を破壊し、国家を紊乱させる重大な犯罪行為」だとし、「韓国版ウォーターゲート事件、いやそれ以上かも知れない残酷な事件に対して国政の最高責任者であるイ・ミョンバク大統領は国民に謝罪するばかりか直接この事件の真相を告白すべきである」と主張、2MBに対し次のように正面から攻撃しています。「これまでに明るみになった状況と証言を総合すれば民間査察の始まりから終わりまでの全てが大統領に向かっている。そのため国民は大統領こそが本体だとの疑惑を拭えないでいる。」


つまりこの事件に2MBが直接絡んでいることはも、はや自明の理であり、超然とした態度を取れる立場ではなく、大統領として責任のある態度を取るべきだと迫っているのです。そしてこうした警告は単なる文言ではなく,すでにその兆候さえもが現れていると言うのが現実です。「民間人不法査察真相究明および責任者処罰訴求非常時局会議」(時局会議)が発足したのもその一つです。もちろんこうした状況は総選挙を前にセヌリ党を深い危機感の中に貶めて今す。


セヌリ党のイ・ヒェイフン選対総合状況室長29日、初磐の勢力分布について「セヌリ党に勝算がある地域は70選挙区、野圏が勝利するのが146選挙区」、「もし野圏が相当に善戦した場合、比例代表まで含めて190議席に達するものと見られる」とし、「極めて悲壮な覚悟をもって選挙に臨む」と発言したことにも表れています。


もっとも前日には「勢力版図を見ると心配していたのよりも良い」としながら「140議席は可能だ」と自信を見せていたのです。この僅か一日後の豹変をどう見るべきでしょう。保守票を最大限に動員するために危機感を煽ると共に、投票率を出来るだけ抑えようと言うようです。野党性向の投票者の主要な世代は最も忙しい中堅層であるので勝利が確実と思えば投票所に足を運ばなくなる可能性が高いのです。これを狙ったのでしょう。随分とせこいやり方です。しかしいずれにしても切羽詰まった感がしないでもありません。


しかもセヌリ党は新人としてパク・クネが直々紹介し、直接選挙区まで赴き激励したソン・スジョ候補が資金捻出疑惑で、元オリンピック選手で教授のムン・デソンは論文盗作発覚で、移民者のイ・ジャスミンは学歴詐称と言う具合に、新人ホープとして大々的に打ち出した候補が軒並み選挙法違反だと厳しい追及を受けているばかりか、民間人査察問題と関連したパク・クネがどっちつかずの八面鳥面をしていることから歴史的に民間人査察の元祖はパク・クネの父である朴正熙だった、あるいは「リセットKBS」による暴露以前には口を閉ざして、問題が大きくなるやあるときは青瓦台、つまり2MB政権と距離を置き、あるときは2MB政権と共同歩調を取るなど、コウモリの動きをしたことから,結局はイ・ミョンバクとパク・クネは同じ穴の狢だという印象を強く与え、「イ・ミョンバク・クネ」と二人を結びつけた呼び名まで生まれる始末なのです。


わけても「ノ・ムヒョン政権もイ・ミョンバク政権も査察をしたのは同じだ」と、つまり両非論を担ぎ上げて自分だけは超然とした立場を取るというセヌリ党の姿勢は逆に民衆の眼に薄汚く受け取られ(事実そうなのですが)与党支持率を著しく低下させています。


        朝鮮問題深掘りすると? 民間人不法査察を報じた「リセットKBS」

結局「リセットKBS」の民間人査察暴露報道(それこそメディアの命を賭けた権力からの独立闘争が生んだものでしたが)は,公認問題で支持率を落とした民主統合党や同党との選挙連帯を実現した統合進歩党のイ・ジョンフィ代表の陣営が、統一候補選定のための世論調査で誤解を生みやすい弘報を行ったことから、訴えられるなど(イ・ジョンフィ候補が統一候補を辞退したことから問題は解決したが)で一時期、野党も勝利を確約できないと言った危険な状況に陥ったのを一気に挽回するきっかけを作ることになったのです。


これはマスメディアが自分の使命に忠実であれば、権力を監視し、不正な権力を糾弾する上で決定的な役割を果たすことができると言う事を実践を通じて示してくれたものです。


もっとも、護送船団方式の、横一線並びの、そうであっては決してならないはずなのに、流れに流されるだけが能の日本のマスメディアには、こうした真にメディアらしい活動など望めるわけでもありませんが、うらやむばかりでは情けなさ過ぎます。


韓国の政情は今後大きく変わることが予想されます。総選挙でセヌリ党選対総合状況室長の発言通りに仮に野党が190議席前後でも取れば,即刻イ・ミョンバク大統領弾劾決議へと進むでしょう。そしてそれが実現すれば、南北の関係も180度変わるであろうし,日韓関係もより原則的になるでしょう。アメリカの対朝鮮政策にも少なくない影響を及ぼすでしょう。日本政府ははたしてこうした変化にどれ程対応できるのでしょうか。このままでは日本は孤立を深めるばかりのように思えるのですが、管理人のたんなる杞憂でしょうか。(おわり)