アメリカの大企業、北朝鮮投資を伺う | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

アメリカの自由アジア放送が朝鮮半島問題専門家の発言を引用して、世界的企業の対北朝鮮投資に対する関心が高まっており、強力な対北朝鮮制裁措置を加えているアメリカの大企業も北朝鮮への投資を政府に申請しているといいます。


同放送によれば、韓米経済研究所(KEI)の主催で15日にワシントンで開かれた「北朝鮮に対する外国人の直接投資」と題した講演会で、米戦略問題研究所太平洋フォーラム(Pasific Form CSIS)のケビン・シェパード博士がそのように主張したと言います。


ケビン博士は「実際に、現在4つの米国会社が北朝鮮に投資したいと米財務省の海外資産統制室(OFAC)に申請し回答を待っている」と発言し、これらの会社はコンサルティング、エネルギー、水力発電、鉱物産業体であることがわかったと放送は伝えました。


さらに彼はディズニー社を例に取り、アメリカの会社がヨーロッパの子会社を通じて北朝鮮に投資したこともあると明かしました。かれは北朝鮮のアニメ会社がディズニーの「ライオン・キング」やフォックス社の「ザ・シムスンズ」などの製作を行ったと付け加えたと言います。


しかしディズニーのアニメ「ライオン・キング」がピョンヤンのアニメ会社によって製作されたことは、北朝鮮を訪れたことのある人々にはすでにひろく知られた話しです。管理人もそのことはずいぶん以前から知っていました。「ライオン・キング」だけではなく、「シェラザード」なども製作したといいます。現在もフランスやイタリアのアニメを製作していると聞いています。北朝鮮のアニメ製作の水準は高く、今は3Dアニメの注文製作も行っているようです。


日本のアニメ「銀河英雄伝説」も韓国に発注したのが回りまわって北朝鮮で製作したといいます。当時「銀河英雄伝説」の製作の責任者(小林正夫氏)がそれを確認しています。


ところでシェパード博士は講演後の自由アジア放送とのインタビューで、「北朝鮮にいわゆる『隙間市場』があるのか」との質問に、鉱物産業がアニメ産業とともに「投資の収益性の潜在力が大きな市場」だと答えています。


ケビン・シェパード博士の講演内容は、現在の朝米関係を考えた場合、意外に思われるでしょう。しかし、それが現実なのです。アメリカの資本は政府の政策さえも超えて活動します。その方法もヨーロッパの子会社(ヨーロッパ法人)をうまく使って、政府の政策と抵触しないように知恵を絞っています。日本の大企業とは腹の座り方が違うと言っておきましょう。それよりも底の深さだと言い換えてもよいでしょう。


管理人はシェパード博士が有力な投資対象として鉱物産業を上げている点に注目します。朝鮮は世界有数の鉱物資源国であることはよく知られています。現在中国がレア・アースの輸出を規制しているために、日本やアメリカが困っていると言いますが、そのレア・アースも無尽蔵にあるといいます。実は小規模ながらも一時期日本にも輸出していたのですが、ばかげた制裁のためにそれも断ち切れました。


北朝鮮には日本が遠い海外から輸入している鉱物のすべてが、ほとんど無尽蔵と言っていいほど潤沢にあります。鉄鉱石、鉛、ボーキサイト、ウラニウム、無煙炭、レア・メタルのほとんど、黒鉛、そして原油(政治的理由とともに、まだ採算性が合わないようで大々的な開発は行っていないようですが)と、今のところ発見されていないのはコークス炭程度です。中国は鉄鉱石や無煙炭を積極的に輸入しています。すぐ隣の国に日本が必要としている鉱物のすべてがあることがわかっているのに、効果のまったく無い「制裁」措置のために手を出すこともできないでいる状態は、やはり異常でしょう。


その点、中近東や欧米の企業は先を読んでいるようです。フランスのラファージュ、ドイツのダイムラーやシーメンス、ケントやマルボロを傘下に置くイギリスとアメリカの合弁会社であるブリティッシュ・アメリカンタバコ、中東ではエジプトのオラスコム社など、すでに多くの世界企業が進出しています。スイスは製薬会社を北朝鮮に設立しました。


アフリカや、ラテンアメリカ諸国も同様です。世界的資源獲得競争が進めば各国の北朝鮮アプローチはより積極的になると考えられます。このままではいつの間にか日本が入り込む余地がなくなってしまうのではないでしょうか。仮にそのような事態が生じたとき、それは実に漫画的です。