KBS、「天安艦」事件で合同調査本部のでっち上げを追求 | 朝鮮問題深掘りすると?

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政府の圧力によって放映中止の危機に陥っていたKBSの「追跡60分」がついに放映されました。李明博政権登場後、社長の首がすげ替えられ、言論の使命から遠ざかっていたことから国民の不評を買っていたKBS製作陣が、政府との激突まで覚悟して渾身の力を振り絞って闘いぬいた結果です。


テーマは「疑問の天安艦、論争は終わったか?」と題し、天安艦事件の真相を追うと言うものです。番組が追求した主な点は△天安艦の船体と魚雷の残骸に残っていた吸着物質の正体は何か、△民軍合同調査団が発表した魚雷爆発地点は正しいか、△バブルジェット爆発の際に必ず生まれる水柱は実際に起きたのかというもの。


政治的圧力との攻防をする中で、魚雷推進体のプロペラの穴の中に付着していた帆立貝のなぞ(*それが魚雷爆発は無かったことを示していたこと、*国防部がそれを除去(証拠隠滅)したこと、*しかも相当以前からそこに付着していたと言う専門家の主張に対し、爆発によって2.5cm x 2.5cmの貝のかけらが海流に乗って穴の中に入って付着したと言い張った挙句に、その穴が1.8~2.0cmしかなら無いことがわかったこと、*分析すると言って除去した貝を持ち帰っては、全国貝類学会に実物ではなく、2枚のかけた貝柄の写真を送ったこと-それが魚雷に付着していた貝のかけらかどうかは客観的に立証するすべがない)と関連して、八方から非難を受けた「事件」に関する部分や、天安艦搭載武器をすべて回収し公開すると国会監査で約束しながら、だまし討ちのようにすべて爆破してしまったことなどに関する部分は削除されました。


しかしそれでもずいぶんとがんばったこととがわかります。放映されないかもしれないと言う危惧を感じながら、涙ぐましい努力をしたのでしょう。


それでも番組で放映した問題点は、「天安艦は北の魚雷爆発によって生まれたバブルジェットによって切断された」という合同調査本部の結論のなかで核心的根拠にかかわる問題です。それだけに、ずいぶんと意義のある番組でした。


KBS「追跡60分」のホームページ


番組を通じて新たな事実が掘り起こされました。


第1に、すでに当ブログでもお伝えした魚雷推進体に付着していた吸着物の正体が、これまでの民軍合同調査団の発表(つまり韓国政府の公式見解)とは違って、チョンギヨン安東大学校のチョン・ギヨン教授が明かしたとおり(つまりカナダメニトバ大学のヤン・パンソク教授の主張や米バージニア大学のイ・スンホン博士,ジョン・ホプキンス大学のソ・ジェジョン博士らの主張のとおり)であったことを、合同調査団の中心的人物でもある国防科学研究所のイ・グンドク博士が「(チョンギヨン博士が解明した)黄酸塩水化物だというのはわれわれも予測したうちのひとつ」だと認めたことで、「政府が発表した内容が科学的に間違いであった」、あるいは「政府が事実どおりに記載しなった」という指摘を合同調査団が認めたことです。ついに国防部が後退し始めました。


番組では取材源保護のために公開しなかったけれど、やはり合同調査団のメンバーであった他の学者もまた「(合同調査団が公表した魚雷の爆発によって作られた)アルミニウム酸化物でないかもしれないとおもったが、それをいえる雰囲気ではなかった」と認めています。


これによって吸着物の解明問題は新たな段階を迎えることになりました。ところで李明博政権はこの吸着物こそが、「北の犯行」を裏付けるスモーキングガンだと強調してきたわけですから、その決定的証拠が崩れたことを意味すると言ってもよいでしょう。つまり「北の犯行説」が根底から崩れたと言うことです。


番組はまた、国防部(つまり李政権)が爆発地点も捏造したことを暴きだしました。具体的には書きませんが、合同調査団の見解に基づくならば、「天安艦」が、魚雷攻撃を受けエンジンが止まった状態でも、さらに潮流に逆らって艦尾が北西方面に前進していたことになります。突然大きな鯨が出現し、船を引っ張って行かない限り説明できない、摩訶不思議な現象が説明されねばなりません。


さらに番組は最も現場をはっきりと監視することのできる第3の監視所があることを突き止めました。国防部がひた隠しにしてきたことです。国防部は他の2地点の監視所の監視兵の証言を元に「爆発があった」「水柱があった」と確定したわけですが、第3の監視所の兵士は誰一人水柱を見たものがいませんでした。最も現場がよく見える監視所の兵士がそういったのです。


国防部はKBSの番組と関連して「大事なのは吸着物質が7.8㎞も離れて発見された艦首、艦尾、煙突、魚雷推進装置などでそれぞれ発見されたという点と、この物質の構造がおよび成分が同一だと言うことだ。これはある瞬間に4つの物体が同じ場所にあったことの明白な証拠であり、これは魚雷による外部爆発によって天安艦が沈没したことを立証するものだ」と言い張っています。


しかし魚雷推進体に付着した物質に対する国防部の見解が間違い(嘘)であった以上、この理屈は通らないでしょう。艦首、艦尾、煙突の吸着物は軍部が発表した水酸化アルミニウムであることに執着する以上、この理屈は途端に否定されるほかありません。またそれは「ある瞬間に4つの物体が同じところにあった」ことを否定しており、したがって「北の魚雷による外部爆発によって天安艦が沈没した」という結論が間違っていることになります。


国防部の見解はまさにKBSの「追跡60分」が追求した真相を否定できないでいることの証でしかありません。

ところで日本の国防白書は大部分を「天安艦」事件に割き、自衛隊の強化、武器禁輸3原則の見直しの必要性、北朝鮮の軍事力強化に対備する必要性などを強調しています。日本の自衛隊、右翼勢力にとっても「天安艦」事件は必要なものであったことがわかります。そしてどうあっても「北の犯行」で無ければならないと言う強い思いを持っていることがよくわかります。やはり日本は危険な選択をしているようです。