北朝鮮 MDシステムを構築、GPS撹乱装置も | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

朝鮮労働党創建65周年記念軍事パレードについてはすでに書きましたが、その記事の中で簡単に指摘したこと、つまり北朝鮮が「迎撃ミサイル総合体」なるものを保有していると言う点について、再度扱おうと思います。


「迎撃ミサイル総合体」の実態は何かと言う問題です。まず下の写真を見てください。これがその迎撃ミサイルの本体だと思われます。パレードで初めて姿を現しました。この写真には載っていませんが、車両に搭載したレーダーシステムも一緒に姿を現しています。見た目、ロシアのS-300シリーズと似ています。もちろん兵器の国産化を大原則としているので、輸入したのではなくそれをモデルに独自開発したと見たほうがよいでしょう。レーダーシステムも同様です。

北朝鮮がMDシステムを開発し保有しているのと関連して、以下のような事実もあることを見逃すことも出来ません。


2010年8月23-25日にかけて朝鮮西海ではGPSシステムが受信障害を起こす現象が反復して起きたと言います。ちょうど米韓両軍による乙支フリーダム・ガーディアン演習が行われていました。


ところがこの問題と関連して10月4日、韓国の金泰泳国防長官は国会国防委員会国政監査で、「(西海で発生したGPS受信障害の)一部は北韓によるものとと判断される」と明かし、5日の国政監査でも、「北韓のGPSジャミングは新たな脅威であるために、今後確認すべきことが多い」「対備策を講じている」と明かしました。また放送通信委員会はGPS受信障害をもたらした電波の発信地が北韓の開城地域であることを確認したと、チョ・スンヨン議員に提出した資料の中で明かしています。


ご存知のように、米軍のほとんどの誘導兵器は人工衛星によって座標がインプットされるGPSシステムに基づいています。このGPSシステムに混乱が生じた場合、誘導兵器はそれまでです。もちろんアメリカが誇る無人誘導爆撃機や巡航ミサイルなども用を足さなくなるでしょう。ところがそのGPSシステムを混乱させるシステムを北朝鮮が保有しており、それが新たな脅威になると認めたのです。


先軍政治に基づく北朝鮮の軍備拡充は実に驚異的なスピードで進んでいます。迎撃ミサイルシステムまでも、知らぬ間に完成させているようにです。北朝鮮が「核戦争には核戦争で迎え撃つ」「先制攻撃の権利はアメリカだけではなく我々にもある」また「お前も死に自分も死ぬではなく、お前は死に自分は生きる」と、北朝鮮軍部は再三に渡って言明していますが、その言葉は根拠の無い単なるブラフではないようです。


北朝鮮の軍備拡充は結局、朝鮮半島での戦争が、東アジア全体に悲惨な結果をもたらすであろうことを予言させます。それはアメリカの核戦争恫喝を終わらせるために、北朝鮮が戦争防止、核戦争に対する抑止戦力を構築した結果です(北朝鮮が60年にわたってアメリカの核恫喝を受けてきた点については前々回のブログ記事で指摘しテいるので参考にしてください http://ameblo.jp/khbong/entry-10675294877.html )。もちろん他方で戦争防止の方法についても再三訴えてきました。


朝鮮半島で決して戦争が起きてはなりません。仮に日本が直接攻撃を受けなくてすんだとしても、朝鮮半島に落とされた原爆の死の灰は気流に乗って日本に降り注ぐことになります。それが時期的にジェット気流にでも乗ればわずか1週間後には日本列島に死の灰が降り注ぎ、2週間以内にはその死の灰が東京に降るだろうと言われます。日本も無事ではいられないということです。


朝鮮半島で核戦争を予防する唯一の方法は、アメリカが現在の敵対的朝鮮政策を転換し、朝鮮戦争停戦協定を締結することで、現在休戦中の朝鮮戦争を完全に終結させ、さらに朝米が平和条約を締結することで朝鮮半島で核戦争の起きない法的要件を整えた上で、朝鮮半島を非核化し、核戦争の起きない秩序を構築することです。


そしてその意思があることを北朝鮮は再三にわたって表明しています。残るはアメリカがその意思を表明し、実効性のある対策を講じることです。しかし残念ながらいまだにアメリカはその意思を示すこともなく、引き続き北朝鮮を核先制攻撃の対象にし、韓国で核戦争演習を絶え間なく実施しています。


したがって必要なのはアメリカの政策転換なのです。もちろん今のところアメリカが自ら進んでそうした転換を行うとは思えません。そのため国際的世論がアメリカに圧力を加える必要があります。ところがそれさえも不十分だと言うのが現状です。そうした中でアメリカの核戦争体制に強烈な打撃を与えるべく北朝鮮が孤軍奮闘しているとはいえないでしょうか。そうしてそうであれば北朝鮮が行っている銃声のない対米戦争、つまり積極的な対米外交はまさに東アジアの平和と安全のために、続けられているとはいえないでしょうか。