中立国監督委員会にも「洗濯された情報」を与える | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

朝鮮戦争停戦協定の履行を監督する使命を帯びた「停戦協定中立国監督委員会」が、駐韓国連軍(米軍)司令部軍事停戦委員会の「天安艦」調査を参観する過程で限界的な情報だけを提供され、いわゆる「駐韓国連軍の調査結果」を認めさせられたと言うことが、今になって明らかになりました。


もともとこの「停戦協定中立国監督委員会」は、米軍が北側の猛反発と度重なる警告にもかかわらず、米軍(国連軍)側停戦委員会代表の座を停戦協定に違反して、まったくその資格のない韓国軍に与えたことから、北側が中立国停戦監督委員会メンバーを公式に撤収させ、停戦委員会の北側代表も解散し、停戦協定中立国監督委員会も朝米軍事停戦委員会も崩壊したとの立場を公表したことから麻痺状態に陥り、無いのも同じ状態にあります。北朝鮮側は軍事停戦委員会の変わりに朝鮮人民軍板門店代表部を別に構成し、現在この代表部が米軍(国連軍)停戦委員会との交渉、折衝の場に姿を現しているだけです。


このようにアメリカは、米軍(国連軍)停戦委員会の名によって国連安保理に提出した、「天安艦」事件「国連軍調査チーム」の調査結果報告書の「客観性」「正当性」を、なんら実のない中立国監督委員会まで動員してアピールしようとしたのです。


ところが中立国監督委員会は、そうした米軍の気も知らないでか、なんと自分らにはいわば「洗濯された情報」のみが与えられたと指摘した報告書を、米軍(国連軍)停戦委員会の報告書(「天安艦」事件調査に関する)に添付していたことがわかったのです。


この事実が知らされたのは13日、韓国の「参与連帯」がこれを入手し、公開したことからです。


これによると「中立国監督委員会」は米軍(国連軍)停戦委員会報告に添付された別途参観報告書で、「中立国監督委員会参観人らは情報ブリーフィングに参加するのを許されなかった」し「スウェーデン代表は洗濯されたバージョン(scrubbed version)の情報ブリーフィングを提供された。ポーランドとスイス代表らも取捨選択された情報に限って別途のブリーフィングを受けた」と指摘しています。


また「十分な水準の透明性に到達するためには中立国監督委員会が朝鮮半島に派兵した国家(交戦国)と同じ水準で秘密情報に接近できる制度が整えられねばならない」と強調しています。


つまり「中立国監督委員会」は判断に必要な情報を与えられなかったということであり、これまでも停戦協定履行に関する監督業務を遂行するために必要な情報が、まったく与えられてこなかったと言うことです。


もちろん中立国監督委員会は結局のところ、「中立国監督委員会が接近することの出来た資料に基づいて」という制限をつけたうえで、「天安艦沈没と関連して停戦協定が違反されたという結論を下す」とし、「国連軍特別調査チームの勧告を支持する」としています。


つまり中立を守るべき「中立国監督委員会」が、「洗濯された情報」「制限された情報」のみを与えられ、米軍の主張を認めさせられ、支持させられたということです。もちろん「中立国監督委員会」は「停戦協定違反があった」ことを認めただけであり、米軍(国連軍)特別調査チームが「北の犯行」と断定したのとは距離を置いています。また「中立国監督委員会」が支持するとした米軍(国連軍)特別調査チームの勧告には北朝鮮を糾弾する文言が無く、ただ朝鮮人民軍と中国が軍事停戦委員会に復帰し、参観チームを派遣しなければならないと勧告したものです。


米軍(国連軍)停戦委員会は5月20日の韓国「民軍合同調査団」による調査結果発表直後に米軍が責任を持つ特別調査チームを構成し、1週間にわたって調査をおこない、その結果を7月23日に国連安保理に提出しています。「中立国監督委員会」の報告はこの報告書に添付されたものです。


はっきり言ってそう驚くことでもないようです。こうしたことは日常茶飯事的に行われていることでしょうから。大体から中立国監督委員会がまだ存在するのは、米軍が国連決議に違反して国連軍の帽子をかぶり、国連旗をひるがえすために必要だからであり、したがって米軍の必要に応じて存在しているわけですから、米軍が発言権など与えるはずがありません。にもかかわらずその「中立国監督委員会」がアメリカの神経に障るようなことをしでかしたわけですから、よっぽど不満が募っているのでしょう。


しかし、どうしても解せません。米軍(国連軍)特別調査チームは、安保理に提出した調査結果報告の中で朝鮮人民軍と中国に「天安艦事件調査参観チーム」を派遣することを勧告しているのですが、なぜか現在行われている板門店での朝米軍事接触(朝米将官級軍事会談予備接触)で、朝鮮人民軍側が繰り返し主張している、朝鮮人民軍と米軍が「天安艦」沈没事件を合同で調査しようと言う提案をかたくなに拒んでいるのです。米軍側の態度があまりにも頑ななので、板門店に証拠品を運びそこで合同調査しようとまで人民軍側が大胆に譲歩しているにもかかわらずにです。


米軍はただ参観(つまり直接関与せずに横で見ていろというわけですが)せよというのはあまりにも虫が良すぎます。「中立国監督委員会」に対してしたように、「洗濯された情報」「取捨選択された情報」のみをあたえられ、「納得せよ」とでも言いたいのでしょうか。


それがでっち上げであることを立証し、真の犯人が他にいることを証明しようと言うのが北側の主張なのですから、米軍の言い分はとても受け入れられないでしょう。しかも米軍側は北朝鮮の犯行を立証するのに完全に失敗しているのですから、北側の主張を受け入れられない理由は無いはずです。いや「北の犯行」を立証することに失敗したゆえに北側の主張を受け入れられないのでしょう。


第3者にはすべて「洗濯された情報」「取捨選択された情報」だけを与え支持を強要するとは、いったいどんな理由からなのか明らかにすべきでしょう。