黄昏のアメリカ、金が無いから海外駐屯軍を撤収? | 朝鮮問題深掘りすると?

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初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

アメリカ経済が泥沼から這い上がれそうも無いようです。アメリカ経済の3大アキレス腱といわれている貿易収支、不動産市場、雇用などが同時に悲鳴を上げています。


貿易赤字は前月比8.8%増加した463億ドルを記録しました。今年に入って8月までのアメリカの貿易赤字規模は実に3349億ドル、前年同期が2650億ドルだったので40%近く貿易赤字が増加したことになります。


不動産市場を見ると銀行ローンを返せなく差し押さえされた件数が史上初の10万件を越えました。不動産調査機関であるリアルテトラックが発表した報告書によると9月中の住宅担保貸し出しの返済延滞で所有権が銀行に移った住宅は10万2134件に上ったといいます。これにより9月までに銀行に所有権が移った住宅は81万6千件に達します。とくに差し押さえ手続きが進行中の住宅が8月よりも3%増加した34万7420件と集計されていますので今年だけでも120万件が銀行の手に渡りそうです。


雇用はと言うと、15日に発表された先週の新規失業手当申請者が予想を超えて先週よりも13000件増加した46万2千件を記録しました。専門からによれば通常、新規失業手当申請者が40万件以下に下がってこそ雇用事情が回復期に入ったと見られるといいますから、まだまだのようです。


アメリカは貿易、雇用、不動産の指標が悪化するやその負担を中国にかぶせようとしています。むろん貿易を見ると8月の対中国貿易赤字が280億ドルを越え、2年ぶりに最高値を示しています。米商務部によれば8月の対中国貿易は輸出73億ドルに対し輸入353億ドルで、2008年10月以降で泰中国貿易赤字が最も高い記録を示したと言います。全貿易赤字の60%が対中赤字ですので、アメリカが中国に不満を持つのはわかります。そして中国に対して人民元の切り上げを要求したくなる気持ちもわからないではないです。


しかし根本的には自国の経済政策がもたらした結果を、貿易赤字が大きいと言って中国に負担を迫るのはお門違いでしょう。負担は当然にアメリカ自信が負うべきです。しかしそう考えないのがアメリカです。何事においても自国は正しく間違っているのは他国だと信じきっている眼下無人、唯我独尊の国家がアメリカですから。


ところで経済苦境から逃れられない中で、米議会議員らがアメリカの財政赤字を縮小するためには、過度な国防費を削減しなければならず、とくに駐韓米軍を含む海外の米駐屯軍に対する予算を縮小すべきだと主張しはじめています。


米上下議員57人は13日(現地時間)、財政責任と改革委員会に送った書簡で、7120億ドルに達する国防予算の削減が財政赤字を縮小する最も実現可能な方案の一つだと主張したと自由アジア放送が伝えています。


これら議員のほとんどが民主党議員ですが、この書簡は米連邦財政赤字規模縮小の方案を作るために構成された委員会の最終報告書の提出期限である12月を控えて提出されたものです。


議員らは国防予算が連邦裁量予算の56%を占めており2001年以降の予算増加分の65%を締めていると指摘し、このうち37%は戦争遂行とは関連のない予算であり、したがって国家安保を害することなく国防予算を相当縮小することができると主張しています。


とくにアジアとヨーロッパなど海外駐屯米軍の費用を槍玉に上げています。米軍駐屯国は相対的に裕福な国であるので米軍駐屯予算を再検討すべきだと言うのです。


書簡は駐韓米軍について明示的に指摘していませんが、この書簡の作成を主導したバニー・フランク(民主、マサチューセッツ)下院議員は、7月始めにマスコミとのインタビューで駐韓米軍撤収について言及しており、同月末には議会の要請を受けて作成された国防費削減のための報告書で、やはり駐韓米軍の削減について提案しています。


アメリカの経済的苦境が米軍の海外駐屯を難しくしていることの現れですが、この問題は両面を持っていると思われます。一面では駐屯軍の削減という要求であり、他面では駐屯軍受入国の財政的負担の増大要求に繋がると言うことです。どちらの可能性が高いかは米政府の軍事外交政策によって決まるでしょうが、その結果は韓国と日本とではまったく違うでしょう。


韓国の場合は、第一に戦争に直面している地域だと言うこと、第二に米政府は朝鮮半島での戦争に巻き込まれたくないと考えていること、第三に韓国に対する財政負担の増額要求は韓国民の反米意識を大いに刺激するということ、などから駐韓米軍撤収もしくは削減のほうに傾く可能性も考えられるが、日本の場合はそれらの不安要因がないということから、返って駐屯費負担額の増額を要求してくる可能性が高いと思われます。なんせ日本には「思いやり予算」などといった特別な支出項目があるのですからアメリカとしてもやりやすいことでしょう。


それにしても自国の経済失政の結果を、他国に対する圧力でまかなおうとする米国のあつかましさには、実に恐れ入って言葉が出ません。まさに「滅び行く大国」の姿を目の前で見ているようでもあります。早めに手を切っておいたほうが得策のようです。