内憂外患、四面楚歌の韓国政権 | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

韓国の政情がいよいよ怪しくなっている。全斗煥軍部独裁政権を打ち倒した6・10 6月民衆抗争勝利22周年を迎え、再び各界各層から時局宣言が発せられ、民主勢力の反李明博政権闘争が隊列を組み始めたのだ。

当ブログでは、去る3日にソウル大学の教授らが時局宣言を発表して、李現政権下で韓国の民主主義は死滅しようとしており、李政権は責任を取って退陣すべきだと主張する大学教授らの時局宣言が後を絶たないと伝えてきたが(http://ameblo.jp/khbong/entry-10275634811.html )、実際この動きは急速に拡大している。


8日には李大統領の母校である高麗大学の教授ら131人が「現時局に対する提言」と題した時局宣言を発表し、「今日、韓国の民主主義は深刻な危機に直面している。現政府に移り、疎通の通路はいたるところで屈折し、遮断された」「公権力が国会に侵入し、(ソウル)広場を閉鎖し、市民団体とインターネットにまでも刃を向けている。」「われわれが問題にしているのは、再三にわたって民意に顔を背ける政府の態度だ」「社会の葛藤の源泉に目を瞑り、現実を歪曲する政府の恥知らずな政策基調が、民主主義の将来に暗鬱な前兆をもたらしている」と糾弾している。高麗大は李明博政権の与党や青瓦台(政府)の主要閣僚や官僚の排出所といわれた「コ(高麗大)・ソ(ソマン教会)・ヨン(嶺南地方)」の一角を占めており、また同門でもあるので、「時局宣言」が出るかどうか注目されていたが、李大統領にとっては打撃であったろう。


また9日には建国大、慶熙大、東国大、放送通信大、聖公会大、崇実大、梨花女子大などソウル地域の大学を始め、釜山大、仁川大、全南大、など全国20余大學の1000人の教授が時局宣言を発表した。梨花女子大の時局宣言は「李明政権の執権後、引き続く抑圧的統治は大多数の国民の憂慮と抵抗を呼んでいる』としながら「ノ前大統領の死去は韓国の民主主義が崩壊し、歴史が後退していることを憂慮させる象徴的事件であった」と指摘している。延世大もこの日時局宣言を発表する予定だったが、賛同する教授が後を絶たず1日延期せざるを得なかったという。
東国大學校では「独裁権力の亡霊を憂慮する東国大学校教授96人」の名で時局宣言を発表し、独裁政権に回帰する国政運営を一新せよ、現内閣は総退陣し、国民統合と平和的な南北相生の対話を実現する能力を持った人士で再構成せよ、与党はメディア立法など反民主的悪法の強行処理を放棄し、民意を収斂し政策に反映させる政党本然の機能を回復させよ、朝鮮日報を始めとする守旧言論は国民に謝罪し、言論本来の責務に忠実になれ、と要求している。


教授らの時局宣言は学生たちの拙劣な指示を受けており、引き継がれている。この日、釜山地域青年らが「民主主義守護のための釜山青年時局宣言」を発表した。宣言意は釜山青年会、統一時代若い友、新潮流青年会、大韓仏教青年会釜山地区、釜山青年希望センター、釜山青年奉仕センター、釜慶大学校民主同門会、仁済大学校民主同門会、釜山大学校民主同門会、東亜大学校民主同門会、東医大学校民主同門会、京城大学校民主同門会、釜山外大民主同門会などが参加している。

またこの日、21世紀韓国大学生連合など8つの大学生団体と23大學の総学生会は、「ソウル大漢門前での記者会見で「大学生の力を結集し、第2の6月抗争、第2の「ロウソク闘争」を実現する」との決意で「MB OU.民主回復のための大学生行動連帯(仮称)」の結成を提案した。

時局宣言は大學の壁を越え、社会各層にまで広がっている。民主党、民主労働党、創造韓国党青年委員会、宗教青年会、市民社会団体青年活動家、青年ネチズン(ネット市民)、進歩青年運動団体活動家400余人は9日、ソウル徳寿宮大漢門前で記者会見を開き「6月民衆抗争継承・民主主義守護のための青年時局宣言』を発表している。

全国農民層連盟も同日時局声明を発表し、「農者天下之大本を財閥天下之大本に変えるつもりか」と詰め寄った。


さらに韓国作家会議所属の文化人513人は、同日「李明博政府の独裁回帰を憂慮する文化人時局宣言』を発表、「今韓国の民主主義は退行の水準を超え崩壊直前へと向かっている。」と指摘し、ノ前大統領の死と関連した李明博の国民への謝罪と、特別検査制による真相糾明、公権力による治安統治の中断、言論弾圧中断ならびにメディア悪法の廃棄、6.15.10.4宣言継承および冷戦的対北政策の即刻中断、報復政治の国政運営撤回などを要求した。韓国作家会議が個別作家らの連盟で時局宣言を発表したのは、すぐる10年間で初めてのことだ。同日、
これとは別に詩人、小説家、評論家ら188人の文人で構成された「6.9作家宣言」が発表されている。

また何処にも所属していない少壮派文人らは、オンラインカフェなどを通じて趣旨に賛同した文人ら200余人があつまり、「一人一行時局宣言」を発表している。所属団体が無く、政治とは無関係に美学的モダニティや自由主義的性向の若い作家たちが、自ら進んで結集し当代の政権を公開批判するのは韓国文壇史上初めてのことだ。

時局宣言は仏教界も襲っている。「仏教人権委員会」は同じ日、「現時局を憂慮する108人時局宣言」を発表したが、今後第2次として500人、第3次1250人、第4次1万人へと宣言参加者を拡大していく予定だ。


このような時局宣言は、李明博政権下で民主主義が破壊され、独裁政権への回帰現象が起きていることに対する、広範な各界各層の危機感の水位を良く見せてくれる。「時局宣言」は朴正気熙軍事独裁政権末期のいわゆる「緊急措置の時代」といわれた時期に登場し、「良心宣言」とともに国民を反独裁闘争へと大いに奮い立たせた有力な闘争の武器である。韓国では今まさに、その「時局宣言」が急速に全土を覆いつつある。

そしてこれらの時局宣言が、6.10 6月抗争22周年を反独裁民主回復闘争の契機と捉えたうえで発表されていることを思えば、6.10以降、韓国の政情が思ったよりも危機的様相を見せる可能性も否定できない。例えばこのたたかいが現在進行中の自動車、金属労総などの労働争議や11日からの貨物連帯労組の全面ストライキなどと結合した場合、その破壊力は爆発的なものになろう。実際、貨物連帯労組の2003年の釜山港封鎖ストライキによって、韓国全体の物流の80%が止まったという分析まで出ている。


日本では伝えられていないが、現在李明博政権は経済苦境と民生の破壊、北朝鮮の核実験と南北関係の遮断、軍事的緊張の激化、執権勢力内部の権力争い(与党内、与党と青瓦台)の激化、国民の反李明博運動の急激な高揚など内憂外患、四面楚歌の総体的危機に見舞われようとしている。

日本政府の対北朝鮮外交が、少なからず韓国の対北政策に影響を受けることを思えば、日本政府も今の韓国の政情について冷静に考えるべきであろう。韓国がいつまで対北強硬姿勢を取り続けることができるのか、この問題は考えようによっては日本の対北朝鮮外交に決定的な敗北をもたらす可能性さえあるのだ。もしかしたら、その危機感から韓国の政情から目を背けているのかもしれないが、仮にそうだとしたら最悪の対処法であろう。