民主回復国民委員会結成へ | 朝鮮問題深掘りすると?

朝鮮問題深掘りすると?

初老の徳さんが考える朝鮮半島関係報道の歪み、評論家、報道人の勉強不足を叱咤し、ステレオタイプを斬る。

日本のマスコミは取り扱わないが、韓国の政情が極めて重大な岐路に差し掛かっていると言えそうなので、お伝えすることにした。韓国の政情の変動は日本にも重大な影響を及ぼすので、これを取り扱わない日本のマスコミに疑念を持ちながら書いている。

去る3日、ソウル大の教授ら124人が、「李明博政府は民主主義を守らねばならぬ」との時局宣言を発表したが、これに続き同日午後、中央大学でも67人の教授が時局宣言を発表した。1987年と2004年の弾劾事態以後、中央大教授の時局宣言は初めてだ。5日には慶南大、嶺南大など大邱・慶北地域の教授200人が時局宣言を発表している。成均館大、延世大、漢陽大、韓国外大の教授らも時局宣言の発表を準備中だという。


しかも民主化のための全国教授協議会の関係者によると、こうした各大学での教授らの「時局宣言」の発表について、まったく把握していないと言っているので、各大學で教授らが自発的に自身の意見を明らかに表明したものとして受け止められている。また教授らの時局宣言に続いて、延世大、高麗大などソウル地域を始め全国40余の大学では総学生会が5日、一斉に時局宣言を発表、このうち36大學では6月民衆抗争22周年を迎えて大規模集会が予定されている10日まで、各単科大学別に学内で時局大会を開くという。

高麗大など全国30大學の総学生会と42大学の代表2386人は、この日、ソウル広場で発表した「大学生時局宣言」で「独裁政権に対抗していかなる弾圧にも屈せずに最後まで戦い勝ち取った血塗られた民主主義の歴史は、2009年を生きるわれわれ大学生に、過去ではなく現在の歴史としてたち現れた」とし「われわれ大学生はこのような悲劇の歴史をもたらしている李明博政府に対し、責任を問う」と詰め寄った。
全国42大學では10日まで、各大学別に時局宣言を発表していく予定であり、10日の集会にも大挙参加する予定だ。
去年7月の「ロウソク政局」のときに民主化のための全国教授協議会、学術団体協議会、全国教授労組など教授3団体を中心に時局宣言を発表したことはあったが、各大学別に「時局宣言」を発表するのは異例のことだ。大学教授と大学生らの時局宣言の形を取った集団的意思表示は、過去に李承晩警察ファッショ政権を打ち倒した4.19民衆蜂起や全斗間煥軍事独裁政権を打ち倒した6月民衆抗争時の様相を呈しながら拡大している。

他方、民主党、民主労働党、進歩新党など野党4党と市民・社会団体、4大宗団、学会代表者、各界元老などは、5日、聖公会大聖堂で6.10汎国民文化祭準備委員会を持ち、文化祭の終了後に「6.10 6月抗争継承・民主回復のための汎国民大会」発足と、時局宣言方式の「民主回復国民委員会」発足宣言文を発表する予定だ。
発足宣言文は、「李明博政権の民主主義ー民生破壊が極致に達し、没常識の権力行使が日常化している昨今の現実の下で、国民は再び22年前の6月、あの熱かった民主主義と国民主権の喚声を臨んでいる』としながら「再びわが国民が一つに集まり、6月抗争の精神を研ぎ澄まし、現実の多くの矛盾を解決するために連帯し、行動しなければならないときだ」と訴えている。
そして①大統領の謝罪と相対的、根本的な国政基調の転換、②検・警を前面に押し立てた強圧統治の中断と反民生、反民主悪法の撤回、③金持ち偏向性尺の中断と庶民生活の再生政策の最優先施行、④南北間のいかなる形態の交戦反対、および南北間の平和的関係の回復を4大要求案として確定した。そして具体的な細部要求として①法務部長官、検察総長、大検中央捜査部長辞任、環境破壊・4大河殺す開発中断、②反民主・反民生悪法即刻中断、拘束者の釈放および赦免復権、集会・示威の自由保障、医療民営化反対、韓米FTA反対、③富者減税100兆ウォンなど富者・財閥建設社に対する特恵政策中断、庶民予算35兆ウォン最優先確保、「龍山惨事」「朴・チョンテ問題』の解決、④6.15,10.4宣言の全面履行および南北間平和的関係回復などを要求している。

宣言文には李明博大統領の退陣要求が無いが、李政権の6.10国民大会と、「民主回復国民委員会」に対する対応次第では、一気に李明博退陣運動に発展する可能性が濃い。


また全国労働組合総連盟と韓国進歩連帯など市民団体は13日、6.15級同宣言発表9周年を記念して「6・15自主統一文化祭・ハナ」を開く予定だ。この文化祭は民主労総、進歩連帯、ソウル統一連帯、平和統一を開く人々、4月革命会、韓国青年団体連合(準)などの市民団体と、民主労働、進歩新党などの政党が共同で主催する。
参加者らは翌日の明け方まで文化祭を行い、午後2時からは同じ場所で行われる「6.15共同宣言9周年汎民族実践大会』に参加する。どう大会は6・15共同宣言実践南側委員会と民主、民労、創造韓国、進歩新党など野党4党で組織委員会を作り共同主催する。大会後デモを予定している。

つまり、大規模集会が予定されている6.10の6月抗争22周年と、6.15南北共同宣言9周年を繋いだ民生・民主・統一運動が、組織的に急速展開されるというのだ。しかもノ前大統領の死がもたらした、広範な国民の反李明博政権感情の予想以上の拡大を背景にして、大学教授や大学生らの時局宣言に見るように、運動は急速に拡大している。


ところで驚いたのは、こうした反李明博運動の急速な進展を見て朝鮮日報が、国政刷新の民衆的要求を拒否している李明博大統領に対して、「このまま行けば李明博政府は『植物政権』『半身不随政権』になるであろうし、これは保守勢力の早期退潮につながる」と危機感をあからさまに表していることだ。
朝鮮日報は5日号に「李明博大統領は変わらねばならぬ」と題した社説でこう主張したが、それは「街頭に散らばっている民心が求めるのは国政運用基調の変化であり、それはなによりも大統領自身の変化を要求している」と李大統領を直撃している。
朝鮮日報の急変は、ほかでもなく現在の韓国を覆っている異常気候が大暴風雨になると予想し、このままでは朝鮮日報をも含む保守陣営全体の急激な退潮をもたらすこともありうるとの深刻な危機感を表したものだと受け取られている。それは次のようなくだりにもありありと見受けられる。「大統領任期半ばで政権が植物政権に転げ落ちれば、世界的経済危機の中で韓国は方向を失った船になるであろう」し、それは「李明博政権、ハンナラ党政権の没落だけでなく、この国の保守勢力の全般的早期退潮につながるであろう」
そして「失敗した政治の責任は大統領が取るしかない。大統領はもはや変わるべきだ」と訴えた。


朝鮮日報は言わずと知れた韓国最大の右翼新聞。産経新聞とは「刎頚の友」だ。李政権のもっとも強力な後ろ盾であり、検察とともにノ前大統領の自殺にもっとも大きな責任があると追求されている新聞である。その朝鮮日報が「敗北宣言」とも受け取られかねない泣き言を社説で書いたのだから、韓国の右翼・保守勢力の危機感がどれほどのものか良くわかろう。
民主勢力に同情的な京卿新聞はやはり社説で、「政府が野火のように燃え広がっている時局宣言に耳を貸さずに、わが道にのみ執着すれば、遠くない将来に、収拾不可能な難局にぶつかるしかない」とし、「最悪の状況に直面する前に青瓦台が謙虚に民衆の声を傾聴すべきだ」と書いている。
日本のマスコミが隣国のこうした動きに鈍感であっていいものだろうか。何度も言うが、韓国の政情の急激な変化は日本の外交を始め、政治、経済、社会的不安感に大いに悪影響をもたらす。とくに李政権誕生後の日韓緊密化は、韓国政情の急激な変化に直接的な影響を受けざるを得ない環境を作ってきた。にも拘らずマスコミの無関心をなんといえば言いのだろう。

新型インフルエンザや、北朝鮮の衛星発射をめぐる異常な騒ぎ方を経験しているだけに、なんとも解せないマスコミの姿勢だ。