クラシエ ココンシュペールの解析3 インテンシブリペアトリートメント(ピュアスカルプ)の解析 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
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化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

 

中国に行ったり、北陸地方に自分のクリームの生産に行ったりしていたので、すっかり間をあけしまってすみません。

 

徐々に定常運転に戻していきます。

 

今回はだいぶ間があいたけど、クラシエさんのココンシュペール(ピュアスカルプ)解析の最終回をお送りします。

スカルプトリートメントの処方解析になります。

変わった製品名ですが、ボトルが印象的なので、写真を見るとあれか!と思われる方も多いと思います。

モノとしては、髪に吸着しすぎル感じですね。柔らかい髪の方には良いかもしれませんが、化粧品犬のように髪が硬くてショートだと、髪が跳ねてしまってどうも収まりが悪いです。

 

これまでの解析はこちら。

クラシエ ココンシュペールの解析1 シャンプー・トリートメント(ピュアスカルプ)商品概要編

クラシエ ココンシュペールの解析2 インナーコンフォートシャンプー(ピュアスカルプ)の解析

 

さて解析。

いつものように、裏面に書いてある処方を整理します。

 

原料の機能毎にパート分けし、パート内の表記順番は裏面のまま変えずに記入しています。

また共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。

 

こんな感じになりました。

 

では表の上の方から、解析に入っていきます。

 

まずワックスのパート。

ここはステアリルアルコールとベヘニルアルコールの2成分が使われていますが、どちらもトリートメントではよく使われる原料です。ベヘニルアルコールが入るとやや堅いクリームになります。

 

次はコンディショニング剤のパート。

一番多いのが、三級アミンという成分の一種であるベヘナミドプロピルジメチルアミンです。下の方にある乳酸で中和されることでコンディショニング効果を発揮するのですが、このブログで何度か取上げているとおり、三級アミンは髪の毛が硬くなりやすいので最近はあまり流行っていません。この製品ではこの3級アミンを、通常の4級カチオンであるベヘニルPGトリモニウムクロリドやベヘントリモニウムクロリドを少量併用して使用感を向上させる構成になっているようです。

しかし、髪への吸着が強くやはり髪を硬くし易いココイルアルギニンエチルPCAを使ってしまったりして、なかなか方針が一定しません。

スカルプだから、髪に吸着して少し硬くした方が良いと考えているのかもしれません。

また比較的新しい原料として、ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリルと言うものが使われています。化粧品犬はまだ使った事は無いのですが、これも生体膜をモデルに考えられた、皮膜性が強い原料のようで、髪を硬くしっかりさせる事に寄与しているようです。

 

次は油剤のパート。

コンディショナーやトリートメントに含まれる油は、すべて液状油でも作ることができるのですが、この製品では結構な量の固形油を併用している、というのが特長です。

具体的には、いちばん多いジステアリン酸ペンタエリスリチルと、パラフィン、そしてこれは爽快剤としての用途が主ですがメントールが固形油です。固形油が多くなると、乾燥後に髪の根元がが立ち上がる方向になります。

液状油としては、シリコンのような、すべり感が強く軽い質感の3種類の油(・コハク酸ジエチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジエチル)を使用しており、これらの効果でノンシリコン化を実現しています。

化粧品犬も、ジカプリン酸ネオペンチルグリコールはよく使うのですが、粘度が低い上に表面張力もすごく小さくて、ビーカーから移すときに、すぐにドボドボとこぼしてしまう(^_^;) ことがよくあります。

 

次は防腐剤のハート。

フェノキシエタノールのみが使用され、ノンパラベン処方となっています。

 

 

最後は湿潤剤のパート。

絹とか繭とかがコンセプトだけあって、それらを構成する原料が多いです。具体的には次の7品(加水分解シルク、セリン、プロリン、グルタミン酸Na、アルギニン、アラニン、加水分解コラーゲン)です。

しかし、それ以外も結構てんこ盛りな感じです。

多い方から目立つ物を見て行くと、まず、花王が外販している化粧品原料のPPG-3カプリリルエーテル。これはコンディショニング効果のある保湿剤です。

次は毛髪のボリュームアップ効果のある新規なポリマーの、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー。これはセラミドをモデルとして開発されたと言うふれこみの物ですね。

また、サッカロミセス/コメヌカ発酵液エキスなんてSK-2的な物も入っていたりして、まあコンセプトとの関わり右派よくわからなくなりますが(^_^;)、お得感はあります。

 

お質成分は豪華なんだけど、トリートメントとして肝心なコンディショニング剤のパートが3級アミン主体なのが惜しいです。

ここが普通にベヘントリモニウムクロリド主剤だったら、かなり良い物になっていた気がするのですが・・・。

 

lこれで解析終わり。

 

 

後は例によって、原料ごとのコメントを書いていきます

 

ワックス

・ステアリルアルコール:ヘアコンディショナーやトリートメントによく使われるワックス成分(固形油脂)のひとつ。

・ベヘニルアルコール:コンディショナーやトリートメントに良く使われる、一般的な固形油の1種。やや硬いクリームが得られる。

 

コンディショニング剤

・ベヘナミドプロピルジメチルアミン:ステアロキシプロピルジメチルアミンと同じ三級アミン類の一種であるが、疎水基が大きくなり、使用感が改良されている。花王のアジエンスのほか、クラシエのヒマワリオイルコンディショナーにも、サブのコンディショナー基剤として採用されている。

・ベヘニルPGトリモニウムクロリド:コンディショナーに良く使われているベヘントリモニウムクロリドかに、湿潤時、及び乾燥後の仕上がりまで滑らかさを強めた原料。

・ベヘンジモニウムエチルリン酸ステアリル:リン脂質構造を内部に持つジェミニ型界面活性剤で、塗布することで皮膚、毛髪表面にラメラ類似膜を形成する事ができ、被膜効果や滑り性や保湿効果を与えいるとされている原料です。一般的なタイプは、これとベヘントリモニウムクロリド、グリセリン、エタノール、水の混合物の形で販売されています。

・ココイルアルギニンエチルPCA:着性の高いアミノ酸であるアルギニンの吸着性を、さらに強化したようなカチオンです。

髪に吸着しすぎて使いこなすのがむずかしい素材なので、コンディショニング剤として使われている化粧品は多くありません。

・ベヘントリモニウムクロリド:ヘアコンディショナーやトリートメントでは主要な基剤の一つで、ワックス成分を乳化してクリーム状にする効果と、髪を柔軟にする2つの効果を持つ成分。一般的には、四級カチオンやカチオン界面活性剤と言われる成分で有り、コンディショナーやトリートメントを作るために欠かせない成分でもある。特にこのベヘントリモニウムクロリドは、水をはじく疎水基部分が長いため、親油性である毛髪表面に吸着する効果が高く、高い柔軟効果やコンディショニング効果を発揮させやすい。現在、最も良く使われているコンディショナー基剤です。

 

油剤

・ジステアリン酸ペンタエリスリチル:ペンタエリスリトールにステアリン酸を結合させた原料であり、とくにW/O乳化物の安定性を向上させ、使用感を高める効果があります。融点48-52℃のワックス状の油です。日本語の資料が少ないので調べにくい原料ですが、販売会社はBASF社で、BASFでの商品名はCutina®PESといいます。

・コハク酸ジエチルヘキシル:軽くさっぱりとした使用感の低粘性の油剤。紫外線吸収剤の溶解性に優れ、サンケア製品に使われるKともある。

・ジカプリン酸ネオペンチルグリコール:透明で無臭の液状油。粘度が低く、サラッとした感触をしている。安全性も高い。

・ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル):アミノ酸を芯にして作られた、エモリエント性と安全性に優れたアミノ酸系オイル。セラミド的な機能を持った、セラミド類似オイルであるが、液状油で配合しやすいため、口紅からスキンケア、ヘアケアまで広く使われている。

・セバシン酸ジエチル:二塩基酸のエステルで、溶解性・浸透性良、軽い感触、外用医薬品の薬剤浸透剤にも使われる。

・パラフィン:石油を精製して作られた、炭化水素が主成分の油。液体の物がミネラルオイル、固形にした物がパラフィンで、半固形の物がワセリンと呼ばれる。

・メントール :よく知られている清涼剤。育毛効果などもあります。

 

防腐剤

・フェノキシエタノール:比較的低刺激な防腐剤。ナチュラル系の化粧品に使用される事も多い。

当ブログでは、安全性については以下のエントリーで詳しく書いてます。

プロピルパラベンの安全性についての文献を紹介

 

 

保湿剤、増粘剤他

・水:精製水のこと。化粧品では通常、イオン交換水が用いられている事が多い。

・ソルビトール:糖系の天然保湿剤。

・グリセリン:多価アルコールと呼ばれる、代表的な保湿剤

・PPG-3カプリリルエーテル:花王さんが販売している新規化粧品原料で、髪にまとまりとツヤを与え、シリコーン様の感触を実現する新規成分です。花王さんとしてはこだわりがあるらしく、ラウレス硫酸Na+ラウリルヒドロキシスルタインに、洗浄剤に分類したイソデシルグリセリルエーテルと、このPPG-3カプリリルエーテルを組み合わせると、より泡が立つ・・・という、特許も書かれています(しかも国際出願WO 2011158483 A1)。

水性毛髪洗浄剤

・加水分解シルク:絹タンパクを酸やアルカリで分解して水に溶けるようにした、水溶性のタンパク質。皮膚や毛髪に対する吸着性に優れた成分です。

・セリン:中性アミノ酸の一種。角質層に最も多いアミノ酸。

・プロリン:中性アミノ酸の一種。アミノ酸の中では、PCAソーダと並び最も保湿性が高いアミノ酸。味は甘い。

・グルタミン酸Na:グルタミン酸Naは身体を構成するアミノ酸であり、旨みがあるため調味調味料としても販売されています。食品としては、様々な否定的意見を受けることも多いのですが、おおむね根拠薄弱な中傷です。美容成分としては、PCAナトリウムの形に変わって保湿性を高め、肌の角質層に多く含まれています。

・アルギニン :髪や皮膚に対して、最も吸着性の高いアミノ酸の一つ

・アラニン:中止アミノ酸と呼ばれるアミノ酸の一種で、絹糸や血液中に多く、味は甘い。しじみやレバーにも多く、健康的には肝機能を高め、悪酔いするのを防ぐ効果がある(商品化もされている)。肌の角質層にも比較的多くふくまれ、保湿機能を担っている。

・(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー:セラミドをモデルとして開発されたポリマーで、肌のハリやシワの改善、毛髪のボリュームアップに効果があるとされています。

・サッカロミセス/コメヌカ発酵液エキス:コメヌカに、酵母 Saccharomyces を加えて得られる発酵液。アミノ酸やペプチドを多く含み、肌のバリア機能を高め、保湿効果を高めると言われています。

・加水分解コラーゲン:動物の皮などを酸やアルカリなどで加水分解することで得られる保湿剤。比較的分子量が大きい保湿剤であるため、皮膚や毛髪の面ににしなやかな保湿膜をつくる効果に優れます。

・乳酸:pH調整剤。AHAの一種でも有り、pHによってはピーリング効果を示すこともある原料。

・イノシトール:生体内に広く分布している成分で、糖を原料に作られる。以前はビタミンに分類されていた。v様々な効果があるが、化粧品的な効果では発毛や育毛などの頭皮の健康を促す効果があるとされている。

・エタノール:エタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。

・ヒドロキシエチルセルロース;化粧品でよく使われる汎用的な増粘剤。

・BG :多価アルコールとも呼ばれる、グリセリンの親戚のような保湿成分です。若干の抗菌性があります。