ロート製薬スキンアクアの解析 サラフィットUVさらさらエッセンス(2016)の解析4 処方解析2 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
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化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

前前々回から、スキンアクアサラフィットUV さらさらエッセンス(2016年度版)の解析を行っています。

今回はその第4回目で、処方解析編2をお送りします。
前回も処方解析編をやったんですけど(^_^;)
前回はウォータープルーフ性を発現させる成分はなにか?に絞った解析でした。
しかし、この製品の発売してからの苦闘の歴史もまとめておきたいと思いまして。
そこで今回は、興味の無い方には申し訳ないですけど、このサラフィットUVエッセンスの難航したであろう改良の歴史を解析して行きます。

過去のエントリーはこちら。
ロート製薬 スキンアクアの解析 サラフィットUV さらさらエッセンス(2016)の解析1 製品概要編
ロート製薬 スキンアクアの解析 サラフィットUV さらさらエッセンス(2016)の解析2 耐水性編
ロート製薬 スキンアクアの解析 サラフィットUV さらさらエッセンス(2016)の解析3 処方解析1

スキンアクアシリーズ全体についてはこちらです。

ロート製薬 スキンアクアの解析 シリーズ概要編を追加

さて、これまでも書きましたけど、本製品は毎年のように、紫外線吸収剤までふくめて処方改良されてきたんです。
紫外線吸収剤まで変更するのは珍しいんですよ。
紫外線吸収剤部分を変更すると、SPFを人体で測定し直さなければならず、それって1件50万円近くしますからね(^_^;)
結果が良く無く測定をやり直したり、測定後に実は処方の安定性が不良でやり直しに。。。なんてやってるとすぐに数百万円いってしまうんです(^_^;)
しかも時間も一ヶ月ぐらいかかります。
ロート社内で発売決定が発売日の何ヶ月前に決まるかは知りませんが、処方の安定性チェックは3ヶ月ぐらいかかるし、生産についても発売日の3ヶ月ぐらい前から生産は始まっておる物なのです。
そうすると、1年って12ヶ月しか無いので、12-1-3-3=5
ということで、製品化決定期間は無しとしても(成り行きで決めるとして)、処方検討季刊は最長5ヶ月ですね。
SPF測定のやり直しとかがあると、1ヶ月単位で時間が取られるので、実際には開発期間は3〜5ヶ月しか無かったのでは無いかと思います。
これは相当、もがかないと、製品は作れません。
ロートの開発さんは、どんなことをしたのでしょうか・・・?
と、引いてみたりして(^_^;)

では、いつもの様に、裏面の処方を整理します。
今回は、2014年(初投入時処方)、2015年、2016年のサラフィットUV エッセンスの裏面表示を整理してみます。
原料の配合順は裏面のまま変えずに、機能毎にパート分けし、共通の成分についてはできる限り近づけて書いていますが、場合によって近くに書けない場合もあります。
こんな感じになりました。


3回続けて、結構な改良がなされていることがわかりますね。
2014年度品はとにかく原料数が多い。
それが処方改良やコストダウンで絞り込められていてっますね。

では、パート毎に細かく見ていきましょう。

まず油性成分を見てみると、2014年はシリコン油(シクロペンタシロキサン)も含め多くの油を使用し、それらをポリソルベート80と言う液状の乳化剤で乳化しています。
これが2015年になるとコストダウンでぐっと減らされているのですが、シリコン油も削除され迷走しています。
このパートは最終的には2016年の処方のように、撥水性の高いジフェニルシロキシフェニルトリメチコンを、固形で水に溶けないノニオンであるペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10を使って(他に2種の乳化剤を併用していますが)、乳化することで、ウォータープルーフ性をたかめた製剤を作ることに成功しています。
参考リンク
ロート製薬 スキンアクアの解析 サラフィットUV さらさらエッセンス(2016)の解析2 耐水性編
ロート製薬 スキンアクアの解析 サラフィットUV さらさらエッセンス(2016)の解析3 処方解析1

次に紫外線吸収剤のパート。
ここも激変してますよね。
そもそも最初の2014年は、紫外線散乱剤である酸化亜鉛が併用されていたんですね。
だから、2014年は紫外線吸収剤の配合が、2種類と少ないのです。
しかし2014年品は「ぽろぽろが出る:と言う悪評が高く、2015年では真っ先に酸化亜鉛が紫外線吸収剤に置き換えられています。
ここで少なくとも1回のSPF測定が必要です(^_^;)
しかし、開発期間が短かったせいか、2015年と最近の製品なのに、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンを使ってしましました。
これは昔はよく使われていたUVA吸収剤なのですが、光劣化しやすいため、最近では新規な処方にはあまり使われません
そこで2016年では、同じUVA吸収剤ですが、2005年に許可された光劣化しにくい新成分 エチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの配合順位を上げて(=量を増やして)対応したと思われます。(単にコストダウンの可能性もあります)
まあ、ちょっとやらなくて良い迷走しましたよね。
ここでも紫外線吸収剤が変わったので、少なくとも1回のSPF測定が必要です(^_^;)

乳化剤のパート。
ここは先述の通り、水に溶けない固形のノニオンである、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10の使用と、ロートの宣伝ではべたつかない使用感の「シルキーワックス」(ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン)の採用が特徴的です。スキンアクアのスーパーモイスチャージェルにも採用されている、この{シルキーワックス」を使うことで、スーパーモイスチャージェルとサラフィットUVエッセンスは、妙に似た使用感になってしまっています。

次は粉体のパートです。
もともとサラフィットUVエッセンスは、2014年の発売時にはドライキープパウダー配合が売りでした。
なので、2014年にはやけにたくさんの粉体が配合されています。
しかし、「ぽろぽろが出る:と言う悪評が高くどんどん減らされていきます。
ついに016年には、ジメタクリル酸グリコールクロスポリマー と、ポリスチレンのみになります。
これは、特にパウダー配合をうたっていない、前述のスーパーモイスチャージェルと同じ配合であり、サラフィットUVエッセンス自体もパウダー配合をうたわなくなってしまいました。
この辺りも開発期間があれば、良い粉が見つかるかもです。ちょっと残念ですね。

最後は、保湿剤、 香料などのパートです。
ここは大きな変化は無いのですが、よく見ると名前の中に「タウリン」という文字が入ったポリマー(タウリン系ポリマー)が最終的に2016年度では外されています。
最近、タウリン系ポリマーのメーカーの方に伺ったのですが、タウリン系ポリマーは紫外線に強い(紫外線が当たっても減粘しない)ので、ほ日焼け止めに良く使われているそうです。
しかし、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーのような明くるル酸系ポリマーも、EDTAのようなキレート剤を添加することで、紫外線に当たっても減粘しないようにできるのです。そこから、2016年度よりタウリン系ポリマーが外されたのは、コストダウンのため兎眼が得られますね。ここは、タウリン系ポリマーを外すまで2年かけて確認したのかもしれません。

以上で解析は終わりです。
あとから解説するのは簡単ですが、ロートさんもよくやるなあ、と言う感じですね。
来年はこれをこのまま売って、次の改良は2018年にしてあげて・・と思うのは化粧品犬だけでしょうか(^_^;)
開発の人がんばって、て言いたくなってしまいます(^_^;)

あとは前エントリーの再録になりますが、2016年度処方の原料毎のコメントを置いておきます。
油性成分
・ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン:アルコールをは じめ各種化粧品成分との相溶性に優れており、 水をはじく、べとつかない、のびが良いなど優れた特性を持っています。

紫外線 吸収剤
・メトキシケイヒ酸エチルヘキシル:UVB吸収剤。1960年代から使用されている。
・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル:UVA吸収剤。日本では、2005年から使用許可されています。
・ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン:UVA・UVBの両方を吸収する、紫外線吸収剤。日本では、2007年から使用許可されています。

乳化剤
・ビスPEG-18メチルエーテルジメチルシラン:水分散性の固形のシリコン系乳化剤。制汗剤のように、べたつきのある成分を含む用途ではべたつきの軽減効果があります。
・PEG-12ジメチコン:シリコン構造を持つ典型的な乳化剤。シリコン油と馴染みは良いため、シリコン油の多い製剤で多用される。
ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10

粉体、顔料
・ジメタクリル酸グリコールクロスポリマー:プラスチック製の微粒子で、軽いが硬く、分散性に優れている。
・ポリスチレン:プラスチック製の微粒子で、透明感が高く分散性に優れている。

防腐剤
・メチルパラベン:比較的低刺激な防腐剤。ただし、環境ホルモンや蓄積性の点で叩かれることも多い。環境ホルモンについては多くは根拠の無い噂であるが、蓄積性についてはファンケル社が学会で報告し、報文を出している。(ただし、防腐剤の蓄積による影響は、可能性レベル)
化粧品中の防腐剤は皮膚に残り、肌にストレスを与える(IFSCC*2005 in フローレンス中間大会)
http://www.fancl.jp/laboratory/report/17.html

保湿剤、 香料など
・水:水です。多くの場合は、水道水では無くイオン交換水を使います。
・エタノール:エタノールです。過去には変性剤を加えた変性アルコールが使われていましたが(変性すると酒税が回避されて安くなった)、税制が変更されて変性アルコールが値上がりしたため、現在は変性アルコールは使われず、ただのエタノールを使うのが主流になっています。
・BG:汎用的な保湿剤。各種成分を溶かす能力も高い。DPGほどでは無いが、やや抗菌性がある。
・ヒアルロン酸Na:代表的な酸性ムコ多糖類で あり、コンドロイチン硫酸などと共に哺乳動物の結合組織に分布してます。水保持性能が高いため、化粧品分野では高分子量の保湿剤として利用されています。ニワトリのトサカなどから得られる動物lll来のものと 微生物を用いる発酵法により得られるものがあります。
・アセチルヒアルロン酸Na(スーパーヒアルロン酸):天然|l1来のヒア ルロン雌にアセチル基を導入することにより、皮膚への親ホl1性が高め、使用感と角質柔軟効果を向上させた素材です。
・加水分解コラーゲン:動物の皮などを酸やアルカリなどで加水分解することで得られる保湿剤。比較的分子量が大きい保湿剤であるため、皮膚や毛髪の面ににしなやかな保湿膜をつくる効果に優れます。
・アルギニン:塩基性アミノ酸という、水に溶かすと弱アルカリ性を示すアミノ酸の一種。その性質を生かし水酸化ナトリウムやトリエタノールアミンの代替として中和に使われる事が多い。生命活動に深く関わるルアミノ酸でもあり、創傷治癒効果や肌荒れ改善などの効果もあります。
・(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー:アクリル酸ポリマーは化粧品で最も良く使われているポリマーなのですが、それを改良し、特に乳化安定性を強化した原料です。
・TEA:トリエタノールアミンを略した呼び名。有機系の中和剤で、水酸化ナトリウムの代替としてつかわれるが、中和物の溶解性を向上させる効果がある。
・ポリビニルアルコール:水溶性のポリマーであるが、重合度、けん化度のちがい により様々な性質の物が作られている。使用範囲は、パックの基剤から、化粧水、乳液、クリーム、メイクアップ等幅広い。
・EDTA-2Na:キレート剤と呼ばれる原料で、製剤の酸化安定性やpH安定性を向上させる。
・キサンタンガム:糖類をキサントモナス属の菌に与えて作らせる、微生物由来のポリマー。構造としては酸性多糖類の一種で、増粘剤として化粧品に広く使用される。