(2023/3/26追記)
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はじめに
『デリシャスパーティ♡プリキュア』は、ここ近年のプリキュア作品の中でもかなりよくまとまっており、特に全編通してのロジックの通し方が洗練されていました。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』(C)ABC-A・東映アニメーション
記事の冒頭から早速の余談で恐縮ですが、僕は菓彩あまね/キュアフィナーレ役の茅野愛衣さんが好きで、メシ・酒大好きな茅野さんが「食事」をテーマとする本作でプリキュア役に選ばれたことが、本当に尊く素晴らしいご縁だと思っていました。ジェントル―として敵対していたときから最終段に至るまで、常に格好良くて仁義を通すイケメンなお声で演じられているのが印象的でした。イケボな茅野さんもいいのだなと本作のおかげで気づきました。
さて、毎年恒例としている「プリキュア総評記事」ですが、本作は作品としてかなり高いレベルで完成されていたので特に書くことがないんだよな……と思っていたらずるずると3月になってしまいました。
毎年恒例のプリキュア総評がなかなか書けなかった明確な理由は他にもあり、昨年末から日曜日の午前中に練習のある社会人オーケストラに入ったため、ニチアサがリアルタイムで観られなくなりました。この状況になったのは2016年以来で、ここ数年はわりと欠かさずプリキュア作品を観て、年によっては戦隊や仮面ライダーも観ていたニチアサタイムが過ごせなくなってしまいました。
なので、2023年2月から放送が始まった『ひろがるスカイ!プリキュア』もろくに観られておらず、今後もしばらくリアタイで観られない時期が続くため、これまで毎年6作に渡って続けてきたプリキュア総評記事を今年についてはお休みさせていただきたいと思っています。
かつての時代とは異なり、Tverの見逃し配信やサブスクの配信があるから別に日曜朝じゃなくても観られるじゃないか、となると思うのですが、それは違うということが最近になってよくわかりました。ニチアサは日曜の朝に観るからこそ意味がある、と言っても過言ではないのです。
というわけで、今年の「プリキュア総評」記事は簡易総評という形で、例年よりもかなりボリュームダウンした形で送らせていただければと思います。それでも良ければお付き合いください。
ジェンダーロールを超えて
『デパプリ』のどのキャラクターが一番好きかというと、僕はマリちゃんなのだろうという感じです。
彼女は本編の最初から最後までずっといいバランスでいてくれました。演じられている前野智昭さんの塩梅が大変素晴らしかったです。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』(C)ABC-A・東映アニメーション
僕はプリキュアと共闘しているときにたまに出るマリちゃんの雄叫びがなぜか好きで、いざという時に発揮されるマリちゃんのパワーを本当に心強く感じていました。
夏のキャンプ会で、女子会をやりながらも夜寝るときはテントを分けてそそくさと寝ちゃっているところも、実に彼女らしい気遣いの仕方で印象に残っています。
マリちゃんと並び、僕はブラックペッパーがかなり好きでした。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』(C)ABC-A・東映アニメーション
まずデザインが素晴らしい。白と黒を基調としたスタイルの中に差し色の水色が映え、さらに胸元のリボンが結構キュートなのに男の子の格好いいキャラクターとして全体がまとまっている感じが並大抵ではありませんでした。
そして拓海くんのキャラクターもまたよい。メシ大好きすぎ・いい子すぎな反面、恋愛に無関心すぎるゆいちゃんを振り向かせるのは絶望的に無理で、その点においては最初から最後までずっと不憫でしたが、そこも含めて彼の良さと言えるでしょう。
本作における男性キャラクターの扱いは、歴代のプリキュア作品の中で一番よかったまであります。
マリちゃんとブラックペッパー、及びクックファイターの面々がすごく自然な形でプリキュアと共闘していたのが本当によかったのです。
過去のシリーズでは、男性も女性も関係なく全人類がプリキュアになったクライマックスもありました。それはそれでよかったと今でも思うのですが、プリキュアにならなくとも、男性は男性として共に協力して闘うことが別に何もおかしいことではないのだと気づけたことが、『デパプリ』の大変偉大な点として強調しておきたいのです。
さて、現行作品である『ひろプリ』では、ついにメインキャラとして男の子のプリキュアが登場するというシリーズ初の試みを行います。
かつてのシリーズでは男性がプリキュアとなることをギャグとして描く描写もあったことを思うと、ついに時代がここまで来たのだなという感じです。
よねおばあの加護のもとで
本作において、僕がもう1つ高く評価しているのが、天の声という形式です。
物語中盤・第34話「おじいちゃんはガンコ!おでんは野球のあとで」だったと記憶しているのですが、この天の声はゆいの祖母であるよねであることが明示されました。
天の声の説明が入ることによって、物語の展開がわかりやすくなり、さらに最後にまとまりがよくなるという効果があったように感じており、本編の最初の方から好印象でした。
加えて、天の声がすでに亡くなった祖母であることが明示されることによって、物語的な意義が追加され、それが非常に効果的だったのです。
おばあちゃんは亡くなってしまったが、よねおばあがゆいにかけてくれた言葉やつくってくれた料理に宿っていた精神は、今もしっかりと引き継がれてゆいの中で生きています。
それだけでなく、おばあちゃんは今も天から見守ってくれている。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』(C)ABC-A・東映アニメーション
本作を概観して振り返ってみると、最初から最後までよねおばあの掌の上だったのだなあと思うのです。
ゴーダッツのたくらみによって、世界中から全ての料理が奪われ、人々がどの料理も思い出せなくなってしまったとき、ゆいの名前に込められた「人と人を結ぶ」という思いから、「お結び」を思い出すという展開が非常に象徴的でした。
ここでは、ゆいと拓海の回想で何度も描かれた「ごはんは笑顔」のエピソードが、物語のクライマックスでよりスケールを大きくして再現されていたように捉えています。
『デリシャスパーティ♡プリキュア』(C)ABC-A・東映アニメーション
終わりに
本作のおかげで2022年は楽しかったのは確実だったのですが、いかんせんクライマックス展開を日曜朝にリアタイできていないので、例年に比べるとかなり薄い感想記事となってしまいました。
キャラクターがみんな良くて、コメコメの良さは物語中盤から映画にかけて昇華されていたのは鮮烈な印象でしたし、パムパムがここね限界オタクみたいになっているのも、メンメンとらんらんがかなり健全な感じで信頼関係を築いているのも好きでした。
ジャニオタとしては、宮田のアニキが演じるあんみつのお兄さんたちも好きでした。普通に演じ分けが本業の声優顔負けに上手くて、さすがはジャニーズ屈指のアニメオタクだと思いました。
今年の敵さんたちの様子も好きでした。
偏食や手料理が上手くいかないという理由から食事を忌み嫌うナルシストルーとセクレトルーの考えは、共感はできないものの理解はできましたし、彼・彼女が最後には気づきを得ていい方向性に向かって行くのも良かったです。また、登場から実はいいヤツムーヴをしているスピリットルーも結構気に入っていました。
ただ一つ惜しかったのはとかくラスボスのフェンネルさんの魅力がなかったことで、やっぱり大人はもうちょい大人にならないといけないのだな、とよくわかった次第です。彼に悪役としての矜持がまるでなかったのも本当にイケてなくて、僕は最後まで主君と職務への忠実さだけで動いていたバトラーさんが好きだったなと思いました。悪役は悪役の美学と矜持を持っていてほしい。
というわけで、今年はサイバーインシデントの影響で制作がストップし、数話削らざるを得なくなるという前代未聞のアクシデントに見舞われましたが、そんな大変な中でも物語を描き切ったスタッフ・キャストの皆さんに敬意を表して、筆を擱きたいと思います。今年も1年間楽しい作品をありがとうございました。