1. はじめに
生きてます。とりあえず、生きてます。
2月下旬に外部発表があり「忙しいなあ」とバタバタしているうちに3月も中旬になろうとしてしまいました。本ブログを大分長いこと放置してしまいましたが、久しぶりに何か投稿しようと思います。
個人的には、今期は結構きちんと見ている作品が多いです。
『はぐプリ』はもちろんのこと、『カードキャプターさくら』の「クリアカード編」、『ポプテピピック』、あと『からかい上手の高木さん』を見ています。
(C)2018 山本崇一朗・小学館/からかい上手の高木さん製作委員会
『からかい上手の高木さん』は何となく月曜の夜にテレビをつけたら1話をリアタイ視聴でき、みるみるドハマりしてしまいました。原作も買い、スピンオフ作品もチェックし、さらに本作をきっかけに高木さんCVのりえりー(高橋李依さん)にもハマりつつあり、りえりーを機に声豚になりそうです。
余談ですが、りえりー、94年生まれの同い年なんですよ(ただ学年は1つ上)。やはり年齢が一緒だと共感度が高いです。『気まぐれロマンティック』とか。
というわけで今回は『からかい上手の高木さん』の話をします。最初に言っておくとわりとしょーもない内容なので肩肘を張らずにお読みいただければ幸いです。
2. 島崎藤村の「初恋」
……といっておきながら島崎藤村の話をするのがこのブログです。あ、私の専門は詩です(いまさら)。
島崎藤村(1892-1943)は近代日本を代表する作家の一人です。最終的には小説家になりましたが、キャリアのスタートは詩人でした。1897年に出された『若菜集』は日本近代詩の黎明期における重要な作品として理解されています。
先月の研究発表で、島崎藤村『若菜集』とイギリス・ロマン派の詩人の影響について発表しました。ですので、本記事は私の藤村研究の「供養」でもあります。
『若菜集』に収められた「初恋」という詩は、国語の教科書にもよく掲載されているので、おなじみの作品ではないでしょうか。まずは、それを全文載せてみましょう。
島崎藤村「初恋」
まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな
林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ
出典:『藤村詩抄』東京:岩波書店、1995年。
「初恋」は文語定型詩であり、日本語が古めかしいです。なので、簡単な現代語訳(試訳)も載せておきます。
まだ結い上げたばかりの前髪が
林檎の樹の下に見えたとき
さしてある花櫛のように
美しい君だなあと思った
優しく白い手を伸ばして
私に林檎をくれたその瞬間
薄紅の秋の実に
「初恋」を見つけた最初だった
なんとなく漏れ出た私のためいきが
その髪の毛にかかるとき
楽しい恋の盃を
君が愛情深くも酌んでくれたことよ
林檎畑の樹の下に
自然とできた細い道は
誰が踏み始めたものなのかしらと
問う姿さえ恋しく思う
「林檎」というモチーフを効果的に用いて、初恋のみずみずしさが余すところなく描かれています。中学生のときの私は、この詩の綺麗さにとても心惹かれたことをよく覚えています。
「初恋」にまつわる面白い話もいろいろあるのですが、今回はストレートで本題に行きます。
この「初恋」の相手の女の子、「高木さん」っぽくないですか?
第四連をもう一度。
「林檎畑の樹の下に/おのづからなる細道は/誰が踏みそめしかたみぞ」と/問ひたまふこそこいしけれ。
「この林檎の樹の下の細道は、誰のせいでできたんだろうね~?」(CV:りえりー)
(C)2018 山本崇一朗・小学館/からかい上手の高木さん製作委員会
ほら、『からかい上手の高木さん』が見えてくる気がしませんか。
3. おわりに
ここまで書いておいてあれですが、完全に一発ネタでしたね……。大変失礼しました。
『からかい上手の高木さん』実際のところめちゃくちゃ面白いです。
最近西片くんがかわいいヒロインに見えてきました。この作品、要は従来のラブコメの男女の役割を転倒させているんですよね。女子の高木さんがからかってきて、男子の西片くんが翻弄されている。
また、スピンオフ作品で結婚した後の話も描いているから、視聴者は安心して中学生時点での二人のやりとりを見届けることができる。これも、付き合うまでの過程を描くことに拘泥しがちだった従来のラブコメの型を外してきていると思います。
とまあ、最初の方はあまり何も考えずにぼーっと楽しく見ていた本作も、語りたくなる面白さを色々と秘めている作品だと最近思うようになりました。最終回を経てまた何か語るかもしれません。
ちなみに第9話の「ホラー」がすごく好きです。第11話の「クリティカル」ももちろん好きだし、最終回も申し分ないほど素晴らしかったですが、私の中でのベストエピソードはこれです。CM入りで思わず拍手してしまったくらい、完成されていたエピソードだったと思います。
(C)2018 山本崇一朗・小学館/からかい上手の高木さん製作委員会
藤村研究は……まあ、うん……。
国文学・近代文学はむずかしいよ……。おとなしく英文学徒に戻ろうと思います。