逆転のトライアングル | にしくんの映画感想図書館

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作品レビューについては基本的にネタバレ有でなおかつ個人的な感想です。

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★★★★★★★☆☆☆

2022年

監督  リューベン・オストルンド
出演  ハリス・ディキンソン  チャールビ・ディーン

 

色んな意味で強烈に汚い映画だけど、そこが面白い

 

モデルでインフルエンサーとしても注目を集めているヤヤと、人気が落ち目のモデルのカール。美男美女カップルの2人は、招待を受けて豪華客船クルーズの旅に出る。船内ではリッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでもかなえる客室乗務員が笑顔を振りまいている。しかし、ある夜に船が難破し、海賊に襲われ、一行は無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態のなか、人々のあいだには生き残りをかけた弱肉強食のヒエラルキーが生まれる。そしてその頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃係だった。

 

第95回アカデミー賞作品賞、監督賞ノミネート作品で、第75回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作品。監督は『フレンチアルプスで起きたこと』や『ザ・スクエア』で高い評価を得ているスウェーデンの鬼才リューベン・オストルンド。出演はハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーンのほか、ウディ・ハレルソンらが脇を固める。

 

本作にメインキャラであるヤヤで出演したチャールビ・ディーンは、本作が遺作となり32歳の若さでこの世を去ってしまった。映画を観てもらうと分かるが、彼女の存在感は抜群だ。モデルとしても活躍していたので、そのスタイルも良くて、本作でも抜群のプロポーションを披露している。それ以上に女優としても素晴らしい演技を見せており、ヤヤという女性をより魅力的に見せている。存命であれば間違いなくこの先ハリウッドの大きな映画にも出演していた逸材だ。心よりご冥福をお祈りしたい。

 

本作はリューベン・オストルンド監督作品で、これまでの彼の作品の例に漏れず、人間たちが繰り広げる皮肉なドラマとブラックユーモアがふんだんに盛り込まれた作品となっている。リッチで一癖も二癖もある乗客に、高額チップが欲しくて仕方ない客室乗務員。お金を持つ者と、お金を欲する者。人間の最も黒い部分を持った人間たちの集まりだ。

 

身に纏う衣装も、食べる料理もお金のかかったものばかり。そんな彼らが映画中盤で見せる阿鼻叫喚のゲロ地獄クソ地獄は、この上なく汚いのだが最高に笑える場面となっている。お金がかかった衣装を容赦なく汚し、お金がかかった料理を容赦なく嘔吐する。何とも皮肉なシーンだ。

 

そうして無人島に漂着して、一気に勢力図が変わる。ここではお金は何の意味もない。生き残る力の持った者が権力者だ。船内では一乗組員だった女性が、お金持ちたちを差し置いて一気に権力を手にした。彼女は権力を傘にやりたい放題だ。でももし島から助かる日が来てしまったら?彼女の王国は消えてしまう。お金に目がくらんだ人間と、権力に目がくらんだ人間。そんな人間の愚かだが、誰もが抱える本質的な部分を本作は描いている。

 

作品としてはかなり人を選ぶ映画だ。ただし、一つアドバイスをするとしたら食事の前や後にこの映画を観ると激しく後悔すると思うので、14時~16時ぐらいの時間帯の鑑賞をお勧めする。

 

Fredrik Wenzel (C) Plattform Produktion