★★★★★☆☆☆☆☆
2023年
監督 庵野秀明
出演 池松壮亮 浜辺美波 柄本佑
PG12
キャラデザはカッコいいが、CGのクオリティはちょっと酷い。
1971年に放映された石ノ森章太郎の原作の「仮面ライダー」。様々なコンセプトやストーリーが綿々と受け継がれ、現在もテレビで放送されている。日本特撮界に名を遺すヒーローだ。今回『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』などに並ぶ「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」の4作目として『シン・仮面ライダー』として公開された。監督は庵野秀明。出演は池松壮亮、浜辺美波、柄本佑ほか、実力派の俳優たちが脇を固める。
『シン・ゴジラ』と『シン・エヴァンゲリオン』は庵野監督はあくまで「総監督」という立場で、『シン・ウルトラマン』は監修という立場だ。つまり純然たる「監督」という立場で作品を指揮するのはこの『シン・仮面ライダー』のみだ。どんな作品になるかと期待していたが、正直言うと期待ハズレだった感じが否めない。
もちろん面白かったシーンはあった。冒頭のクモオーグとの戦いはカッコ良かったし、何と言っても仮面ライダーのデザインが最高にカッコいい。敵を殺す場面をちゃんと最初に見せたあたりも良かったと思う。主人公の本郷猛は想像以上に存在感が薄かったが、代わりに緑川ルリ子はかなりいいキャラクターとして描かれていたと思うし、出番は少なかったが一文字も悪くない。
ただ全体的な盛り上がりはそこまで多くない。いや、あるのだがそのシーンの多くはCGをふんだんに使った場面で、しかもそのCGのクオリティがとにかく酷いのだ。仮面ライダー同士や敵の戦いはまるで『マン・オブ・スティール』のスーパーマンとゾッド将軍のバトルみたいな感じで、かなり大味になっている。これは『シン・ウルトラマン』の時にも書かせてもらったが、CGが背景に全く馴染んでいない。明らかに浮いてしまっている。
そもそも仮面ライダーという人間サイズのキャラクターにあそこまでCGを使う必要があったのか大いに疑問だ。しかも近距離カットでカット割りも非常に多くて何をしているのか全く分からない。さらにダブルライダーとなって初めて戦うショッカーライダー戦は画面が暗すぎて、こちらも何をやっているのか全く分からない。
せっかくカッコいいライダーと敵が戦うのにCGを多用して、カット割りも雑に多く、おまけに画面も暗い。完全にキャラクターを殺してしまっている気がする。そういう意味では、15年以上前の作品だが、『THE FIRST』、『THE NEXT』は大人向け作品で勝つ仮面ライダー映画としてもしっかりと成立していた作品だった。
ストーリーだが、恐らく庵野さんは「仮面ライダー」が好きすぎて、詰め込みたい要素が多かったのだろう。『シン・ウルトラマン』にも言えるが、それを描くには映画では足りない気がする。『シン・仮面ライダー』の設定は分かりづらくて、中々に理解しづらい。配信のドラマとかでやった方が良いのでは・・・という気もした。まぁ好きなものを全部詰め込むという意味では、やはり庵野さんの仮面ライダーオタクぶりが発揮された作品なんだと思うし、ただ一方で凄い大規模な自主製作映画を見せられている感もした。
CGやカット割りの多さは、それが「庵野作品らしさ」と言ってしまうことも出来るが、ちょっと残念な作品になっていたというのが個人的な感想だ。
(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会