★★★★★★★☆☆☆
2013年
監督 デニズ・アクチャイ
出演 アーフ・テュルクペンジェ ラーレ・パシャル
家族が崩れていく様子を描いた映画。
第26回東京国際映画祭アジアの未来部門出品作品。監督はデニズ・アクチャイ。出演はアーフ・テュルクペンジェ、ラーレ・パシャル。
父が死んだ家、母親、長女、次女、長男が残された。長女フェリデは一家の大黒柱として働いているが自分勝手な母親や問題児の長男の面倒まで見きれない。家族それぞれが大きな喪失感を抱えたこの家が辿る運命とは。
家族の再生を描いた映画は多い。ついこの前DVDで観た「エイプリルの七面鳥」がまさにそういう映画だった。しかし、この映画では逆に家族がどんどん大きな喪失感を抱えていく。崩壊とまでは行かなくとも少しずつ崩れていく様子を描いた映画だ。
この家の母親に対して嫌悪感を抱かずにはいられない。自分勝手で常に子供に辛く当たる。フェリデの忠告もろくに聞かず怪我もする。一番嫌われるタイプの母親だ。子供からも嫌われている。しかし映画を観進めていくうちに本当は悲しい人なんだという事が分かる。
フェリデは遂に結婚を決意するがその時母親や長男は快く思っていなかったようだ。とりわけ母親はかなり反対した。それは母親にとってフェリデはこの家の中で夫の立場にあたる人物であり、彼女を失いたくないという気持ちがあったのだ。
バラバラだった家族だが兄弟は次第に絆を取り戻していく。フェリデも母親もいけなかった次女の発表会に不良の兄が駆けつけたり、結婚式では3人で踊りも披露した。
その一方で母親はそうはいかなかった。結婚式での子供たちを見て母親は自分だけが家族の中で孤立していることに気付く。自分はいない方が良いのではないか。その思いがあの行動につながる。
フェリデを演じたアーフ・テュルクペンジェは美人だし演技も印象的。まぁ主演だからね。母親を演じたラーレ・パシャルの哀愁漂う演技も良い。
家族とは安らぎの場であるという概念に真っ向から挑むこの映画。静かな映画だが野心的な映画だと感じた。これは面白かった。