★★★★★★★☆☆☆
2012年
監督 マルコ・ベロッキオ
出演 アルバ・ロルヴァケル イザベル・ユペール
尊厳死というテーマが起こした3つのストーリー。そこに生死観が見える。
昏睡(こんすい)状態の女性エルアーナ・エングラーロの両親による延命装置停止の訴えを認めた最高裁の認定の是非をめぐって揺れる2009年のイタリア。昏睡(こんすい)状態だった妻の延命装置を停止させたことを引きずる議員ベッファルディ(トニ・セルヴィッロ)は、エルアーナの延命延長法案の投票を前に悩む。一方、医師パッリド(ピエール・ジョルジョ・ベロッキオ)は盗んだ薬を服用して昏倒(こんとう)した女性を助けようとする。また、大物女優(イザベル・ユペール)は同じく昏睡(こんすい)状態にあるまな娘の姿をエルアーナに重ねる。
第69回ヴェネツィア国差映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞作品。監督はマルコ・ベロッキオ。出演はアルバ・ロルヴァケル、イザベル・ユペール。
この尊厳死に関する出来事はイタリアで実際に起こったことでかなりの波紋を呼んだそうだ。この3つのストーリーはそこから着想を得たものだ。
尊厳死というテーマを扱った映画というと「海を飛ぶ夢」、そして「ミリオンダラー・ベイビー」という2本の傑作を思い出さずにはいられない。どちらも自らの意思で死を選んだわけだが、このエルアーナに関しては様子が違う。
エルアーナは自ら延命処置の停止を申し出たわけではない。彼女の両親が申し出たものだ。まぁ自分で決断できない以上誰かがこのような決断を迫られるわけだが、それでは本人の意思はどうなるのか。そのことで国中が揺れ動いていたのだ。
3つのストーリーはそれぞれが尊厳死についてであり、3つとも自ら命を絶つこと、尊厳死という考えを否定している。もちろん賛成の人もいるし、決して尊厳死否定の考えを押し付けているわけではないが、この映画では尊厳死を認めなかった。
命は尊いもので、それを他人が奪っていいものではないという考えがあるのだろう。確かにそれは正しい。しかし、尊厳を失った状態で果たしてそれは生きていると言えるのか。苦しんでいるだけではないのか。今作の登場人物の多くがそのことで議論している。
確かになじみのないテーマかも知れないが、非常に興味深いテーマだ。僕自身はその人が望むなら尊厳死も一つの選択肢だと思っている。しかしこの映画のように当事者が望めない場合もあるそのような時にどうするのか。政治的、宗教的要素も入ってくるだろう。イタリアのことを理解していないと辛いが、僕はこの映画を割と楽しめたと思う。楽しめたという表現は不適切かな。アルバ・ロルヴァケルの初々しい感じも良い。結構お勧めだ。