私にしては珍しく、今すっごい売れてるまんがに手を出しました。
やっぱおもしろ~い。
バカ売れするだけのことはある。
ちなみに私が流行りのモノにあまり手を出さないのは、
ぼんやりしているだけです。
まんがなんて気がつくと単行本が20巻ぐらい出ていて、
簡単には追いつけない。新作を読むには体力もお金も必要だしねえ。
なので、もう見て見ぬふりをする。
若人たちよ、覚えておくがいい。これが大人の知恵ってもんさ。
このまんがは
「復讐もの」であり、「芸能界もの」「転生もの」でもあるという、
ウケそうなジャンル、全部盛り盛り!という感じの作品。
それでもややこしくならないのは作者の手腕でしょうなあ。
個人的に好きなエピソードは5~7巻あたりの、2・5次元舞台編。
ま、このエピソードは復讐も転生もそれほどは関係なくて、
ほんとに、いい作品、いい舞台をどう作っていくか、というプロのお話。
原作つきのものを、どう舞台作品に落とし込むか。
原作者やそのファンはどう思うか。
舞台装置をどう生かすか。
役者をどう使うか。
スタッフ、キャスト、その事務所、原作の出版社、
さまざまな人たちの立場や思惑も絡んでくる。
当然金も重要だ。
……いやあ、ほんとに大変なんですね。
プロ同士が木刀や竹刀ではなく、真剣をつかって勝負しているかのような緊張感。
少し間違えばお互いに致命傷を負うかもしれないという、
ギリギリのところでの闘い。
5巻で脚本家が、
「つまらなかったらファンから戦犯のように
晒しあげられて(略)リライティングってのは地獄の創作だよ」と
主人公たちにつぶやくのですが…。
あああ!すみません!! 戦犯扱いするファンは俺です!
みなさまのお立場も知らず…。
これからは心して作品を拝見させていただきます。
や、でもねえ~。
ほんとひっどい作品もあるのよ、
原作をバカにしてるだろ、というような。
ちなみにそういうひっどいメディア化作品については
2巻で語られています。ここも必読だ。
え~、そんで、なぜ私がめずらしく今流行のこのまんがを読もうと思ったのか。
それはツイッター(あ、今は違うか)などで、
このまんがが「モンテ・クリスト伯」と
似ているから、という書き込みをいくつか見つけたからです。
復讐ものの古典といえる「モンテ・クリスト伯」は
私が最も愛する小説で、メディア化作品などもいろいろ見てきました。
はい、上に書いたひっどい作品とは、
モンクリのメディア化作品のことでございます。
いいのもあるんだけどね。ごくたま~にね。
そんでまあ、復讐ものの最高峰いえる「モンテ・クリスト伯」と、
この「推しの子」がどう似ているのか、見てみようと思いまして。
ほうほう、なるほど。みたいな~。
なんじゃそりゃ。
「推しの子」の場合、すごくざっくり言うと、母親の仇への復讐。
(ざっくりすぎるが、まあ、今はこれでかんべんしてください)
その仇とは具体的に誰なのかをまず探し出すところから始まる。
そしてその仇がなぜ母親を狙ったのかも未だ不明。
ここがモンクリとは大きく違うな。
こちらは仇が誰なのか、なぜそんなことをしたのか、
主人公にも読者にもはっきりわかったうえで物語が進む。
似ているところは、多くの人が指摘するように、
「主人公がいい人すぎて復讐に向いてない」件。
復讐鬼になろうとするが、本当はいい人なのでなりきれない。
自分個人の幸せを遠ざけ、自分を慕ってくれる人を巻き込まないように
距離をおく。
そして一人で地獄に落ちる覚悟を決めている。
もう君、ふつうに生きろや!
本作の主人公、アクアくん
(ちなみに本名は星野愛久愛海(ほしのあくあまりん)
子どもの名前は冷静になってつけようぜ!)
見た目も頭もよく、人気芸能人で女の子にもモテモテ。
もっと楽に生きようよお…。幸せはすぐそこにあるよ。
まあ、これらは復讐ものに大事な要素なのだろう。
主人公が完全に優しい心を無くして、まわりの人を巻き込んでも
なーんとも思わないヤツだったら、やっぱりつまらないのだ。
冷酷になりたいが、なりきれない。
その葛藤が読者の共感や同情やあこがれを呼び、優れた物語になるのだろう。
あと、エロ要素を復讐に持ち込まないのも、個人的に好ましい。
まあこれは完全に好みの問題なんだろうけど。
復讐のために体を使うとか、誰かの体を利用するとかいう展開は
あまり好きではない。
そういうのはよそでやっとくれ。
はじめからエロがメインで、復讐はそのためのおまけ、
というなら別にいいのだが。
頭脳戦で行くのだ!
それこそ「モンテ・クリスト伯」のように。
私は復讐ものというとすべてモンクリを基準にしているので
どうしてもそういう気持ちになってしまうのですよ。
アクアくんも、モテモテでも女の子の恋心を利用しないので、
というかいい人なので利用しきれないのだが、
その点がいい。
きっと、この「いい人」という部分が、最終的に救いになる。
いい人だと最後の最後に仇にとどめをさす、ということが
できないかもしれない。
それは、甘いと言えば甘い。
だけど、その甘さや優しさが、
復讐のために生きてきたアクアくんの魂を救うことになるだろう。
もう一度人生をやり直すチャンスが与えられるというか。
というか、そもそもこれは「転生もの」でもある。
アクアくんは(その双子の妹のルビーもだが)
前世の記憶を持って生まれたのだ。
はじめから人生をやり直しているとも言える。
なぜ二人そろって、前世の記憶を持ったまま転生したのか。
なぜこの母のもとに生まれたのか。
なぜ母は、若くして死なねばならなかったのか。
それらの謎がすべて解けたあと、
アクアくんもルビーちゃんも幸せになれると信じてるよー!
もう物語の終わりも近いと思う。
静かに成り行きを見守りたいな。
あ、最後に好きなキャラを勝手に紹介。
私はルビーちゃんのアイドル仲間である
MEMちょ(メムちょ)が好きです。
ほんとは20代半ばなのに、サバ読んで
18歳と言ってるアイドル。強気だぜ。
元気で明るくて、まわりの人たちよく見ている優しい子。
復讐とは直接の関係はないけれど、
こういうホッとするキャラって重要だと思う。
ヒットする作品って、たいていこういう安心キャラがいるのよね。