これが現実です・・・。
予知夢
独り者だから淋しいのか、暇なのか知らないけど、いろいろな人を野球やら食事やら誘っては振られている、かなり変なバーさん、ミズモリモリモーリー。
確かに淋しいのかなあとは思うものの、誰もこちらから”是非一緒に遊びに行きましょう“って誘ってあげたくなるような人ではないのだ。
かなりの変わり者。だから友達もいないのだろう。
その彼女が突然つかつかとケラリンのデスクにやってきた。
いきなり何かと思ったら
「昨日ね、あんたの夢見たよ。なんであんたが私の夢に出てくるんだろうね。」
「え?夢に?いやあ、どうしてって言われてもねえ。私がむしろ聞きたいですねえ。」
「そうそう、今思えばあんた、なんか食べてたよ。食べてた。」
「え?食事してたんですか? 誰と?一人で? 」
「何言ってんだよ、私とに決まってんじゃない。私と食事してたのさ。」
何言ってんだよ、って言われたって知らないって、あなたの夢の中まで。
「ふうん。一緒に食事してたんですか。へえ。どういう意味の夢でしょうかねえ。」
「一緒に食事に行くっていう予知夢じゃないかい。ハハハハ、、、」
げ。
それってもしかして、食事に誘ってるわけ?
すごい、すごい、すごい切り出しかただ。
そんな誘われ方されたことないぞー。
どーか、予知夢になりませんよーに。
、、、、ってハイジにメールを出した。
すぐに返事が来た。一行、
「例え予知夢になっても、決して私まで誘わないでください。」
人間身の危険を感じると身のこなしが早いらしい。
グアイ③
---前から続く---
でもさ、「具合」ってそもそも漢字を考えると「具」の「合い」 つまり、「具」の程度、度合いということだよね。
ってことは「具合」のグが「愚」だったら「愚合い」。つまり、「おろか」の度合い、程度ってことか。
なるほど。そういう言葉があってもいいかもしれないね。でも、
「今度うちの部に入った××君は本当にいい人なんだが仕事させるどうもねえ、、、そうとう愚合悪いんだよなあ。これが。バカだね、ありゃ。」
「そうですかあ。ま、××君確かに、なんか具合悪そうな顔してましたよ、さっきすれ違ったら。体調崩してるのかもしれないですね。」
なんてグアイ違いで話しが進んじゃったりするから不便かもしれないな。
しかしこの会話を陰でたまたま聞いてしまった××君。
「どうせ、おれなんか、おれなんか。愚合だよ。愚合なおれなんか、どうせ会社はいらねーんだ。自殺してやるぅぅぅぅぅぅ。」
こんな感じで自殺になっちゃったりするかもしれないし。あんまり、いい言葉じゃないか。
ルルルルルルルルル。
「ハイ、某銀行です。」
「もしもし?コトラさんはいますか?」
「あ、今日は、ちょっと体調崩しててお休みなんですよ。」
「あらまあ、そうなんですか。どこか具合でも悪いんですか?」
「ええ、相当愚合い、悪いみたいですよ。」
「それではまたかけます。お大事にとお伝えください。カチャン。」
でもこういう掛け言葉としての使い方もあるか。
いい言葉かもしれない。
くっくっく。
あれ?だけど具合の話しの続きをいつまでもしているのは、誰だろう一体。
こんなこと考えてたら本当に一日終わっちゃったよ。
(完)
グアイ ②
---前から続く ---
しかし、彼はおもむろにケラリンの前に辞書を差し出した。
いつもの得意顔。
差し出された辞書を見たら、なんと本当に
「GUAI=グアイ, [工合]」と書いてあるのだ。
どこにも「具合」なんて書いていない。
あら、これは失礼。コトラ氏たまにはまともなことを言うようだ。
辞書にそう書いてある。
「え、なにこれ。普通、グアイといえば「具合」だよね、ハイジー?」
「そうだよ、グアイは具合でしょ。こんな字見た事ない。だいたい、これコトラさんいつの辞書?戦前のじゃないの?」
「すごーく、古いでーす。1960年版。でも初版は1920年。」
「げ。やっぱりねー。だめだめ、コトラさんこんな戦前の辞書で勉強してちゃ。まあ、国語の先生は「工合」もグアイって言うかもしれないけど、普通は具合でしょ。辞書替えた方がいいよ。」
「そうですか、、、”guai“の意味は、、、”Condition”、、、」
「そうそう、「具合」は「コンディション」だね」
「具合の「グ」の意味はなんでしょうか、、、”gu“、、、”foolish”または”stupid” ほう、そういう意味ですか」
「、、、え?今なんて言った?それは「具」じゃなくて「愚」でしょ。「オロカ」という意味はまた違いまーす。」
と、ハイジ。
みんな、だんだんコトラ氏と話しているとコトラ仕様ジャパニーズになってしまう。ついうつってしまう。
「え?なに?「オロカ」?」
また次で引っかかっているのだ。
「、、、、、もう、いい。わすれて。じゃね。」
ハイジはそっけなく行ってしまった。
あー、ハイジ。私だけ残していかないで。
しかしなんの慈悲も無く残されたケラリン&コトラ氏。
まだこの事について話すのかなあ、、、こんなことしてたら一日終わっちゃうよ。
ケラリン、身の危険を感じすぐに対処を考えた。
カチャカチャカチャカチャ、チーン!
電子レンジのような音で瞬時に考え答えが出た。
そう、あとは「聞か猿」になるのだ。そうして何も聞こえないことにすればいいじゃないか。
何か言われても体を微動だにさせないで固まっていることにしよう。
なあんて、せっかく人が意気込んで固まってパソコンを見ているのに、コトラ氏さっさと席を外してどっかへ行ってしまった。
なーんだ、行っちゃった。
---次に続く---
グアイ ①
「おはよう、コトラさん。今日はどんなあんばいですか?」
げ。
ハイジ、ダメダメ、そんな難しい言葉を使っちゃ。
まったくハイジも容赦無く「普通の日本語」を使っちゃうんだから。気をつけないとそのツケを払わせられるのはハイジなのになあ。
なんてことをケラリン、ハイジがコトラさんに話し掛けているのを隣で聞きながらそう思っていた。
もう、事の顛末が見えているのだ。
「なに?あんばい?」
「そう、あんばい。」
「あんばい?」
「そう、だからあんばいだって言ってるじゃん。」
「あんばい?」
「そう!だからー、あんばいだって。キャハハハ。コトラさんもしつこいって。」
と笑いながらもはっきり言ってるのに、
「フム。あんばい、、、」
「イエース!あーん、ばーい。」
なんて英語チックに発音してみてもやっぱり、効果無し。
「あんばい、、、あんばい、、、で。それは何ですか?」
散々聞き返しておいて、それは何ですか?なわけ?
最初に聞けって。
ったくわけわかんねーよ、このアメリカ人。
――――なーんてチャキチャキ江戸っ子のハイジが切れちゃったりしてもおかしくないのだ。
もう大体こんな結末が想像できてしまうのだ。
そしてやっぱりそんな「あんばい」で会話は進んでいった。
「あんばい?、、、それはどういう意味? 」
「うーん。つまり、「コトラさん、どういう具合ですか?」って事。あんまり深い意味ないけど。ただ、「How are you?」みたいな感じよ。もーいいよ、いいよ。忘れて、忘れて。」
確かに、”あんばい”のことは忘れたらしい。しかし
「は?グアイ?」
「そう、ぐ・あ・い」
次の言葉でまた引っかかってしまった。
「グアイ、、、グアイの「グ」はどういう字?」
まるで、どういう字かを聞けばもう僕意味すぐ分かっちゃうんですって感じなのだ。
そして彼は使い古された彼の和英辞典を開き、辞書を目から離して老眼アイズで一生懸命調べている。
ケラリンもそれを見ていて、つい口を挟んでしまった。
---次へ続く---
将来の夢3
「ぼく、7歳のころから電車好き。乗るの好き。電車の車掌さんになりたかったね。」
あれ?
話しの主題を分かってたのだね、今回は。こりゃ失礼。
しかし、なんで「7歳」のころからなのかねえー。小さい時から、、、っていうならともかく、7歳の時に幼きコトラに何かあったのかもしれない。
が。
また聞くと長くなりそうなのでそのことは敢えて聞かない。
警察官に電車の車掌かあ、、、そして2人とも銀行員ねえ。
確かにコトラ氏の机の上には、10年前のJRの全国時刻表が置いてあるのだ。たまに彼は眺めたりしてるその時刻表。ケラリン、彼が10年も前のものを何で眺めているのか、しかもアメリカでそれを何のために使うのか、まったく分からない。
かなりの電車オタクである事は知っていた。やっぱり疑う余地も無い、そうとう変なアメリカ人だろう。
「プルルルルルーーーー。東海道線 静岡駅行き 東京駅予定時刻通り 発車アー。」
ガタン、ゴトン、ガターン、ゴトーン、ガッタアーン、ゴットオーーン、、、、、
いつも通りの発車にみえたのだが、発車後3分。
キキーーー!!ガッタアアン!
キャー。イターイ! なんだ?なんだ?
急停止。
ガターーン。
急発車。
東京警視庁 <電車課>
リーンリーンリーン。ガチャ。
「ツネ・コップ!!大変です、今入った情報によると、”トレイン・ジャック“が、東海道線に入ったそうです!!」
「な、な、な、なにーーーー!トレインジャック!? よし、行くぞ、クーニークニオ。!」
「あ、あ、あ、―。」
「あーあー言ってないで行くぞ! 」
「あ、あー、はい。」
「ピー。ツネ・コップ!今入った情報によると、犯人はコックピットに入り、車掌と2人きり。包丁を振り回して、横須賀に向かえ、と言ってるそうです。どーぞー。」
「ラジャー。どーぞー!」
「犯人は一度電車を運転してみたかったと叫んでいます。どーぞー。」
「ラジャー。どーぞー。」
「包丁はセラミックだそうです。電車はそのまま速度を落としながら、、、、おお、なんと、路線を間違えて反対路線に突入しています! おおおおっと。コックピットの中からものすごい悲鳴!もしかしたら車掌さんが、、、、大丈夫でしょうか!!安否が気遣われます!どーぞー!」
「ということは、それは犯人が運転しているということですか?どーぞー」
「そうです!!うおおおお。今、勇気ある副車掌と乗客がコックピットの中へ! どおおおおぞおおおお!」
「あー。あのう。ツネ・コップ、あー、あー、僕どうしたらいいでしょうか?」
「うしししし。クーニー・コップ。あわてるでない。これだから警察はいいねえ、僕の正義の血が騒いでいるよ。ああ、警視庁電車課に配属されてよかった」(なんじゃそりゃ。)
「本日のトップニュースです。本日、昼、東海道線でトレイン・ジャックがありました。犯人はボブ・コトラ。アメリカ人で50代前半と思われます。車掌は犯人によって包丁で刺され、出血多量で重体の模様。犯人は、7歳から電車にあこがれ、電車の運転を一度してみたかった、と自供しており犯行の動機となった可能性が高いと思われています。また、犯人をよく知る同僚の方によると、確かに日ごろから人とかなり違う行動を取っていたという事で、このような事態になってもあまり驚かないという言葉が寄せられています。尚、途中川崎駅で犯人を取り押さえた警察官ツネ・コップは非常に勇敢な行動を示したという事で東京都警察庁より表彰される事が明らかになりました。
次のニュースは、、、、」
なーんてことになったりして。
そんなこと考えていたら、あ、もう5時だ。かーえろ。 (完)
将来の夢2
---前から続く---
しかしそんな中にも
「あの夢が、あの夢を。 ――常久」
おおっと。何だこりゃ。
全然意味が分からないぞー。面白そうだ。
これは本人に直撃インタビュー!出動!!
「ツーネちゃん、どういう意味?あの夢って何?」
「いやいや、、、、なんでしょうかねえ。」
もったいぶるほどでもないくせに教えてくれない。
「お願い、おしえてーー。気になるーーー。」
「いやいや、、、別に意味はないですよーハハハ。」
絶対に意味はあるはず。
どうでもいいけど、すごく気になる。聞きたい聞きたい。教えろー!
「あ、ケラリンさん。この件、あとの必要書類揃えておいて。」
「教えてくれたら、やる。」
「、、、、、、、」
「ケラリンさん、ここに電話しておいて。」
「あの夢は何ですかって聞くの?」
「、、、、、、」
結構ケラリンもしつこいのだ。
というより、何がなんでも聞き出したいのである。
そしてついに、ふと喋りはじめた彼。
「夢っていうのはね、、、、実はね、、、、僕警察官になりたかったんですよねえ。」
へえええええ。そーなんだ。オラ、知らなかったダ。
そんな夢を持ってたんだべえ。
と、人が「聞き出すこと」に成功した達成感に浸ろうとしていると、またしても急にコトラ氏会話に無理矢理介入。
「僕は電車好きです。」
さっむーー。
いつものごとく、いきなり脈絡のない話し。
問2.ケラリンとツネちゃん、いま彼らは何について話しているのか、端的に答えよ。
何が好きか嫌いか。
ブーーーー。
当然違いまーす。
どんな夢を持っているか。
なのです。いいかげん違う話しはしないでください。
違う話しをして話しをそらさないでください。
---次に続く---
将来の夢1
(99年7月に起こったANAハイジャック事件を元にしています。。。)
あの、七夕事件以来、所詮七夕だろうと、日本の風習はこういう外地にいたら特に大切にしないといけないと思ったケラリン。
幼稚園を思い出して、数多く茂っている植物10鉢の中でも一番大きな植木にみんなで短冊を飾ろうという名案を思い付いたのだ。残念ながら、その植木は竹ではなくヤシの木を小さくしたような名前も分からない、なんだか貧弱な木なのだが、高さ2メートル弱で短冊を飾るにはそれしかなかった。
毎日が忙殺されて過ぎていく某銀行ビジネスマンもたまには、自分がどういう夢を持っているかを考える時間があってもいいのではないかと思ったのだ。
そう、願いは願わないとかなわないのだ。
そうして、ケラリン、短冊を持って社内を歩き回り
「支店長のアイディアでーす。 今月は「日本文化習得期間」にするそうでーす。だからみんな書いてね。」
と適当に支店長の名を流用してアメリカ人にも短冊を書かせたのだ。
なのに、自分の願い事が何かも分からない人が非常に多い。
多くの人が夢を書くのに、すごく時間を費やして、3日ぐらい考えてきた人もいるのだ。
淋しいことではないか。
まあ、最近では「飛行機を操縦するのが夢だった」といってハイジャックしてしまった事件もありましたね、それは確かに行き過ぎとしても日ごろから夢や願望をもって生きていくのは大切な事ではないかと思うケラリンなのだ。
「こんな銀行やめたい。」
「金くれ。」
「早く退職したい」
さすが、アメリカ人。ストレートな意見なのだ。
しかし、
「Good health, long life and happiness. (健康に長生きしておまけにハッピーでいたいでーす。)」
なんとも抽象的なアメリカ人らしからぬコトラ氏の短冊。
毎日これ平凡を極める事に目標を置き、日々健康に気をつけて肉・酒・ジャンクフード一切禁止、テレビ週に3回一日1時間まで。というポリシーを持った彼ならではの願い事。
ほぼ確実に「長生き」は叶うでしょう。
そして、日本人おじ様たちはほとんどが
「ゴルフ80を切る。――――ナミモト」
そうだねえ、ゴルフ気狂いだもんね。
「ゴルフが上手くなりたい――本山」
無理だろうねえ。18ホール、カート使っても体力が無くて歩ききれなかった人なのに。
「ゴルフでツーショット――――ジロー“
まだとぼけてるねえ。
無難路線ゴルフ一色。
---次に続く---
竹を割る 2
---前から続く---
「で、どこへ行ったんですか?」
「えーとね、スプリングフィールドから少し行ったところにある、、、湖のあるところでして、、、」
我々は話しながら中西部の地図のある方へ移動。
本山さん、ひとつ聞くと1万ぐらい返ってくる人なので、もう張り切ってキャンプの話しを始めている。
なんか、面白そうな事が聞けそうな気がして、ケラリンもワクワク。
「ここ、ここ。この辺りに、、、、湖が、、、、ないですねえ。そう、このね、”クリントン“という町から近いんだよね。」
「へ~~で、どんなところなの?」
ワクワク。
そんな時、横でどうやら聞いていたコトラ氏。
いきなり何かと思ったら、
「その「クリントン」という町、クリントン大統領が大統領になる前から「クリントン」と言う町だった。」
え?
それで?
「しかーし、○×町にある、”リンカーン“という町、リンカーンが大統領になったから、町がリンカーンという名前になったのでーす。なんでリンカーンが大統領になって町の名前が変ったかというと、なんたらかんたら、、、、」
すごい、得意顔。
もう、1999年も後半に入っているのに、現在の大統領と数百年も前の大統領の時代と比べちゃう、雑学博士なのだ。
「あ~ぁ、そ~ぅ。(で?)」
あのね、コトラさん、話しそらさないでくれる?
いまは私たちは「キャンプ」の話しをしています。
「クリントンという名の町」の話しでは全然ないのです。
問1、 ここまでの会話を読んで、彼らの話している会話の主題は何か。10字以内で記せ。
キャンプの話し。
パンパカパーン!!!!大正解でーす。
クリントン町の話し。
ブッブーーーー。
全然違いまーす。
こういう会話の主題を読み取れないと会話についていけないばかりか、試験でも間違えるのだ。
言葉の違いとかそういう問題では全然ないのだ。
普通の人ならそうやって彼によって話しをそらされちゃって、何の話しだか分からなくなって、で、何だっけーなんて思いながら去っていくのだが、ここは筒抜け、ミスター本山。全然コトラ氏の話しを聞いていない。
「それで、そこはね、何で池があるかというと、原子力発電所なんですよ。でね、その池は要は「原子炉冷却水」なのですよ。」
げーーーー。
そんな、放射能ビリビリの高そうなところに、わざわざホームレスになりに行くの?
全く理解出来なあああい。
「え、まさかその池で泳いだとか、してないですよね?」
「うーん。まあ泳ぎはしませんでしたね。」
「え、そこで釣りして、目が3つぐらいあるような魚食べちゃったとか?」
「またまたー。ケラリンさん。大袈裟ですねー。大丈夫なんですよ。原子炉は二つの壁の中にありますので大丈夫です。その外を回って原子炉を冷却する水ですから。」
しかし、ケラリン、そんなところに週末わざわざ行って寝袋に入って寝泊まりしたいなんて、かけらも思わない。
「他に人はいました?」
「いますよー。僕たちみたいな人が沢山。」
「え?ホームレスたちが?」
「は?ホームレスじゃないですって。ちゃんとしたキャンプの人ですよ。それにしても、やっぱり自然に帰って文化を忘れるっていい事ですよ。ケラリンさんはキャンプしないの?」
原子炉というのは、ケラリンの理解では、人間の最新鋭の技術の気がするが。
自然にできた池でも、自然にできた発電所でもないでしょ。
「本山さん、アナタそんなところに行ってて本当に大丈夫?」
あーあ、ただでさえ、コレステロールが高いのに、放射能でガンにまでなろうとするなんて。
けったいな人だねえ。
「でもね、車がへこんでも、懲りずにまた今週もキャンプなんですよ~。」
「え?息子さんの運転で?」
「、、、、、、、」
さすがの筒抜けにも聞こえたらしい。
ケラリン、本当に竹を割った面で人を傷付けているかもしれない。
ブラック過ぎた。ごめん。
竹を割る 1
ケラリン、自他ともに認める性格かなり“さっぱりさん”。
もう、まさに「竹を割ったような性格」とは、ケラリンのためにあるような言葉。
細かい事にはこだわらず、というより、面倒くさがりなので“どうでもいいじゃん、そんなの”と思ってしまい、人には言いたいこと言って本人あっけらカーン。言われた方は気にしているかもしれないが、ケラリン言った本人はすぐに忘れてしまう。
「何だっけ?その話って?」
「ケラリン。おまえって本当にのんきだな。「ノンキ君」って言われるだろ?」
昔のボーイフレンドにそう言われた事がある。
「ううん、ぜーんぜーん、言われない。むしろ、竹を割ったようなさっぱりさんって言われる。」
「ああ、まあなあ。それもあるかもなあ。おまえの場合は、竹を割った面が鋭すぎて、それでみんなケガしてるけどな。ハハハハ、、、」
「、、、、、」
どういうこっちゃい。
かなり、さすがのケラリンとはいえ、ぐさりときた。
そうかなあ、そんなにひどいかなあ。
こんなに心優しいのに。こんなに相手を思っているのに、こんなに周囲の事を考えて行動しているのにーーー。 世の中なんて無常なんだ。
仕方ない。以後気を付けよう。
改心しよう!!改心だ!
改心・かいしん・カイシン・快心・回診・会心・外人・コトラ・凍結。あれ?何の話だっけ?ま、いいや。物事深く考えない。考えない。 忘れよう。
やっぱり、竹を割ったグチグチしないその性格はそのまま健在している。
「あ。おはよう。本山さん。週末どうでした?どこか行ったの ?」
爽やかな月曜日の朝。
他愛もない会話。
「いやあ、大変でしたよ。」
「何かあったんですか?」
「いやね、うちの2歳になる息子がねえ、、、、ハア。」
何か悪い事があったようだ。
「ハア。まったくなあ、、、、キャンプに行ったんですよ、この週末。」
「ああ、また今週も。一家でホームレス?」
「え?」
「いやいや、何でもないです。それで?」
「で、帰ってきて、荷物を家に運んでいるときにですね、私もうっかりしてたからなあ。子供だけ車に乗せたまま、エンジンをつけっぱなしで、家に入ったんですよね。そうしたら、外でワイフの大声がしてすぐに大きな音がして。何かと思ったら僕の車が木に激突。」
「あらら。自称本山キャンピングカーまがいのキャンプカーが?」
あまり、ミスター本山、人の話をちゃんと聞かない性格。“筒抜け君”なのだ。だから、何を言ってもいいのだ、という事ではないが。
「いや、幸いにも、もう一方の方の車ですがね。」
「ああ、暖房が効かない方ね。夏のうちにしか乗れないもんね。」
「え?なんかいいました?」
「いえいえ。それで?そもそも、どうしてそうなっちゃったわけ?」
遠い昔を回想するかのように目を細めて彼はケラリンの背後を見ながら話しはじめた。
しかし、そんなたいそうな目をして話す話しじゃないはずなのだ。
「2歳の息子がチャイルドシートをはずして、ドライバーの席に異動しちゃったんですよ。それで、ギアをはずしちゃったから、車が動き出してね、、、そう、で、それを見たワイフが車に飛び乗ろうとしたら、車の鍵が中から閉まってて開けられなくて、しょうがないから、前に回ってボンネットを押さえて車を停めようとしたらしいんですがね」
さすが、アメリカ人ワイフ。パワフルである。
「それで、そのままだと、隣の家につっこんじゃうからって、後ろから車を押して軌道を曲げて、木にぶつけて止めたんですよ。ハアー。だから車が曲がっちゃって大変ですよ。まあ、隣の家に突っ込まなかっただけよかったけど」
「それはそれは大変でしたねえ。でも、それはやっぱり、完全に親の監督不行き届きですね。」
「、、、、そう言われると、つらいなあ。まあ、そう言わないでくださいよ。ま、その通りか。」
そうだな。ちょっとはっきり言い過ぎた。
しかし、これは「ケラネタ」にして笑っちゃえるような話しではない。
笑っちゃ悪い。 何も無かったから、よかったようなもので、結構深刻な話しである。
「うちの息子はすごく運転に興味をもっているみたいなですよね。だから今回もこういうことになったんですがね。」
「まあね、男の子は車とか電車とか乗り物好きですからねえ。今回はともかく、腕白でいいじゃないですか。」
でも、ケラリン、本山さんの車の話しなんかどうでもいいのだ。
むしろキャンプの話しを聞きたい。
---次に続く---
ア・イ・シ・テ・ル (4)
--- 前回から続く---
「Oh,分かりまーした。ありがとうベリーマッチです。ガチャン。」
あれ?もういいわけ?
いきなり電話を切られた。
なんなんだ?いまのは、まったく。プリプリ、ブツブツ。
しかし、電話を切ってふと我に返ってみると、あたりはまだ始業間もなくし~んとしている。
誰も電話で話している人はいなく、そんな静けさの中、「愛してるー!!」なんて叫んでいたことに気づいた。
チラチラと社員がケラリンを見ているのに気づく。でも、まだそんなに親しくないから誰も何も言わないで遠巻きに見ている。
そりゃそうだ、朝一番から「アイシテイマス!!」なんて叫んでる新入社員、みんな怪訝な顔つきだ。
ケラリン、バカ丸出し。
すると
「ケラリンさん、日本語があまり分からないアメリカ人の彼だと大変だね、愛を伝えるのも」
うろたえているケラリンの背後からそっこり耳元に佐藤さんというオジサンがささやいてきた。聞こえていたのだ。
「え、え、え、違うんです、これは、あの、えーと、つまり・・・」
「いいんだよ、気にしなくても。愛は国境を越えるんだ、うん、そうだ。」
「いや、あの、違うんですよ、聞いてくださいよ、、、、、」
言い訳もままならないうちに佐藤さんはそのままどこかへ歩いていってしまった。
げげげー。完全に誤解されてるー、なんなんだ、あの電話は。。。
しかし、名乗らないでかかってきた電話、全然今となってはどこの誰だかも分からない。どうしてケラリンの電話にかかってきたのかも全くの謎。
すべては謎に包まれ、そのまま闇へと葬られることになった「アイラブユー事件」。
で、結局彼女の愛は国境を越えたのだろうか。。。 (完)
