新年度に思うこと | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

早いもので東京の桜も盛りを過ぎ、新年度がスタートしました。

 

昨年から様々な物価が上がり、新年度ということで様々な会費納入が求められ、その多くが値上げというのも致し方ないことでしょう。この流れは郵趣界も例外ではありません。

 

こうした中で、気づけばJPS(日本郵趣協会)の会費も、正会員は13,000円から15,000円に引き上げられていましたが、JAPEX出品料が前年から大幅値上げされたのに比べれば、会費の値上げ幅は約15.4%と幾分マイルドなものにとどまりました。この点は率直に評価できると思います。

 

こうした事情も踏まえ、私は2023年度もJPS正会員としての在籍を更新することにしました。

 

ただし、世界でも有数の規模であり、日本最大の会員数を誇るこの組織も、そろそろ抜本的な体制見直しを余儀なくされそうです。

 

というのも、ウェブサイト上にある2023年度の予算書をざっと見る限り、会員数は既に5000名を割り込む水準が想定されており、今回の会費値上げをもってしても、収入減は甘受しなければならないからです。

 

事実、2023年の年間会費収入(予算)は5446万円としていますが、これは2017年度の6947万円よりも1500万円も減少しています。

 

この会費収入の約半分にあたる2930万円が機関誌「郵趣」を中心とする出版事業費とされ、これは全国各地に散らばるJPS会員に等しく還元される費用とみることができますが、問題は会費収入に占める事務所費(家賃)と水道光熱費の高さです。

 

2023年度予算における、事務所費と水道光熱費は1344万円で、会費収入に占める割合は約25%にも達するのです。これは2017年度(1413万円、会費収入の約20%)よりも大幅にウェイトを増しており、6年間で20%から25%にまで上昇したのですから、このままでは組織の持続可能性が懸念される水準と言わざるを得ません。

 

かつて、会員が1万人もいた時代であれば、目白駅至近に豪奢なオフィスを構え、平日ほとんど利用者のない会議室を常時キープすることも是認されたかもしれませんが、そろそろ月額100万円を超える賃料+水道光熱費を要する豪華オフィスからの移転を真剣に検討する時期が到来しているといえましょう。

 

一般的にいえば、会費収入5000万程度の非営利団体が、その4分の1以上を家賃+水道光熱費に支出することは、必ずしも健全な支出構造とはいえないでしょう。しかも地方在住の会員にとっては、現在のオフィスを継続するメリットはほぼゼロであり、払った会費の4分の1以上が自分には何らの還元もない東京のオフィスの費用に充てられることには納得感が得られない可能性が高いでしょう。15,000円の年会費のうち、3,750円が事務所費+水道光熱費というのは、既にかなりモヤモヤする数字といえるかもしれません。

 

そもそも事務局機能について考えれば、東京において数名の職員が事務を執り、土日を中心に例会(研究会)や委員会等が開催できるスペースさえあればよい(それすらも必須ではなく、貸会議室利用などのほうがトータルのコストが安い可能性もあります)わけなので、現状のオフィスはいまや分不相応なスペックになっていることは自明でしょう。

 

限られた会費収入の中で、公益財団法人にふさわしい「公益」を創出する活動を、質・量を落とさず継続していくためには、まず、「公益」の質・量をきちんと確保したうえで、それを生み出すために必要最小限の事務局経費を検討しなければなりません。

 

今回は15.4%程度の会費値上げということで、これは会員の理解を得られると考えての措置でしょうが、メイン行事であるJAPEX、地方での郵趣振興策のサポート、機関誌などが今回の値上げに見合った質的・量的向上が実感できるものとなればよいのですが、現時点でそれが明確には打ち出されていない中で、事務局費用の支出ウェイトだけが増え続けるというのでは、会員の心は離れてしまいます(とくに地方の方々)。

 

山田理事長率いる執行部の皆様はさぞや頭が痛いことでしょうが、日本からフィラテリーを通じた公益増進の火を消さないために、事務局の移転を含む、早め早めの対応をぜひお願いしたいと思います。