クラッシュカバー(事故郵便):紫雲丸搭載郵便物を速達で事後逓送した例 | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

郵便物がときには不幸な「事故」を表象するドキュメントの役割を果たすことがあります。

 

いわゆる「紫雲丸事故」は、当時の国鉄・宇高連絡船紫雲丸が1947(昭和22)年6月9日の就航から9年間のうちに5度にわたって起こした事故の総称で、うち2件は死亡者を発生させています。

 

その中で最大の被害を出した1955(昭和30)年5月11日の5回目の事故を指してとくに狭義の「紫雲丸事故」と称する場合が多くなっています。

1955年(昭和30年)5月11日午前6時56分、「紫雲丸」は、上り第8便で運航中、同じ宇高連絡船・下り153便大型貨車運航船「第三宇高丸」と衝突して沈没。最大の被害(修学旅行中の広島県豊田郡木江町立南小学校児童などを中心に死者168名)を出しました。

 

このときに紫雲丸に搭載されていた郵便物は引きあげられて高松郵便局において乾燥処理後、封書は個別に通信事務封筒に封入されて(葉書はそのまま)、紫雲丸搭載郵便物である旨を記載した付箋をつけて書留速達郵便で名宛人に逓送されました。

 

その時の外封筒の使用例が画像のものです。肝心の付箋が完全でないのが玉に瑕ですが、完全品はかつて、大阪のオークションに出た通信事務封筒と、コレクターのブログに掲載された葉書各1通を確認しただけなので、これでも致し方なしとしています。稀少性では「よど号」よりもかなり上ではないでしょうか。

 

郵便物全体の図

 

付箋部分の拡大

 

裏面の発着印

 

【参考】完全な付箋の画像

(出典)ジャパンスタンプ商会

https://www.japan-stamp.com/blog-images/Lot3067.pdf