C欄「東京府」最終日の訴訟書類使用例 | 郵便・切手から 時代を読み解く

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切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

これは、昭和18(1943)年6月30日に司法省内局から差し出された訴訟書類で、消印のC欄(日付の下の欄)に「東京府」の文字が入っています。



 

従来は、この欄には時刻(午前何時から何時といったもの)が表示されていましたが、大東亜戦争中の昭和18(1943)年6月1日からは、戦時体制下での要員不足や金属資材節約もあって郵便印用の時刻欄も活字交換不要の都道府県名などに変更され、東京では「東京府」の文字の入った消印が使われます。

しかしながら、その翌月の昭和18(1943)年7月1日には東京都制が実施され「東京府」は「東京都」となってしまいましたので、消印の表示も東京「府」から東京「都」へと変更され、これに伴い「府」の郵便印の使用期間は、わずか1か月という短命に終わっています。

 

このため、「府」の文字が表示された櫛型日付印の使用例は、コレクターの間で短期使用例として人気があります。なかでも訴訟書類は、戦況の悪化と共に訴訟件数が減少することから、このあたりから使用例の現存数自体が少なくなっていきますので、その意味からも稀少といえるでしょう。