全国化後の速達郵便物上への表示印「最低料金徴収」 | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

昭和12年8月16日に速達郵便制度が全国実施されると、一挙に速達は一般的な郵便サービスとして利用され始めるようになります。

 

特殊取扱い料金として追加徴収される速達料金は、基本料金(郵便区市内)が8銭と低く抑えらえていた一方、旧来の別配達に相当する「配達郵便局から離れた宛先(郵便区市外)」にわざわざ届ける場合は、料金8銭では足りず、最低30銭(配達局から8キロまで)とされ、さらに遠い場合には4キロ遠くなる毎に25銭ずつ段階的に加算される仕組みになっていました。

 

ところが、差出に際しては、宛先地が郵便区市内なのか、はたまた郵便区市外でどの程度遠いのかは、必ずしもすべてのケースで事前に明らかになっているわけではなかったために、差立て時に引き受け郵便局の窓口では、速達料金をいくら徴収したのかを明示するために、ハンコや手書きの形で「速達料金 銭徴収」という証示を行いました(その実例は、ありふれたものとまでは言えませんが、切手商の店頭やオークションを丹念にみれば見つけ出すことも難しいものではないでしょう)。

 

こうしておけば、本来は30銭徴収しなければならない速達郵便物に対して、引き受け時にうっかり8銭だけを徴収して逓送してしまったとしても、それは差出人のミスではなく、差立て局の窓口の誤りである事が明瞭に分かるので、速達扱いは無効とならずに当該速達郵便物は受取人まできちんと急速送達され、事後的に差出人は郵便局に不足分の差額を納付するだけでよかったのです。

 

さて、今回お示しするのは、その証示印の例外的なスタイルのもので、上述のような「速達料金 銭徴収」というものではなく、「最低料金徴収」となっているものです。

 

筆者はライフワークとしてわが国の速達郵便史を研究し始めて、30年を超えますが、このような印が用いられた使用例ははじめて見ました。読者のお手持ちのカバーや葉書の中にこの印が押捺されているものがありましたら、ぜひお知らせいただければと思っています。