風景印を捺しました | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

わたくしが風景印を蒐集する場面など「想像しがたい」といわれることも時折あるのですが、決してそんなことはありません。

 

確かに現代の風景印蒐集は(他人が蒐集したものを事後的に購入する場合は別として)、押印に必要な最低料金である葉書料金が62円に値上げされたこともあり、「印影を得る為にひたすら有価証券を無効化する」という、たいへん贅沢な行為が必然的につきまといます。それゆえ、わたくしのような小心者にとって、押印に際しては、なかなか勇気がいるな、と感じてしまうことは恥ずかしながら否定できません。それでもここぞと思う、個人的な記念日に限っては、躊躇はいたしません。

 

というわけで去る3月19日は、子供の小学校の卒業式がありまして、事前に学校から送られてきた案内状の裏面が真っ白で寂しそうだったので、式参列の帰路に郵便局に立ち寄って窓口で押印していただきました。

 

ちょうど桜の咲き始めと重なり、切手図案とのマッチも悪くありません。印顆のメンテナンスが良いことにも感心しました。

 

この種の案内状の類はなかなか捨てられずに当面は家の中のどこかに保存することになるのですが、そのまま保存しておくよりも、こうして確定日付を押捺しておいたほうが、より得難い記念品となるような気がいたしました。

 

いずれにせよ、今回改めて実感したのは、「風景印を捺す」という行為は、印影という「モノ集め」だけが目的なのではなく、何がしかの忘れがたい日に思い出作りのため郵便局に立ち寄り、風景スタンプを押してもらったという「コト」の記録、すなわち思い出を遺すことに、62円以上の付加価値を見出したからこその活動なのだな、ということでございます。