ニューヨーク世界切手展2016に向けて(英語表記のこと) | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

年も改まったので、いよいよ5-6月のニューヨーク展に向けて、作品改作を本格始動します。

それに伴い、日本独特の郵便制度を英語で外国人に分かりやすく表現することにも注力していきたいと考えています。

そんなことを考えていて気が付いたのですが、例えば日本の作品でよくみられる表現、「国内消」、「外郵消」がそれぞれ「domestic cancellation」、「foreign cancellation」となっているケースが多々ありますが、これでは恐らく外国人には別の意味で理解されてしまうだろうということです。

「domestic cancellation」をそのまま理解すれば、「国内の消印」となります。これに対し「foreign cancellation」は「外国の消印」となりますので、これは一般的な日本の郵趣常識とは異なる概念(日本切手上に外国の消印[例えば到着印]が押捺されているもの)になってしまいます。

つまり前者はある切手に日本国内にある郵便局の消印が押捺されていればすべて(和文印であろうと欧文印であろうと)この表現になります。後者はある切手に日本国外の消印が押捺されていればすべて(消印の言語が何であろうと)この表現になります。

したがって、「和文消」、「欧文消」の概念を正確に表現しようとすれば、前者は「cancellation of Japanese characters」または「cancellation for domestic mail」、後者は「cancellation for foreign mail」などとする方がベターということになります。

昔の『日本切手名鑑』のカラー図版ページなどにもこうした珍妙な英語が見受けられますが、長年慣らされてしまっているとなかなか気づかないもので、改めて認識を新たに点検してみる必要があると感じているところです。

なお、郵便史的な表現については、私と岡本哲氏との共著『訴訟書類の郵便史』(鳴美刊)の岡本作品のリーフ上の英語表記が参考になります。これは英語(教育)のプロである外国人によるプルーフ・リーディング(添削)を経ており、この表現が外国人に伝わらないということはありませんので、ぜひご参照いただければと思います。


○ domestic cancellation(日本国内の消印)
○ cancellation for domestic mail(内国郵便用消印)
○ cancellation of Japanese characters(和文の消印)


○ domestic cancellation(東京中央=日本国内の消印)
○ cancellation for foreign mail(外国郵便用消印)
× foreign cancellation(外国の消印)


○ foreign cancellation([田沢6銭切手にとって]外国の消印)