楽譜では再現できないライブ感と“拾いどころ”の共有――YMO Tribute Liveに向けて | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

BGM:デヴィッド・ボウイ『TVC 15』

 

8月16日、東京キネマ倶楽部にて画期的なライブがおこなわれる――多くの人々に影響を与え、今現在も愛され続けているYELLOW MAGIC ORCHESTRA(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)。ファンの間でコピーバンドを作り、その作品をライブで演奏する者たちもいる。そんな中、今回はじっさいにYMOのステージでサポートメンバーを務めたギターリストの渡辺香津美さん、そして“第4のYMOのメンバー”と呼ばれるコンピュータープログラマーの松武秀樹さんがスペシャルメンバーとしてトリビュートバンドへ参加。初の海外ツアー「トランスアトランティックツアー」のセットリストを約38年ぶりに再現する。

ドラムス担当でメンバーに選ばれた布施雄一郎さんとは音楽テクニカルライターとして長くお付き合いさせていただいていることから、公演前にお話を聞かせていただくことができた。インタビューにはステージでシンセサイザーを担当する(坂本龍一役)小林淳一さんと、イベント制作に携わる横田信一郎さんが出席。布施さんも合わせて今回のスペシャルトリビュートライブ実現までの経緯とイベントにこめられた思いを聞かせていただいた。これを読んだ上で当日足を運び、2017年にYMOのナンバーを体感すべし。その日はみんなでねーー。

 



▲リハーサルスタジオにお邪魔しメンバーを撮影。前列左より小林淳一さん、布施雄一郎さん、小池実さん、後列同じく製作で携わる横田信一郎さん、山内亜矢子さん

 

ゲストではなくメンバーとして
渡辺香津美&松武秀樹が出演


――まずは今回のイベント開催にいたるまでの経緯を教えてください。
小林 私が中学の時、YMOと出逢ってのめりこんでいくうちにメンバーがステージ上で使っている機材の中へ自分の身を置きたいと思うようになっていったんです。飛行機のコックピットに座りたいみたいな衝動があって、いつかはYMOと同じ演奏をしてみたかった。それが大人になって、少しずつ欲しい機材を集めながら2005年に初めてホールを借り切り同じステージを作って、YMOのトリビュートライブを演ったんです。“再現ライブ”ということで、松武秀樹さんや橋本一子さんといった本当にYMOのライブのサポートメンバーを務めた方にもゲストで出てもらった回もありました。

 

▲小林さんが過去に開催した「YELLOW MAGIC ORCHSTRA WORLD TOUR '80」再現ライブより『CITIZENS OF SCIENCE』

 

――それだけで一般的なコピーバンドのライブとは違いますよね。
小林 私は地方に住んでいたこともあって、リアルタイムではYMOのライブを見られなかったんですけど、自分たちで再現するというのがとても楽しく感じて。だからライブを通じてその頃ファンだった皆さんと同じ体験をすることで、楽しさを共有したかった。その後、2015年に「YMO楽器展」が開催された時、渡辺香津美さんにトークイベントのゲストとしてお越しいただいたんですが、その打ち上げの席でこういうバンドをやっているので一緒に演っていただけませんかと、直接お願いしました。
――その日が初対面ですよね。
小林 はい。一子さんの時も突撃でした。その時は香津美さんもいいよって言ってくださったんですけど、どの程度真に受けてくれたかわかりませんでした。それで改めて、正式にオファーさせていただきましたらスケジュールが合えばというお返事で。アルバムのレコーディングとかが重なってなかなか時間がとれなかったようなんですけど、2ヵ月前に「この日だったらいいよ!」とお返事いただきまして。
――ということは、このイベントは2ヵ月間というわずかな準備期間で実現されると。
小林 なかなか現実的には、2ヵ月前にライブ会場を押さえるのって難しいんですけど、たまたま指定された日に会場として考えていた東京キネマ倶楽部が空いていたんです。それでもう、これはやるしかない!と急きょ開催することを決めました。
――松武さんの方は?
小林 松武さんにも前からオファーを出していて「香津美クンがOKだったらやるよ」と言ってくださいました。
――そのOKをもらうということ自体、ファンの立場からするととんでもない出来事なわけじゃないですか。
小林 最初に松武さんへお願いにいった時は私も営業職をずっとやっていた癖で、パワーポイントでプレゼン資料を作って正式にご提案を申し上げたんです。そこで同じようにステージを作ってやっている写真を見せたら「バッカだなあ!」って笑っていました。こちらも「ステージでMOOGⅢCとEμモジュラーを操作する松武さんをファンは見たいんです!」と気持ちをぶつけて。今回に関してこれまでのライブと違うのは、香津美さんと松武さんがゲストではなくYMOトリビュートバンドのメンバーという点ですね。
――じっさいにYMOのライブメンバーとしてステージに上がっていたお二人がメンバーですから、これまたすごいことです。
小林 過去のライブでは松武さん、一子さんと藤本敦夫さんに起こしいただいたのですが、ゲストとして最後の2曲ほどに参加していただく形だったんです。それが今回は全曲演奏していただくわけで、これはもう我々メンバー全員、非常にプレッシャーを感じています。
――2017年のパブリック・プレッシャー。
小林 ステージではお二人が我々の後方にいると。背後から見られる中で全曲演奏するプレッシャーたるや…。
――今回集ったメンバーの皆様は、それぞれでもYMOのコピーバンドを経験してきていますよね。今回のライブ用にメンバーを集めるにあたっては、何が決め手になったのでしょうか。
小林 演奏が巧い方はたくさんいっらしゃいますけど、やはり夢のようなステージに立つのであれば十数年来、YMOのコピバンとして同じことをやってきた方々とやりたいという思いがありました。その中で、やっぱりアッコちゃん(矢野顕子)役を見つけるのが一番苦労したんですけど、知り合いでいい子がいると横田さんから推薦があって山内さんが加わりました。
――演奏と歌い方を含めてですから、矢野さんの独特なカラーを再現するのは難しいですよね。
小林 香津美さんからいいよと言われた時点である程度の構想を2年前に練っていて、メンバーにはなんとなく話をしていたんですけど、2ヵ月前に声をかけてその日集まれるかどうかは別の話になってくるので、これも運が良かったです。

 

【小林淳一】
神奈川生まれ、49歳。1980年、熱血なスーパーカー少年、鉄道写真少年を経て小学6年生でYMOと出逢い、音楽の世界に興味を持ち始める。高校時代よりバンド活動を始め、さまざまなイベント・ライブに出演。同時にマニュピュレーターの松武秀樹さんの影響を受け、中学時代よりコンピューターに興味を持ち、ソフトウェア開発企業を経て2003年に起業しWebアプリケーション開発会社を経営。
 

2000年にはヤマハ主催のバンド自慢コンテストに1000バンドを超える応募の中から恵比寿ガーデンホールでのNHK公開収録に「YMOトリビュートバンド」として出演。2005年には「YMOトリビュートバンド」の本格的に活動を始め「O-SETSU-Y」を結成。以降、1980年の再現ライブを4回開催し、サポートメンバーを務めた松武秀樹さん、橋本一子さん、藤本敦夫さんとの共演もおこなう。2007年には再現ライブを見た広告代理店からの依頼により、CM限定でYMO名義にて再結成がおこなわれたキリンラガーCM撮影での機材、撮影アシスタントを担当。2010年にはUstreamを使ったネット番組を不定期で放送し「坂本龍一をユル語る」回では生放送中にNYから坂本龍一さんが降臨し、番組中の二人に演奏指導をおこなったり、都内にいる高橋幸宏さんに呼びかけ、NYの坂本さん、都内の高橋さん、神奈川のYMOファンと3拠点でトリビュートバンドのライブ演奏を閲覧しながらやりとりをおこなった。この放送は深夜にも関わらず約3000人が視聴するなど話題となり、各ポータルサイトでニュースとしてとりあげられた。
 

2015年、東京、大阪、横浜にて開催されたYMO楽器展では実行委員会のメンバーとして展示機材面を担当し多くの観客を動員。2017年には35年ぶりとなる松武秀樹Logic System香港公演にも帯同するなど、経営者として活躍する一方でコアなYMOファンの一人としてYMOの残した音楽・文化を若い世代に伝えるべく幅広い活動をおこなっている。今回のライブではキーボードを担当。

機材協力者たちの思いもステージへ
YMO愛が結集するトリビュート


――横田さんはバンドメンバーではない形で今回のイベントに携わるわけですが。
横田 小林さんと知り合いになって、YMO楽器展にも見に来ないかとお誘いいただいて、そこで構想を聞かされて痛く心を打たれまして。本当にやるんだったら、ぜひ手伝わせて欲しいと自分から手をあげました。
――心を打たれたというのはどういった部分だったのでしょう。
横田 小林さんが昨日今日言ったところで、松武さんや渡辺さんがYESと言うはずがないんですよ。長い間、夢見ていたことであり、中学時代には不可能としか思えなかったことが大人になって地道に積み重ねてきたものによって、やっと実るわけじゃないですか。ステージ上だけ見るとホンモノのメンバーがいてすごく華やかに映るでしょうけど、そういった地味な部分でもいいから携わらせて欲しいという思いに駆られました。小林さんを見ていて一番強く思ったのは、本人もすごくしあわせな時間を迎えるだろうけれど、周りの人たちを多く巻き込んでみんなも喜んでくれるはずだと。それが一番重要な部分だと思うんですよね。
小林 今回のイベントってプロモーターの方も入っていなくて、企画から音楽業界とは関係のない人たちが集まって実施されるんです。たとえば会場受付、場内スタッフから何から全部、YMOのファンだけでまわしているので、そういったYMO愛が結集する場でもあるんです。
――いい話ですね。
小林 私たちもそうですけど、当日いらっしゃるお客さんも五十前後の方が多いと思うんです。それぐらいの年齢になると、もうそろそろ俺もこんな感じの人生で終わっていくのかな…みたいな思いが漂ってくるじゃないですか。でも、そうではなくて昔抱いていた思いを実現させるにはいい年齢じゃないのかって逆に思うんです。昔はお金がなくて買えなかった機材が買えるようになった。じゃあそこからもう一歩踏み出すことによってやりたかったことができる。今はSNSによって共通の意思を持った人たちがいくらでも探せる時代ですから、やりたいことをやっちゃおうよと。
――忠実に再現するには当時の機材が必要です。40年近く前のものをどうやって集めたのでしょう。
小林 二十代の頃から少しずつ集めたのもありますし、また昔からの知り合いで所有している人たちがいるんです。一人でほとんどを揃えている人もいれば、高橋幸宏さんマニアだったらシンセドラムも含むドラムセットを収集することに命を懸けている人がいたりする。そうした協力があって、今回実現します。自分の持っている楽器がセットアップされてステージに並ぶことが、その人にとって嬉しいという部分もあると思います。
――バンドメンバー以外の皆さんの思いも楽器に託されてステージに上がるわけですね。
小林 それらに加えて当時、本当にYMOのメンバーがライブで使用していた機材そのものもあります。松武さんのタンス(MOOGⅢC)やROLAND MC-8、細野さんのパートで使うARP ODYSSEYや、アッコちゃんのOBERHEIM 8 VOICEはまさにワールドツアーを一緒にまわっていた実機です。
――機材車に積まれてヨーロッパ、アメリカを旅したその機材が2017年という現代に音を出す!
横田 感慨深いですよね。あの機材から出る音が東京キネマ倶楽部で鳴るわけですから。しかも東京キネマ倶楽部って、当時のヨーロッパの会場の雰囲気がある。
――ああ、パリのル・パラスになんとなく似ています。
小林 今の時代で、電子楽器ばかりのステージ上にMIDI機材はひとつもないですから。完全な生演奏しかできません。
――40年経つのにあえてアナログ。ちゃんとメンテナンスされて今でも使用できるというのは文化遺産ですよね。
小林 当時のままやることで緊張感や時代感が出せると思います。
――今回は1979年の「トランスアトランティックツアー」の再現ということですが、第一次ワールドツアーというと赤い人民服ですよね。
小林 これもオーダーメイドで今回のライブ用に製作しています。スタッフに、高橋幸宏さんマニアで服飾デザイナーをされている方がいるんですが、生地も当時と同じ素材を使ってデザインにいたるまで忠実に作っていただいています。
――YMOはステージごとにアレンジを変えたりソロパートが違ったりするライブバンドでした。一口にトランスアトランティックツアーを再現するといっても、たとえばロンドン・ヴェニューとニューヨーク・ハラーとでは同じ曲でも演奏するにあたりかなり違ってきます。
小林 そこはボトムラインのライブ(ニューヨーク=1979年11月6日)を基本にしようとみんなで決めました。これは勢いがあるという部分で共通の認識があったからなんですけど、収録目的とかではなくそういうのを抜きにして思いっきりやっている感が一番出たライブだと思うんです。これまではボトムラインと決めたら教授(坂本龍一)のミスタッチまで含めとにかく再現度の高い演奏をすることに懸けていたんですけど、今回は自分たちが楽しくできるよう自由に演ろうというのをコンセプトにしています。なので、ボトムラインを中心とした演奏の中にところどころ美味しいフレーズが出てきたりするかもしれません。
――一曲で複数のステージのテイクが楽しめると。じっさいにこのメンバーでリハーサルを重ねてみていかがでしょう。
小林 それぞれYMOの演奏は体に染みついているぐらいやってきていますけど、バンドとしてしっかり固まるかはやってみなければわからなかったので、不安な部分はありました。シンセのコードを解析して、美味しいところをちゃんと弾けるようにするとか、そういう作業もやっています。
横田 たとえばすごく巧いフュージョンを演っている人が、まんま演ってもYMOにはならないと思うんです。スコア通りにやったらこうはならないだろうと、リハーサルを聴いていて感じましたね。そこはコードの分析に長けているメンバーがいるんですけど、一つひとつ重箱の隅をつつくような作業をして、教授のパートとアッコちゃんのパートがうまく被らないように弾くようにするとかやってきました。そういう部分の結晶が、当日までにいい形になると思っているんですけど…いやー、演っているのを聴いて本当に79年はハードルが高いと実感しました。
小林 私自身も7年ぐらいライブのブランクがありますし、同じ音楽を聴いていたといっても感覚の違いがかなりありますよね。

 


【小池実】

ベース、キーボード、短波ラジオ奏者。南米、北米を中心に世界的に活動するバイオリニスト/音楽家のPauchi Sasakiのセカンド・アルバム『KoPpu』へ共同プロデュース、楽曲提供、演奏で参加。シンガーソングライター/ギタリスト・山崎怠雅のアルバム 『フィクション』『モノリスと海』にベーシストとして参加し、山崎怠雅クインテットのベーシストとしてもライブ活動中。YMOトリビュートバンド 「O-Setsu-Y」の音楽監督として演奏面のバックアップを手掛ける。また、短波ラジオ奏者としては同じく短波ラジオ奏者の直江実樹、自作電子楽器製作/音楽家・米本実とのトリオ「実ズ」で活動中。2009年に自身のアルバム『Tiny Sketches from a Different Window』を発表。今回のライブではベースを担当。

 

【山内亜矢子】
キーボーディスト、ベースシスト、ヴォーカリスト。十代の頃からクロスオーバーサウンドに目覚め二十代の頃からフュージョンバンドやセッションで野呂一生、佐々木隆などプロとの共演を果たす。そして現在までのライブ数は優に200を超える実力派で、過去にはヴォーカリストとしてあるコンピレーションアルバムにも参加。近年では敬愛する矢野顕子の『愛がなくちゃね』のカヴァー曲が話題を呼び今回、YMOトリビュートバンドへの参加きっかけとなった。今回はキーボードを担当。


フレーズではなくイメージをコピー
YMOを知らない世代にも刺激を


――その曲のどのパートを拾うかも人それぞれです。布施さんもこれまでYMOのコピーバンドは演ってきましたが、それと比べて今回はどうですか。
布施 確かに、これまで演ってきたコピーバンドは楽譜で再現できる部分が大きかったと思うんですけど、このメンツは聴いてきた時間も膨大だし楽譜にならないようなところにこだわる人たちなんですよ。完コピを追求しちゃうと結局、似てる似てないになっちゃうじゃないですか。似るわけがないんですよ、本人たちと同じあんなすごい演奏をマネできっこないんですから。だから、そことは違うところを目指しているんだなとは思いましたね。じっさいにYMOのライブってセッションで演っている部分もあったわけですけど、最初にこのメンバーで合わせた時、小林さんがボトムラインをコピーしてきて、山内さんがル・パラスのアッコちゃんを持ってきても、音楽的に全然噛み合わないんですよ。そういったところがわかってきたのは面白かった。
――同じ曲の違うテイクでも合う合わないがあるという発見ですね。
布施 パッと聴いた感じはボトムラインっぽいものになるんでしょうけど、演ってることは違ってくるんだと思います。そもそも渡辺香津美さんが当時と同じフレーズを弾くわけがない。だから、過去のフレーズをコピーするのではなく、イメージをコピーするっていうのかな。
――ああ、わかります。その結果、演者それぞれの拾いどころが聴いた瞬間に「ここを拾ったか!」と伝わったら、オーディエンスも興奮するのだと思います。
小林 メンバーそれぞれに思い入れがあるので、すべての曲に全部を詰め込みたくなっちゃう。オーディエンスに関しては、この曲が終わったらこういう声が飛んでくるという期待があるんですけど。
――「ヘンターイ!」とか「ゲゲゲゲッ!」という、ライブ盤に収録されているリアクションそのものが。
小林 YMOのファンならやりかねないですから。
布施 ハハハッ、そこはお客さんの方も詰め込みすぎないようにコピーして欲しいですねー。
――演奏で詰め込みすぎないようにするのは、横田さんが客観的にバランスをとるんですか。
横田 そういった権限を与えられているわけじゃないですけど、メンバー同士で言い合うよりは自分が俯瞰で聴いて、こうしたらいいんじゃないかというのは言わせていただいています。
布施 半分冗談、半分本気で僕らは横田さんを“総監督”と呼んでいるんですけど、僕らはヘッドホンでクリックを聴きながら弾いているんで、演奏がどう聴こえているのかわからないんです。だから客観的に聴いてくれる人がいるのは、単なる裏方以上の重要なことをやってくれていると思います。
――ステージへ一緒に立ちながら、松武さんと渡辺さんにはどんなことを望みますか。
小林 自分たちが中学生の頃、ブラウン管の中で見続けていたアーティストの演奏を間近で見られる時点でじつは涙モノの状況なんですが、それらしいフレーズがたくさん出てくるとか、あの時と同じ仕草をしてくれるだろうとか、そういう部分に目がいってしまうでしょうね。松武さんは自分たちの師匠のような存在なんですけど、音楽のプロとして上から見ていて鋭いところで指摘していただくことで、徐々に矯正されていっている部分もわかりますし、最後は松武さんがキチッと締めてくれる気がします。こちらからこうして欲しいなどといわずとも、お二人ならそのアプローチの仕方でいいものになるのは間違いないですから。
――あとは当日、皆さんの腕で渡辺さんと松武さんをノせて欲しいです。パリ公演のように香津美さんがステージの前まで出てきてギターを弾きまくるぐらいに。
小林 お二人が演奏するうちに、あの頃の風景が頭に蘇ってきたらいいですよね。
――今回の試みは当時を体感した世代はもちろんですけど、YMOを知らないような若い世代にも味わっていただきたいと思うんです。
横田 本当にそうですよね。楽器展の時もあれほどのバカデカい機材が並んでいてやたらツマミだらけで、ドラムセットだけでも月着陸船のようで、そういうところに座って音楽をやっているわけですよね。今のようにパソコンひとつで音楽ができる時代の若い人たちが見た時に何を感じるかというのは興味深いし、そこで刺激を受けて新しいものが生まれるかもしれないじゃないですか。

布施 ですから、もし若い世代の方が聴きに来てくださるのなら、アナログシンセがPAから大音量で鳴らされるサウンドを体感して欲しいですし、40年近く前に日本で生み出された音楽を、ぜひ掘り下げて聴いてみていただきたいですね。それに、オールドファンの皆さんにもこれを機会に、現在のお三方のご活動にも目を向けてもらえると嬉しいですし、今なおYMOのお三方が新しく生み出し続けているサウンドに耳を傾けてもらえるきっかけになったら本望です。
小林 来年、YMO結成40周年になるわけですけど、そこに向けてもこれをきっかけにファンが盛り上げていけるようなイベントをやっていけたらなと思います。オフィシャルでもイベントはあるでしょうけど、ファンだからできることもあると思うので。何よりも自分たちが、YMOが残してくれた音楽を受け継いでいく一端になれたらそれに勝るものはないですね。

 

【布施雄一郎】
北海道生まれ、福岡育ち。現・東京在住。1980年、中学1年生でYMOと出逢い、熱血野球少年から音楽の道へ。高校時代に吹奏楽部で打楽器全般を習得し、1994年にクッキー缶や段ボールなどを駆使した自作電子楽器をフィーチャーしたYMO完コピ“テキ屋”バンド「VMO」のメンバーとして活動を開始する(注:パッと見聴きするとすごく似ているけど、よくよく見て聴くと全然違うため、当時“テキ屋バンド”と呼ばれていた)。その後も、インディーズバンド「航空電子」「ダブルユース」などにも参加。一方でローランド株式会社在籍時には、シンセサイザーの開発/設計業務、ヴィンテージシンセサイザーショップFive G music technology在籍時代にはメンテナンス業務に携わり、2000年からはフリーランスの音楽テクニカルライターとして独立。音楽・楽器全般/音響学/音楽ビジネスなど“音”に関わるあらゆる分野で取材・執筆活動をおこなっている。今回のライブではドラムスを担当。https://twitter.com/MRYF1968

 

「YMO Tribute Live~TRANS ATLANTIC TOUR again~」

★8月16日(水)東京キネマ倶楽部(17:00開場/18:00開演)
〔会場アクセス〕台東区根岸1-1-14(JR鶯谷駅南口徒歩3分)

〔入場料金〕1Fスタンディング7000円、2Fシート(自由席)8500円=SOLD OUT(いずれもドリンク別)

〔チケット購入フォーム〕https://t.livepocket.jp/e/fiy2m
〔INFORMATION〕YMOトリビュートライブオフィシャルFacebook

 

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