創造も想像も無限大!『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア24』開幕 | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

BGM:WATER MELON GROUP『Fly Me To The Moon』

 

『ベスト・オブ・ザ・スーパージュニア24』が17日、後楽園ホールにて開幕。A、B両ブロックの4公式戦計8試合が第1試合からメインまでおこなわれるラインナップ(スーパーJカップ1回戦と同じ)だったがオカダ・カズチカ、内藤哲也、棚橋弘至(18日に「右上腕二頭筋腱遠位断裂」による欠場が発表される。6・9後楽園で復帰予定)、ケニー・オメガをはじめとするヘビー級の主力勢が一人も出場しないにもかかわらず完売札止めとなるあたりにG1クライマックス、イッテンヨン東京ドームと並び新日本プロレスが誇るブランド品としての信用度がうかがえる。

 

 

これも24年という積み重ねがあるからこそ。最高の顔触れを揃え、最高の内容が期待される中でもやはり歴史を抜きにしては語れまい。期待感が膨らみまくる中でのオープニングマッチに、第1回大会(1994年)へ出場し、対戦している獣神サンダー・ライガーとTAKAみちのくが登場するあたり、若い世代だけでなく当時をリアルタイムで見ているファンにも響くプロレスでスタートさせようという意図がうかがえた。

 


 

第1試合のゴングが鳴らされただけで1729人の観衆による地鳴りのような歓声が沸き起こる。その中でオーソドックスな落ち着いたレスリングを見せる両者。

 

 

今年の初飛びはライガー。エプロンを走り、場外のTAKAにコンヒーロを見せた。今回が最後のスーパージュニア出場と宣言しているが当然のごとく動きはよく、衰えた感など微塵もない。

 

 

終盤はサブミッションでギブアップを迫り、耐える側の必死な姿に第1試合から盛り上がる。中でもTAKAのジャスト・フェースロックを1分近く耐え抜きロープへ脱したライガーへ拍手。

 

 

最後は空中胴絞め落とし、ライガーボムで追い込まれながらもTAKAがディフェンスされ続けたサミングをようやく決め、次の瞬間にはヘビーキラー1号で固めて逆転勝利。試合後、勝者は深々と一礼し先にリングを降りた。残ったライガーには万雷の拍手。

 

 

第2試合は一進一退の攻防の末、ボラドールJrがコーナーへ登ったタイガーマスクの動きをジャンピング・ハイキックで止め、スパニッシュフライにつないで勝利。ボラドールはヒザから先の脚が長く見えるので、飛び技を出すと独特の絵面になる。

 

 

第3試合はまったくカラーもファイトスタイルも違うタイチとリコシェ。例によってあべみほ嬢による色仕掛けがそこかしこと見られる。リコシェがそれに惑わされることはなかったが、トペ・スイシーダを食らったあと強引にリング内へ入れられたタイチが再び自分からリング下へ出て、あべみほ嬢を強引にリング内へ投げ入れ、リコシェが気を取られるスキにグルリと回って背後から近づき、マイクスタンドで首を絞めるという姑息な手段にはハメられてしまった。

 

 

それでも躍動感あふれるスワンダイブ式エルボーアタックで反撃し、最後もベナドリラー式ローリングハイキックからファーストクラスフライト(シューティングスター・プレス)につないで完勝。3年ぶり2度目の優勝に向けて好スタート。

 

 

第4試合は初出場とACH(本名Albert C. Hardie Jrの略)が登場。昨年はプロレスリングNOAHのリングで石森太二とのコンビで活躍し『スーパージュニアタッグトーナメント』に2人で出場して新日本ファンの間でも人気が高まったため、登場しただけで大きな歓声を浴びるほどに浸透していた。

 

開始のゴング前、BUSHIに握手を求められたACHは差し出された右手の裏を除き込むほどの慎重ぶり(そこを見たからといって罠なのかどうかは書かかれていないが)。綿密なる調査の結果、信用できると判断して握り返したが、案のじょう直後にドロップキックが飛んできた。

 

 

カウンターのマンハッタンドロップを決めてドヤ顔のACH。そんなにやり返したのが嬉しかったのか。さらには入場時にもやったコブシを突きあげるポーズを、技が決まるごとに見せると場内が一体化。

 

 

BUSHIのMXを下からのドロップキックで撃墜し、テキサススマッシュ(ラリアット)からのミッドナイトドライバー(みちのくドライバーⅡ)でACHの勝利。BUSHIはROHとの北米ツアー帰りのため、時差ボケが敗因と語っていた。次の公式戦まで回復するのだろうか。

 

 

休憩明けの第5試合はKUSHIDAvsエル・デスペラード。5・14フィラデルフィアでマーティ・スカルから奪取したROH TV王座のベルトを巻いて登場したKUSHIDAだったが、デスペラードが急襲をかけたため、ベルト姿お披露はちょっぴりの時間で終わってしまう。

 

 

この試合、デスペラードの開脚ムーブが唸りをあげた。バズソーキックもかわし、ホバーボードロックは巻き込まれたレフェリーが不在となりタップするも命拾いしたあと、美しいリバース・タイガードライバーで動きを止め、ギターラ・デ・アンヘルで3カウント奪取。開脚した時の体勢がまさにデスペラードの“ペ”の字を描く。

 

 

この日の大会は外国人ファンの顔が多く客席で見られた。南側最後部席に陣取った5人の海外プヲタの皆さんのお目当ては、このマーティ・スカル。「俺っちたちのスカルがニュージャパンのジュニアフェスティバルに上がったぜ!」と言わんばかりのワッショイぶりで喜んでいた。

 

スカルは鴉マスクをつけて登場。持ち込んだ傘を広げると、どうだ!と言わんばかりにデカデカとバレットクラブのロゴが入っている。5・12ニューヨークでバレットクラブ入りをアピールした時に用意したもの。キャッチフレーズの“Villain・ヴィラン”とは悪役の意。ちなみにこの方、昨年8月に数秒間だけアイアンマンヘビーメタル級のベルトも奪取している(第1142代王者)。

 

 

序盤は両手をヒラヒラするポーズを見せ合い場内を温めたスカルとウィル・オスプレイ。スカルはとにかく伝わりやすい表情が持ち味。これだけで日本のファンのハートをワシづかみにしてしまった。

 

 

ティヘラで振り回されず着地してしまうのは、もはやこうした高度な空間においてはデフォルトになっている。初対戦でもないのに、オスプレイの動きに初めて見たかのような驚きの表情を浮かべるスカル。

 

 

オスプレイのシューティングスター・プレスを剣山でカットしたあと、またしても得意げに両手をヒラヒラさせるスカル。この時点で、入場テーマ曲の合いの手で「Foo!Foo!」と合唱するのが定着しており、スカルが何をやっても場内に「Foo!Foo!」が響き渡る状況に。ちなみにリック・フレアーの「Woo!」より語尾上げです。

 

 

2・11大阪で柴田勝頼とブリティッシュヘビー級王座を懸けて闘ったオスプレイがこの技を。

 

 

これはありそうでなかった。ボディースラムでロープへ投げつける行為。

 

 

2連覇を目指すオスプレイは相変わらずの無重力プロレスを次々と披露。サスケスペシャルも絶品。

 

 

レインメーカーポーズからバックに回ったオスプレイのクラッチを外したスカルは、指をつかむ。オスプレイの「やめてよして!」という許しを無視し、引き裂くように力をこめると「パキッ!」という乾いた音が場内へ響き渡り、オスプレイは指を押さえて狼狽。試合後も左の中指は曲がったままだった。

 

 

それでもオスカッターで逆転勝利を狙ったオスプレイだったが、なんとスカルはこれを空中でキャッチ。そのままクロスフェース・チキンウイング(胴絞めチキンウイング・フェースロック)に持ち込みギブアップ勝ち。日本初戦で昨年覇者から勝利を奪うという満点デビューを果たした。

 

 

試合内容も見せ方もじつに個性的だったスカル。だが、これで全貌を披露したとは到底思えず、まだまだ“いいモノ”を隠し持っているように思える。残りの公式戦、誰と当たっても楽しみになってきた。

 

セミファイナルは田口隆祐vs金丸義信。立ち上がり、何度もグータッチを求める姿はまさに猫のような動きのプロレス。でも金丸は応じず。

 

 

この試合、金丸が徹底した田口ワールド封殺に出る。ヒップアタックも長嶋茂雄の4打席4三振ばりの豪快すぎる空振りっぷり。さらには「オヤァイ!」ポーズの途中で突進した金丸がドロップキックでカット。おかげで「オヤァ」までしかできない田口監督だった。

 

 

そんな田口監督、オーマイ&アンクルホールドで勝機をつかんだものの、鈴木軍のセコンド・TAKAがレフェリーの目を引きつける間に金丸が急所蹴りで脱出。ところが股間を押さえ悶絶して倒れた田口の右足がたまたま金丸の急所へ「コカーン!」と入ってしまったからタマらない。内股状態となった金丸をポーンと蹴飛ばすと、その勢いでエプロンに立つTAKAと激突。反動で返ってきたところをインサイドクレイドルで丸め込むという、絵に描いたようなエディ・ゲレロ殺法で田口が勝利をせしめたってぇの。

 

 

勝った直後の監督は痛めた股間にコールドスプレーを噴きかけられ、この表情。スクリーンへ大映しになると、場内がやたらしあわせなムードに包まれた。

 

 

そして股間を押さえながら勝ち名乗り。田口監督、試合後の談話は「(股間に入ったのは)たまたまです。今日の勝利はたまたま。目の前にボールがあったのでシュートを決めただけ。金丸選手は魅力的な選手。タグチジャパンにほしいです」

 

 

セミまではどれもカラーの違う試合となり、まったく間延びするところがなかった。グルーヴ感が充満する中、いよいよメインへ。高橋ヒロムとドラゴン・リーは2・11大阪のIWGPジュニアヘビー級戦に匹敵するダイナミックでスリリングな攻防を展開。言葉による表現を上回る場面が次から次へと現出する。中盤、ジャーマンで投げっ放されながらすぐに立ち上がりジャーマンで投げ返すラリーが、3往復見られる。

 

 

コーナーからダイブしてのカナディアンデストロイ。TIME BOMBを丸め込みで切り返そうとするリーを強引にぶっこ抜いてジャーマン・スープレックスに持っていく力技も見せた高橋。

 

 

最後は高橋の得意技であるターンバックル・デスバレーボムをリーが放ち、そこからドラゴンドライバー(フェニックス・プレックス・ホールド)で3カウント。日本マットでこの技を使う飯伏幸太以外の男がここにいた。

 

 

勝ち名乗りをあげたリーは、日本凱旋後シングル初黒星を喫した高橋を踏みつけ、その上を通過。最後もスペイン語でアピールし開幕戦を締めた。

 

 

これほどの内容を提供しながら21時少しすぎにはキッチリと興行が終了する進行も含め、完成度の高いスタートとなった今年のスーパージュニア。ここにアップした画像を見て想像が膨らんだら、ぜひ会場へ足を運んで生体感していただきたい。