新日本プロレス旗揚げ記念興行で“一強時代”到来の感触 | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

BGM:米米CLUB『浪漫飛行』

 

1年前は3日だったが、やはり3月の新日本プロレス大田区大会に足を運ぶと反射的にあの日のことを思い起こす。最寄駅である梅屋敷の改札を出た時、体育館とは反対の左方向へ気持ちが向いた。ハヤブサ選手取材のたびに訪れたこの街は、あれから1年経っても変わることがなく、今でも江崎英治のぬくもりを残している気がした。

 

大田区総合体育館大会は両国国技館クラスのヴォリュームに。月曜19時開始にもかかわらずスタートの時点で超満員となっていた。メインではIWGPヘビー級王者のオカダ・カズチカがノンタイトル戦ながらタイガーマスクWと一騎打ち。30分時間切れギリギリのところで勝負を決める。

 

 

1月のケニー・オメガ戦、2月の鈴木みのる戦、そして今月のタイガーマスクW戦と、オカダは毎月プロレス界のベストバウトを生み出している。それもタイプが違う相手であり、それにともない試合内容のカラーもまるで別の“作品”となる。

 

二十代でこれほどの幅広いプロレスを体現できるのだから、今さらながらレベルが違う。数年前、オカダは「アントニオ猪木さんの時代の新日本プロレスのような一強時代にしたい」と語っていたが、まさにそれが現実となりつつある。それは単にIWGPヘビー級のベルトを守り続けているからではない。当時の猪木さんも、幅広い相手と闘った。

 

ただ、猪木さんの場合は誰と闘っても最終的には自分のカラーに染めて、ファンの中にある最大公約数的アントニオ猪木を提供し続けたのに対し、現代の一強は相手が変わるたびにオカダ・カズチカのカラーを多様化させているように映る。そこは、時代が求めているものの違うも関係してくる。

 

そして、一強と本格的に絡まぬことで独自の立ち位置を強固なものとしつつあるのが内藤哲也。この関係性が面白い。溜めを重ねれば重ねるほどに価値が熟成されていく。

 

 

一方、これまでは“特別枠”だったタイガーマスクWが新日本のメインストリームを担う相手と肌を合わせたのは、刺激的な絵面だった。今の彼に必要なのは、自分を突き動かす渇望感。タイガーマスクWの存在を研究するかのごとく俯瞰するのではなく、その中で本心からやりたいと思うことを見いだせば、もっと面白い存在になれるだろう。

 

 

メイン終了は22時過ぎ。通常よりも1時間遅らせ、23時開始としたニコニコプロレスチャンネル二次会だったがそれにも間に合わず、到着してから写真を選んで40分ほど遅れてのスターとなったにもかかわらず、熱心の参加者の皆様に待っていただいた。

 

平日深夜2時すぎまでお付き合いいただけたのだから、本当にありがたい。それほど語るべきものがあったということだろう。