最近、ネットなどを見ていると、国際中医師という肩書きで、ブログを書いたり、薬膳の講師をしたり、薬剤師が漢方を処方したりするのをよく見かける。
これは、非常にやっかいな現象だ。厚生省に取り締まってもらいたい。
国際中医師というと、一般人からしてみたら、あたかも中国の伝統医学である中医学を修めた医師のように聞こえるが、全くそこまでのレベルの資格ではない。
中国では、中医学を修めた医師になるには、中医薬大学で5年の課程を修め、1年の病院研修を終えて、中医学の国家試験を受けて、合格して、中医師の免許が与えられる。
そして、この試験を行う機関は、政府の外郭団体である世界中医~会である。
そして、この機関が国際中医師の試験も行っている。
いや、この機関は、国際中医師という言葉は使っていない。国際中医水平試験という風に言っているようだ。
それは、どういうことかというと、中医学の試験を海外でやって、合格したものに対して、合格証を発行するというものだ。
それは、なんのためにやっているのか?ひとつには、中国医学の宣伝効果、海外への啓蒙効果、それとお金である。
日本で、この試験を仲介している団体は、~中医薬大学日本校と称している場合が多い。
しかし、正式な学校ではなく、塾みたいなものである。
この試験の受験料に、16万円も取っている。
おそらく、実際の試験実施機関に支払っている金額はもっと少ないだろう。
それでも、中国の試験実施機関にしてみれば、収入になるので、この試験をする価値は十分にある。
この試験を受ける受験資格は、日本の仲介学校では、一応定めているようだが、実際は、その学校が定めているだけで、中国の試験実施機関は特に定めていないだろうと思う。
ようするに誰でも受けられるのである。
アメリカの政府の認定を受けていない団体が、~大学と称して、レポートを提出させて博士号などを発行するいわゆる”ディプロマミル”と同じ仕組みである。
これは、この資格を取るほうの問題も大きい。
薬剤師がこの試験に合格して、”国際中医師”と称する。
ディプロマミルというのは、発行する方も悪いが、それを取得して、利用する方にも問題がある。
日本人にしてみれば、その ”国際中医師”という資格はうそではない。だって、その学校の先生もその資格をそう呼んでいたし、意味的には間違っていない。
だから、それで泊をつけて、セミナーとか、薬膳の料理教室などを開催する。お客は何も知らないから、先生は、”国際中医師”なんだ。中国医学の先生なんだと認識する。
~中医薬大学日本校と称している学校は、実際に中国の大学を出た本物も中医師が教えているようだ。
だから、教育の内容自体はそんなに悪くないと思う。
しかし、月3回日曜だけの講義とかそういう講義数である。それで3年の課程を終えたとかと、国際中医師の資格を得た日本人は言う。まあ、うそではないから、やっかいである。
中国人もよく考えたものだ。たぶん、日本に来て、彼らは、お金を稼ぐのはかなり苦労しただろうと思う。そこで、この中医薬大学日本校である。
ただ、塾で中国医学を教えるだけだったら、ほとんど生徒は集まらなかっただろう。
そこに日本人の資格志向と権威志向にみごとにはまった。
中国政府;中医学の海外でやる試験。→日本の学校”国際中医師”と呼ぶ→日本人。なんかすごい偉そうと思う。
中国政府の外郭団体が実施している試験→日本の学校;国家資格だよ→日本人。満足する。
ディプルマミル成立である。
みんながちょっとちょっとずつ嘘をついて、利用している。
そして、一番馬鹿を見るのは、最後に利用した人。薬膳のセミナーに通う人。薬局を利用する人である。
それに、取り締まるべきだとは思うが、みんながちょっとずつ嘘をついているので、取り締まりにくいのである。
国際中医師と称している人を取り締まる。→学校が国際中医師と言っているし、発行された合格証にも”国際的行う、中医学の試験”と書いている。国際中医師じゃん。となる。
日本の学校を取り締まる→中国医学を教えて何が悪い。中国の試験を仲介して何が悪い。ということになる。
中国政府に抗議する→中国の文化を啓蒙するために海外でしている試験に文句を言われる筋合いはない。日本だって、海外の日本食レストランに資格を与えてたじゃないか?それといっしょだよ。
ということになる。
なんともやっかいなものである。
まあ、利用する側が注意するしかないのかなあ。
念のために書いておかないといけない。
僕は、中医学は、大賛成なのである。
臨床を行う医師は、西洋医学と中医学と両方修めてほしいと考えているぐらいである。
ただ、それだけに中医学が間違ったように伝わるのが嫌で、国際中医師と名乗る人が、実力がなくて、中医学ってそんなもん。と思われるのが嫌なのである。