福祉分野に関わりの少ない、平均任期1~2年の「新任福祉部長」の困惑

 

前述までのとおり、本ブログをアップすることを思い立った「理由」を三つ、述べましたが、実は、まだ、あと二つほど、その理由があるのです。

 

どうか、あともう少しの間、この流れにお付き合いいただければと思います。

 

地方自治体では、福祉分野での職務経験の短い(または、ほとんど無い)職員が、定期、または、不定期の人事異動により、いきなり「福祉部長」という役職を担うことになる、ということがあります。

 

そのような、「いきなり」福祉部の部長職を担うこととなった方をサポートすることのできる、また、その部長職にとって、すぐに役立つ「手解き」や「ノウハウ」を整理したい、という考えを持ったのが、ブログをアップする「五つの理由」の内の、四つ目の理由です。

 

実のところを申し上げますと、この四つ目の理由は、ブログのコンセプトの重要部分の一つであり、本書を執筆しようと思いついた、一番初めの動機でもあるのです。

 

本ブログの主たる読者のターゲットは、三つ目の理由のくだりでお伝えしたとおり、地方自治体の福祉分野の政策立案や、政策分析に携わる職員の皆様ですが、その中でも、とくに、読んでいただきたいと思っているのが、地方自治体で、毎年(または、2から3年に1度)、4月に誕生する「新任の福祉部長の方々です。

 

本ブログでは、その「新任の福祉部長」の方々を、親しみを込めて、「新福祉部長さん」と記すこととし、度々、本書の中で、筆者が語り掛ける相手として登場をしていただくこととしています。

 

筆者は、福祉部の筆頭課の課長職として、4年間ほど、歴代の福祉部長をサポートしてまいりました。(ちなみに、現在は、筆者自身が福祉部長を拝命し、福祉部長2年生です。)

 

課長時代の4年間に、先輩の福祉部長は3回、変わりました。

 

4年間に3人ですから、その内、2人の部長職の任期は、僅か1年間限りで交代、ということです。

 

過去を、振り返って見れば、筆者は同じ地方自治体に25年以上在籍していますが、この間、同一人物が、福祉部長の職を務めた最長期間は3年間で、それは僅か2人きりでした。

 

その他の多くの福祉部長は、1年間または、2年間の任期を終え退職、または、役職定年となっていったのです。

 

また、その間、社会福祉行政に非常に長く携わってきたという経験をもって、その後に、(叩き上げの)福祉部長となった、という事例は、1度もありませんでした。

 

このようなケースは、別に、特殊な事例ではありません。全国の地方自治体でも、だいたい、似たような傾向があるのです。

 

その理由は、本書の中で詳しく述べますが、組織の役職の中で、部長職という役職のポストが最も少ないということに由来しています。

 

地方公務員の人事は、現在もなお、若干、年功序列の風土を残しています。

 

小規模な地方自治体では、最も役職の高い部長に昇格するには、同じ年代(年齢)の、または、同期の職員の人数だけでなく、地方自治体の首長(知事、市長、区長、町長、村長)の交代という、政治的な影響を受けることもあります。

 

退職を目前にして、最後の最上位の役職である部長職に、「運」よく順が回ってきたとしても、選任される部長職は、それまでの職務の経歴とは、ほとんど関係のない「空いているポスト」の部長職、となることは地方自治体ではよくあることなのです。

 

話を、一度、戻しましょう。

 

筆者は、このように福祉部長が変わる度に、歴代の福祉部長と同じような質問をされ、それに、毎回、同じように答えていく、という体験を繰り返してきました。

 

社会福祉士という福祉の専門職として、また、福祉部局のさまざまな部署や業務に携わってきた筆者にとっては、ごく常識的であることが、「新福祉部長さん」にとっては、「知らなかった」、「初めて知った」、という感じでした。

 

そうは言っても、部長職となるほどのプロフェッショナルな行政マンですから、頭のキレや回転は速く、必要なレクチャを行えば、すぐに福祉部長として取組むべき課題や、目指すべき施策方針について理解していただけます。

 

コロナ禍において、緊急的な予算措置が必要なときなどには、素早く、その手腕を発揮していただき、助けていただくことも度々ありました。

 

しかしながら、そのような福祉部長も、議会答弁などで、制度の詳細な部分、または、制度の成り立ちや、その制度の根源の課題に関する部分を地方議員から問われる際には、やはりそこは、アドリブでは「説明できない」、「厳しい」と、いう言葉も漏れました。

 

もちろん、その一方で、長年の社会福祉の現場経験と専門的知識を持って、福祉部長の職に就かれたという諸先輩方が全国にはおられること、また、その手腕を十分に活かされて、素晴らしい政策的な実践をされている地方自治体がある、ということも存じております。

 

実際に、全国の地方自治体の福祉部長の経歴に関する実態を調査したわけではありませんから、不用意なことを申しあげられませんが、専門職の全国大会や学会等の機会に、全国の地方自治体の職員の方々から聞かされる情報を基にすると、「新福祉部長さん」の状況は、だいたい、同じような具合ではないか、と推察することができます。

 

もし、そうであるならば、「新福祉部長さん」と言われる方々を、陰ながら支えてきたという経験と、実際の福祉部長を担いそこで得た経験を、多少なりとも持っている筆者が、福祉部長の交代の度に、毎回のように質問されてきた疑問や課題点を整理して、それを、少しでもわかりやすく示すことができたとすれば、きっと、役に立つのではないか、と考えたのです。