「マクロレベルのソーシャルワーク実践」とは何か?

 

そして、本ブログをアップすることを思い立った、最後の、五つ目の理由は、自身が本ブログのテーマとしているところの、地方自治体における「社会福祉経営(マネジメント)」の理論と実践について、そこに、「マクロレベルのソーシャルワークの理論と実践」という表現を加えて、論じてみたい、と考えたことです。

 

社会福祉士である筆者は、その資格取得のための養成課程において、また、資格取得後においても、ソーシャルワークの実践には、ミクロ・メゾ・マクロの、「3つのレベル」の実践がある、と学んできました。

 

非常に拙い解説ですが、「ざっくり」述べるならば、「個別援助」としての「ソーシャルケースワーク」がミクロレベルの実践で、他分野や多機関との連携・協働や、地域の中のインフォーマルな社会資源を活用する、地域福祉をベースとしたコミュニティソーシャルワークがメゾレベルの実践である、という感じでしょうか。

 

では、マクロレベルのソーシャルワーク実践については、どのように説明すればよいでしょうか。

 

マクロなのだから、「ソーシャルワーク全体を俯瞰的にとらえるもの」、とも考えられますし、「大規模なフレームワークの実践であるもの」と考えるならば、「社会福祉政策」の立案や、新たなニーズを解決に導くための「法整備」、であるとも言えるでしょう。

 

または、現代社会において注目されている(あるいは取り残されてきた)社会問題、に対する「ソーシャルアクション」に関すること、なども思い浮かびます。

 

しかし、マクロレベルのソーシャルワーク実践が、他の領域と同じように存在するのであるならば、もう少し明確な根拠と理論に基づいて、それを説明することができなければなりません。

 

近年、「ソーシャルワーカーによるマクロレベルのソーシャルワーク実践が十分に機能していない」のではないか、という見解を基にして、ある団体により「マクロレベルのソーシャルワーク実践」に関する調査研究が行われました。

 

その成果は、また、書籍としても発行されました。

 

しかしながら、そこに示された「マクロレベルのソーシャルワーク」の理論と実践については、筆者のイメージするものと、「何かが違う」、という「違和感」を抱いたのです。(※当該団体による調査研究や書籍の内容を批評するものではありません。)

 

筆者は、自分自身が経験した、地方自治体における「社会福祉経営(マネジメント)」の実践が、地方自治体という範囲内での「マクロレベルのソーシャルワーク実践」に近いものではないか、という仮説を持っていました。

 

そのような筆者にとっては、前述の研究成果のまとめでは、実践と理論の関係を、まだ、「何か」、十分に、明確に、言い表せていないように感じてしまったのです。

 

このような感覚的な表現では、研究関係者らに、お叱りを受けるかもしれませんが、個人的な感想として、どうも「しっくりこない」という印象を持ったのです。

 

そのことについて、筆者なりに、いろいろ考えてみると、その「しっくりとこない」感覚の原因は、「マクロレベルのソーシャルワーク実践」について、その実践を、マクロソーシャルワーカーという立場で(組織内で最上位の権限を持つ役職や立場で)経験することがなかったか、または、経験していたとしても、その実践経験は、理論を導き出すに足りる程度の量(年数)ではなく、ごく一部分の(短期間)に限られたものであったため、ではないかと・・・。

 

その研究成果のまとめでは、確かに、優れた実践事例が紹介されています。

 

しかし、地方自治体における社会福祉の政策立案や政策分析に長年携わる中で、筆者が実感をもって感じることは、僅かな「成功事例(ベスト・プラクティス)」について語ることよりも、その数倍以上、数多く経験した「失敗事例(バッド・プラクティス)」を語り、分析することのほうが、後に続く者に対して、より誠実であり、有意義である、ということです。

 

その実践の「成功」と「失敗」の実際から、理論は構築され、そして、更なる実践によって、またその理論は改善され、書き加えられていくものではないか、と思うのです。

 

「失敗例が十分に語られていない」、そのようなところからも「しっくりとこない」という「違和感」を感じるのかもしれません。

 

筆者は、また、「マクロレベルのソーシャルワーク実践」というものを、地方自治体という範囲内で考えたとき、「マクロレベルのソーシャルワーク」の実践者となる者は、ある一定の地域内の、社会福祉の分野のすべてを統括する責任者である地方自治体の「首長」か、または、それに専従する「福祉部長」、または、彼らの命を受けて政策立案、施策の実施、運営という実践に取組む「福祉部の各課の担当職員ら」ではないか、とも思っています。

 

このように、既存の理論や実践と、自身の実践研究との間に生じた、この「しっくりとこない」違和感を埋めるためにも、自分自身で、「社会福祉経営(マネジメント)」の理論と実践の延長線上に「マクロレベルのソーシャルワーク」の理論と実践があるということについて、論じてみたいと思ったのです。

 

このテーマは、少し、難しそうに感じられるかもしれませんが、それを、事例を踏まえて、社会福祉に関して素人の方々であっても、十分に、興味を持って理解できるように、できる限り「わかりやすく」、(しかし、必要な部分は読者にはやや苦痛かもしれませんが、一部についてはやや学術的に)、論説することとしました。

 

本ブログでは地方自治体において「社会福祉経営(マネジメント)」に携わる人、「マクロソーシャルワーク実践」を行う人、にとって、「しっくりくる」ということを目指していきたいと思っています。

 

しかしながら、もし、筆者の論説が、読者にとって、なお、「しっくりとこない」というものであったならば、そう感じる者が、また、現れて、筆者の論説の説明不足の点や、改善点を見出して、議論を深め、より精度の高い研究にしていっていただけたならば、「(自称)にわか研究者」として冥利に尽きます。

 

以上が、本書を執筆しようとした「五つの理由」です。