芸術とワイセツと表現規制 | ケネディスタンプクラブ日記

ケネディスタンプクラブ日記

四谷駅前のケネディスタンプクラブの日記です
商品の紹介など書いていきます。

最近、日経新聞に出したマンガの広告をめぐって、「こんなマンガの広告するなんてけしからん」という議論が起きております。

その広告やマンガの内容についてはここではふれませんが、けしからん絵画を規制せよという話は今に始まった事ではありません。

日本国内では、江戸時代に浮世絵の規制が繰り返し行われました。
肉筆画からはじまり版画による大量生産へと移ってきた浮世絵は、まさに江戸時代の庶民の文化で、今で言えばマンガに置き換えると理解しやすいと思います。
浮世絵作家(マンガ家)が描いた作品を版元(出版社)が刷師(印刷所)に渡し、できあがった商品を版元(出版社)が売りさばくという、現代でも馴染みの方式は江戸時代中期に確立されていました。
そして需要を満たすために供給が行われるのも今と同じで、需要としては役者絵、美人画、そして春画です。

浮世絵の祖とも言われた菱川師宣、現在では「見返り美人」で有名な浮世絵師ですが、彼が描いた作品のかなりの部分は春画が占めています。
切手趣味週間 見返り美人シート | 切手,切手趣味週間 | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)



菱川師宣が亡くなってからは、鈴木春信が活躍し多色刷り版画の技術も確立されます。
切手趣味週間 見立夕顔(鈴木春信)60円シート | 切手,切手趣味週間 | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)



第16回万国郵便大会議記念 文読み(鈴木春信) 50円シート | 切手,国内戦後シート | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)

 

切手趣味週間 まりつき(鈴木春信)10円シート | 切手,切手趣味週間 | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)



しかし享保の改革(1716年)から目に見える形で春画に対する規制がはじまります。
喜多川歌麿は、あの手この手で規制をかいくぐって春画などを描き続けましたが、春画とは別の「禁じられている織田・豊臣時代の絵を描いた」事を理由として逮捕、手鎖50日の刑を受けてしまいます。これ以上描くなという事で、とんでもない話です。喜多川歌麿はこの2年後に亡くなります。
切手趣味週間 ビードロを吹く娘(喜多川歌麿)10円切手シート | 切手,切手趣味週間 | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)



第16回万国郵便大会議記念 文よむ女(喜多川歌麿)30円切手シート | 切手,国内戦後シート | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)

 

切手趣味週間 台所美人(喜多川歌麿) 60円シート | 切手,切手趣味週間 | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)



ちなみに、享保の改革で好色本(井原西鶴の「好色一代男」も含む男女の情交を題材とした本)が禁止されたのですが、そこは当時も現代と変わらずというか我々現代人のご先祖なので、公に流通させない形での製造販売手段を作り上げます。つまり「同人誌」扱いです。そこでは贅沢禁止の表世界とは隔絶した、独自の最高技術による多色刷りまで登場し、印刷と作画技術がどんどん向上していくという、完全に現代の「同人誌」世界と同じ状況になっていたわけです。
もちろん描かれる内容は男同士もあれば女同士もあり、葛飾北斎の触手まである。江戸時代から我々はあまり変化ないのかもしれません。

さて、西洋の絵画はどうかと言えば、こちらも当局から睨まれる画家が現れます。

まず、エゴン・シーレ。
エゴン・シーレ 切手小型シート モザンビーク発行 | 切手,アフリカ | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)


警官から目の前で作品を燃やされたりもしたシーレですが、しかし彼の場合は作品よりも彼の私生活の方面で睨まれていたようです。若い女性が何人も出入りして裸になっているという、画家なんだから当たり前の理由で警察に通報がよくあったらしいのです。とはいえ、エゴン・シーレはかなりのハンサムで、モデルの女性達ともいろいろあったようですから潔白というわけではなかったようです。

次にバルテュス。
この人の作品が切手になってるのを知った時はちょっと驚きました
フランス所蔵絵画 切手5種 1982年 フランス発行 | 切手,ヨーロッパ・ロシア | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)


なぜなら、基本的にこの人の作品は少女の下着姿もしくはヌードなので、政府に近い郵政事業が扱うには不適当な作品ばかりでしたから。
このフランスが1982年に出した切手の「トルコ風の部屋」は、まだおとなしい作品です。
「夢見るテレーズ」などはメトロポリタン美術館に対して撤去要求運動がおこったほどです。
(ちなみに、バルテュスの奥様は出田節子さんという日本人で、ご存命中です)

さらに、もっとすごいのが、ギュスターヴ・クールベの「世界の起源」

まあ、絶対に切手にはなりませんね。

しかし、「ワイセツではない芸術だ」から「ワイセツの何が悪い」まで、洋の東西も時代も超えて、答えの出ない論争が続いています。
数十年前にはPTAから悪書追放運動で敵視され本が焼かれたマンガ家の永井豪は、今では文部科学大臣賞を受賞しています。
GO'S WORLD (永井豪の世界) 切手小型シート 中央アフリカ発行 | 切手,アフリカ | 趣味の中古切手や紙幣・硬貨の販売と買い取り|ケネディ・スタンプ・クラブ (kennedystamp.jp)


ワイセツかどうかの基準というのは実はかなりあやふやで、その時代によって大きく変わります。

作品の判断を後世にゆだねるためにも、表現の自由だけは守りたいものです。