タイトル:新射撃論

 射撃をしていると人に言うと、必ず言われることの一つは「目がよくないと当たらないんでしょう?」というものだ。結論から言うと、目が悪くても当たる。のび太君も射撃がうまいぞというのは冗談だが、ライフル三姿勢競技の世界記録をもつデベベッチというスロベニアの射手も裸眼視力は0.1程度だ。
 では、なにが重要か。集中力か?ちがう。重要でないとは言わないが、競技をやるからには集中するのは当たり前だ。射撃の能力として重要なのは、筋緊張の程度を調節する能力だ。ライフル射撃はいかに身体を静止させられるかを競う競技だ。しかし、身体の静止は身体機能の停止を意味しない。安定度の高い静止状態を反復して実現するには、自らの身体に関してできるかぎり多くの情報をもち、しかもそれを必要な場面で望ましい状態にできなければならない。
 そこでは、スピードやパワーという動的要素がそぎ落とされている。それがため、逆に身体感覚をかぎりなく研ぎ澄ましてくことが要求される。それは実はあらゆるスポーツの本質と言うべきもので、射撃は誰もがストレートにそこに入っていける類い希なスポーツなのだ。

(執筆日:平成20年1月27日(日))
タイトル:隗(かい)より始めよ

 今月20日(日)山口市内で、私が所属する山口県ライフル射撃協会は銃器・弾薬の安全管理についての研修会を開いた。一連の銃器がらみの事件・事故への対応として山口県警からの指導徹底の要請を受けてのものだ。研修会の実施にあたって、当協会から県警生活安全部に講師派遣を依頼したところ、快くご承諾くださった。研修会には雨の中多くの会員が出席し、銃器の保管上の注意や盗難防止の心がけなどについて認識をあらたにした。
 そもそも銃器所持者には所持許可の更新にそって、県警が実施する講習会の受講が義務づけられており、制度として安全教育の機会は整えられている。このように、協会が別途研修会を実施するのは初めてのことだった。
 銃器が絡む事件や事故が起きたとき、競技射撃をしている者は「真面目にやっているわれわれまでそういう目で見られる」と迷惑を被っているという意識をもちがちだった。しかし、そういう姿勢ではこの国で一つのスポーツとして射撃が認められるようにはならない。競技射撃者こそ銃器による事件や事故を根絶することにもっとも関心をもつべきだ。小さなことかもしれないが、この研修会がそのきっかけになればと考えている。

(執筆日:平成20年1月20日(日))
タイトル:障害者さん

 障害者に関わる仕事をしている。かつては想像もしていなかったことだ。私は大学卒業後にある化学メーカーで研究員として13年働いていた。
 現在の私の職場、アス・ライフサポート(※)は山口市にある障害者と高齢者の支援団体だ。平成16年に事業を始めた。制度から言えば、障害者自立支援と介護保険のサービス提供事業者だ。私を含め開業時のスタッフの多くは福祉とは異なる分野で働いていた。それだけに、お相手が障害者だからこうしてあげないといけないという先入観がなく自然な雰囲気があることが関係者の間で高く評価されている(と自分で勝手に思っている)。
 ある職員は「障害者さん」という呼称を口にすることがある。この言葉、ネット検索すると結構引っかかってくるので、彼の発明とは言えないようだ。ただ、一般にはあまり使われていないと思う。もちろん彼にはそれを使う状況を判断する十分な思慮が備わっているが、私もそう悪くない表現かもしれないと思っている。少なくとも、一部の病院で使われている「患者様」という気色悪い表現よりはるかに暖かみがあろう。そう感じるのも、私が日頃この施設を利用する人と彼とがどのように接しているかを知っているからにちがいない。言葉とはそんなものだ。

※執筆当時に勤務。現在は、デイサービス ラ・ベルヴィに勤務。

(執筆日:平成20年1月13日(日))