「こんな環境で勉強している子達がいるなんて…」
そう衝撃を受けたのが去年の12月。10ヶ月以上にわたったDivine Junior Academyの教育環境改善プロジェクトがようやく完了しました!
学校の代表者や建設業者との間でトラブルを抱えることも多く、正直「こんなことしなければよかった」と何度も思いました。僕の協力隊活動のストレス源は、9割がこのプロジェクトだったと言っても過言ではありません。
ですが、プロジェクトを終えたときの子どもたちの嬉しそうな笑顔は、苦労したからこそ見られたもの。僕にとってはかけがえのないご褒美でした。
今回は小さなハートプロジェクト完了のご報告です。
Dvine Junior Academy
Divine Junior Academyは、戦争やエイズなどで夫を失ったシングルマザーやその子どもたちのための学校で、とても低い学費で運営されています。
こうした学校がなければ、この地域の子供達は「貧しい→学校に通えない→進学や就職ができない→貧しい」という「負の連鎖」の中を回り続けることになっていたでしょう。
ただ低い学費で運営されている分、この学校には教科書を始めとする教材も、しっかりとした教室すらありません。小学校唯一の教室がこれ↓。
小学校唯一の教室。ベニヤ板で左右2つの教室に分けられています。
木を組んだだけで、中の床は地面そのまま。強い雨が降れば、吹き込んでくるし屋根に当たる雨音はうるさいしで、もう授業はできません。(学校についての詳細はこちら↓)
教科書がないので、授業は先生の経験に頼って行なわれています。その先生方も、正式な免許を持った人たちではなく、地域のボランティアの人たちです。
またこの学校のある地域では、英語が大きな課題の一つになっています。
ウガンダの公用語は英語です。首都を始めとする大きな都市では英語が日常的に使われていますが、奥まった農村地域では民族語による会話がほとんど。英語を使う機会はありません。
でも学校や就職の試験は英語で行われます。民族語しか使わない環境で生活してきた子どもたちにとっては、とても不利な環境と言えます。
学校に通えたとしても「英語ができない→試験を突破できない→進学や就職ができない→貧しい→生まれた地域に住むしかない→英語ができない」という、別の「貧困の連鎖」に飲み込まれてしまうのです。
プロジェクトの成果
こんな環境にあった学校に、図書館と教科書を届けることができました。
教科書を届けたことで、今まで先生方の経験だけに頼って行われていた授業が、教科書に基づいて行われるようになります。
それに、先生がいないときにも、図書館に来れば教科書を使って自分で勉強することができます。
教科書を届けたことで、こうした「よりよい教育」を子どもたちに届けられたと思っています。
また日本から寄付していただいた英語の本や筆記用具なども寄付し、図書館に備えることができました。
英語の本があれば、楽しく物語を読むことを通して、自然に英語力を身につけることができます。また童話などのストーリーから、道徳や心情を学ぶこともできるかもしれません。
筆記用具を備えられたことで、ペンやノートがないから勉強できない、という「貧しさによる学習機会喪失」を防ぐことができます。
加えて日本から届いたきれいなノートやペン、可愛い形の消しゴムなどは、勉強に向かう意欲も高めてくれるでしょう。
もちろん、今後この図書館や教材が活用されなければ意味がありません。むしろここからがスタートともいえます。
今後も定期的にこの学校を訪れ、先生方と協力しながら教科書や図書館の活用、そして英語教育の充実を促進していきたいと思います。
世界を変えるにはあまりに小さなプロジェクト・微力な活動。でも、こうした活動を通して、私なりにSDG4「質の高い教育をみんなに」の達成に寄与できたのではないかと思います。
振り返れば…苦労
このプロジェクトでは、とにかく学校代表者・現地建設業者とのやり取りに苦労しました。現地特有の時間感覚や「約束を守ること」への感覚は、僕には信じられないものでした。
例えば、学校代表者は予算を作る話し合いをしている際、自分で指定した時間に1時間もおくれてきました。それも毎回のように。
作った予算に基づいて「裨益者負担」の金額を払うよう求めたところ「自分はこの学校から利益を得ていない。裨益者ではないから払わない。」と言い出しました。
予算を作る際、何度も「この額でいいか?本当に払えるか?」と確認したにもかかわらず。本人は毎回Yes, fine, OKとと言っていたにもかかわらず。(今思うと、とにかく支援を得たいからできるかどうかに関係なくOKと言っていたのだと思います。)
建設業者はプロジェクトが始まった6月には、7月中にはすべて終わると言っていました。しかし7月末には連絡がつかなくなり、8月下旬に。
僕の一時帰国を挟んで、8月時下旬には「9月中には終わる」と言い、結局終わったのは10月半ば。
さすがに9月下旬には「今週中に完成させてほしい。これ以上遅れるなら工賃は払わない」とまで言ったのですが、約束の日の朝に僕の家まで来て「今日は目が痛いから作業できない。期限を延ばしてくれ」と…
目が痛くても作業できるでしょ?というかそもそも1週間猶予があったのになにしてたの?と、怒りを通り越して呆れてしまいました。
学校代表者といい、建設業者といい、その場しのぎでとにかくできる、やると言うのは、ウガンダスタイルなのかもしれません。他の隊員との間では「やるやる詐欺」と呼んでいます。
多くの学び
苦労とストレスの耐えなかったプロジェクト。それでもプロジェクトサイトに行けば、毎回子ども達や先生方が暖かく迎え入れてくれました。
自分たちの学校がよくなっていくことを、心から喜んでくれている様子が伝わってきて、活動を続けていく原動力になりました。
また保護者や地域の方々からも、感謝の言葉をいただけることが多くありました。
それに大変さも含めて、このプロジェクトを通して多くのことを学ぶことができました。
十分な環境の整っていない学校の存在、「貧困の負の連鎖」の実情、途上国支援の難しさ、子どもたちが喜ぶ顔を見られた時の嬉しさ。
今回のプロジェクトに挑戦せず、配属先の活動だけをしていたら、このような学びは得られなかったと思います。
これらの学びは、帰国後の社会科の授業に、絶対に役立つはず。プロジェクトを通して学べたことを日本の子どもたちに伝え、世界について考えるきっかけにしてもらえたらいいな。
プロジェクトの具体的な経過
今後「小さなハートプロジェクト」に挑戦しようと考えている人も読んでくれているかもしれないので、僕のプロジェクトの経過を書いておきたいと思います。
6月4日:砂・レンガ・セメント購入
6月11日:鉄筋・木材・紙やすり・ポール・屋根材・釘・購入
6月18日:鉄板・床用石材購入
7月4日~6日:レンガ積み上げによる壁作成
7月13日~15日:レンガ積み上げによる壁作成、屋根取り付けのための足場くみ上げ
7月16日:ドア、窓購入
7月18日~22日:屋根、ドア、窓取り付け
7月25日~29日:壁の表面塗り作業
(8月17日〜26日 日本一時帰国)
8月31日~9月1日:カンパラで教科書購入
~9月17日:図書館床の補装
~10月16日:棚作成・搬入
10月18日:完成確認、教科書供与
なお、こちらの記事で図書館建設の詳しい進捗と、僕が感じたプロジェクトを進める際の注意点を写真つきで見ることができます↓
まとめ
苦労も多かった反面、学びも多かったこのプロジェクト。ウガンダの子どもたちへの支援というだけでなく、日本の子どもたちに伝えたいことも、たくさん経験できました。
子どもたちに喜んでもらえたのも、たくさんの経験ができたのも、すべて日本から協力してくださった方々のおかげです。
ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございました!
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