「自衛隊も米軍も、日本にはいらない!」(花岡蔚著) | けんじいのイージー趣味三昧

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 タイトルの本の副題は「恒久平和を実現するための非武装中立論」である。かつて日本社会党が言っていたことで、それだけならこの本を手にすることはなかっただろう。しかし著者は日本勧業銀行に入行しカナダ第一勧銀の副頭取や国内の支店長を経験したビジネスマンである。

 

 

 そういう人物がどうしてこのような本を書いたのか知りたくて読んだ。同時に国防に関し、常に平行する2つの考え方の欠陥というか反論に対する1つの答えが知りたいからでもあった。

 

 徹底した平和主義、つまり非武装論には「外国に攻め込まれたらどうするんだ」と言われた途端に「非武装の国に対してそんなことはあり得ない」としか言えないのでは、どうにも収まりがつかない。だから誰もがある程度の自衛力は必要だなと思う。まして、ロシアがウクライナに攻め込んだ現実を見れば。

 

 

 これに対して「国を守るために防衛力を強化する」と言う自民党の理屈だと、今度はキリがないと思う。原水爆を持っている中国やロシアの軍事力に対し安心できるまで強化するとして、一体どのくらいになったら十分と言えるのかと聞かれても答えがない。

 

 つまり、どちらの答えにも正解がないとたいていの人は思っている。それに対しこの本は、日本国憲法を厳格に解釈して自衛隊も米軍もない日本になることこそが正解であることを、自らの海外勤務体験も踏まえあっちからもこっちからも説いている。

 

 

 まずこの本で1番力を入れているのは「防衛省を廃止して「防災平和省」を新設することである。これまでの自衛官の大半に加え、さらに増員した防災平和省のもとには「災害救助即応隊」(Japan International Rescue Organization、ジャイロ)を置く。主たる任務は大規模自然災害に即応すること。またりくガード、うみガード、そらガードという国境を侵犯された場合に最小限の抵抗を行う組織がある。

 

 防災を自衛隊任務の中心に位置付けるというのは、自然災害大国である日本にいれば多分誰もが考えることで、けんじいもかつてブログに書いた。ある意味、この本に書いてあることとほぼ同じである。しかしこの本は「日本国憲法の条文を文字通り徹底して軍隊を持たない」論を展開している。

 

(けんじいが15年前に書いたブログ記事はこちら)

 

 

 では万一外国から攻められたらどうするか。著者は、(1)一切の軍事力を持たない国、(2)代わりにジャイロが日頃世界中の災害に即応してして援助を行い続ける国、(3)海に囲まれているゆえに戦車が侵入できない国、に突然攻めてくる外国はないとは思うが、それでも攻められたらどうするかについては、降伏するしかないと言う。まあ武器を持たないのだから戦争もできないわけで、口に出す出さないは別として降伏しかない理屈だ。

 

 そんなとも思うが、徹底抗戦すれば双方に多大な損害と死者を出す。確かにウクライナの現状を見ると交戦し続けるのがいいのかどうか悩ましいのは事実だ。なお、著者はウクライナについてあまり言われていないこれまでのロシアあるいはロシア系住民に対するやり方を指摘して、必ずしもロシアの一方的な横暴とは言い切れないことを指摘している。

 

 

 そして著者が非武装でやっていける証拠として力を入れて説明しているのがコスタリカである。けんじいもこのブログで以前書いたが、コスタリカは憲法に常備軍を持たないことを明記し実行している。反米の国かというとそうではなく、観光客の9割がアメリカ人であり、米州機構にも米州相互援助条約にも加盟している。ただし何しろ軍隊がないので軍事協力はできないという条件が認められている。

 

 アメリカから何度も米軍基地を置かせろと要求があったが断固として拒否している。そして世界的にも高い評価を得ている国連平和大学が置かれている。結局のところ著者は我々日本人の覚悟があるかどうかだけだとし、今後もこの活動を続け、護憲勢力の勝利による非武装日本の実現に努力すると宣言している。

 

 

 なお、著者はこの中で、戦後軍備全廃を訴え続けた遠藤三郎元陸軍中将と、「憲法9条にノーベル平和賞を」という運動を始めたノルウェー系アメリカ人チャールズ・オーバビー博士の功績を取り上げているが、長くなるので省略する。

 

 「どの国にも自衛権はあるのだから自衛隊は合憲」と思いたいと思ってきたけんじいにとって、正直にそうなのかと突きつけられた1冊だった。