日銀の異次元緩和政策がようやく終わりを告げた。植田総裁は「インフレ率を上回る賃金の上昇が見えてきたこの状況で異次元緩和はその役割を終えた」とし、マイナス金利の解除、イールドカーブコントロールの撤廃も行った。果断な動きだと思う。今後は緩やかにではあるが金利は上昇するだろう。

 

 マスコミは「金利のある世界が戻った」との言い方をして、暮らしへの影響として住宅ローン金利などについて言及している。しかしけんじいは国民の資産の大きな部分を占める預貯金の金利についての議論がほぼないことに違和感を覚える。

 

 

 確かにメガバンクは早速預金金利の引き上げを発表した。三菱UFJは普通預金金利を0.001%から0.02%へ20倍も引き上げたと言う。1年定期だと0.002%から0.025%である。しかし我々の生活にとってこれが一体どれほどの意味を持つだろうか。

 

 そもそもけんじいは「インフレ目標2%」が掲げられたとき非常に不思議な気がした。失われた30年以前はインフレもあったが預金金利もそれに応じて高かった。その後預金金利がほぼゼロになっても、インフレ率もゼロだったから国民生活には影響がなかった。しかしアベノミクスでインフレ率2%を目標にした時、預金金利をどうする気だったのか。

 

 

 預金金利も2%程度にしてくれなければ、国民は毎年預金が2%ずつ目減りしていくのを指をくわえて見ていなければならないということである。そしてそれは現実に起きている。「インフレとは国家による静かな収奪である」とはよく言われることだが、2%といえども金利ゼロの世界ではまさに収奪である。

 

 

 インフレ率2%を上回る賃金上昇率が実現できたのならそれはそれで結構だが、インフレ率を上回る預金金利も実現できなければ本当の意味の金融の正常化、経済の正常化とはいえないのではないか。