昨日はハーモニカの練習日にもかかわらず、都合をつけてまでして同僚の別のクラスの代講を引き受けた。出勤途上に自分が担任しているクラスのこの日の担当の先生から、「体調不良につき代講できないか」と連絡が来た。同じレベルの2つのクラスだが、いっぺんに2つはできない。
別のクラスは出席率がとても低い。自分のクラスは欠席がいても1人か2人なのに、昨日も半分近い学生が欠席だった。しかし逆にこのクラスの出席学生は活発だった。
ずっと続いている教科書のテーマ「人間はなぜグループ化し身びいきが生じるのか」の続きで、この日は2つの対立するグループの事例を自分で探して、その内容、原因と背景、対立の解決策の3点を発表させる。
けんじいが資本主義国と社会主義国を例示すると、元気のよい中国人男子学生が「あの国は社会主義の仮面を被った資本主義国だ」と言い始めた。「でも誰も土地を持てないのだから資本家はいないじゃないか」と言うと、「いや官僚資本主義です」みたいな発言が続いたので、議論を打ち切って本来の課題に戻した。
この日の出席者9人が8つの対立軸を提出したが、3つのグループに分けるため、学生の希望をとって(1)イスラム教とユダヤ教、(2)労働者と資本家、(3)中国におけるオタクとグルーピーの3つを取り上げることにした。
期待はずれだったのは、男性3人の(1)の発表。十分事前の調査や議論に時間を取らせた後なのに、「この2つの宗教の対立はみんな知っているだろうからその説明は省略する。宗教だから解決策はない」と完全な手抜き。けんじいは「宗教から派生する国家間の対立の問題を取り上げなければ大学生レベルではない」と批判した。
(2)のグループは3人とも女性だった。工場労働者が発生した歴史から背景などを説明した上で、対立の解決策として、①労働者に十分配慮した労働法制の制定、②労使の平等な立場での対話、③労働者に新しいスキルを学ぶ機会を与えること、④企業経営の透明性を高めることの4点を提言した。
もちろんネットを参考にしたのだが、見ていてもよく議論していたし日本語での発表としてもとてもよくまとまっており、(1)の男子学生の手抜きが酷かったせいもあるが、「やっぱり女性は真面目だなあ」と思った。もちろん褒めた。
(3)は男性3人のチーム。けんじいはオタクもグルーピーも同じようなものじゃないかと思っていたが、中国におけるオタクは、日本のアニメやゲームが好きで、ACGNコンテンツが好きな人間のこと、グルーピーは中国国内の人気ある歌手やアイドルを追っかける人たちのことで、この2つのグループは対立関係にあるのだそうだ。踏み込まなかったが、バックには親日的、反日的の影も垣間見える。
グルーピーに言わせると「オタクは子供っぽい。2次元の美少女にしか会えないじゃないか」。一方オタクに言わせると「そんなに熱を上げて、金もたくさん使って、一体どうする気だ」(グルーピーは欧米起源の言葉のようだがここでは立ち入らない)ということになる。それでも一応解決策として「共同のプロジェクトを開催して、相手の中に良いところを見つけることができるのではないか」とまとめた。
ひどいクラスだと噂に聞いていたが、やってみるととても活発。もちろん出席した学生だけの話ではあるが、代講授業でもなかなか面白い経験ができた。