追憶…日本を後に韓国で解体/引退後のロイヤルウイング(くれない丸)/瀬戸内海凱旋・2隻のくれない | 湘南軽便鉄道のブログ

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(在りし日のロイヤルウイング)



【2023.9.6更新】
※2023年8月下旬、ロイヤルウイング解体完了







※直近の本文は本記事の最後に記載







長年にわたり横浜港で活躍を続けてきたレストラン船「ロイヤルウイング」。2023年(令和5年)5月14日(日)のファイナルクルーズをもって引退した。






●数奇な運命、関西汽船くれない丸からロイヤルウイングへ
「ロイヤルウイング」は、もともと、大阪・神戸〜四国高松・松山〜九州別府等を結ぶ関西汽船の瀬戸内海航路客船「くれない丸」(三代目)として、1960年(昭和35年)2月27日に竣工。
当時は姉妹船「むらさき丸」とともに「瀬戸内海の女王」と呼ばれ君臨し、多くの観光客や新婚旅行客を運んだ名船。
1980年(昭和55年)に阪神・別府航路から引退。1981年(昭和56年)まで予備船として使用された後、佐世保重工業に売却されたが、処遇が決まらず約7年間も係船。
しかし、横浜港のレストランシップとして第二の人生が決まり、1988年(昭和63年)レストラン船に改装、1989年(平成元年)から、横浜港最大級のレストラン船「ロイヤルウイング」として運行を開始。

(関西汽船くれない丸当時)

(ロイヤルウイング改造後)

関西汽船「くれない丸」から「ロイヤルウイング」として再デビューしてからは、運行母体は、①スエヒログループの「ニッポンシーライン」⇒②太平洋フェリーの子会社「横浜ベイクルーズ」⇒③芸能プロダクション吉本興業の「㈱ロイヤルウイング」⇒④イベント会社モックの子会社「㈱ロイヤルウイング」⇒⑤サンリオ傘下の「㈱ロイヤルウイング」⇒⑥現在の横浜港港湾荷役業者・藤木企業の子会社「㈱ロイヤルウイング」と幾度も変わり、決して平坦な道のりではなかった

《太平洋フェリー公式ツイッターより》






●竣工から63年日本最古の現役客船
母港を横浜港に変え、「ロイヤルウイング」に名を変えてからも気がつけば30年以上活躍。「くれない丸」時代より長い期間活躍した。
竣工から63年、日本最古の現役客船として長きにわたり活躍してきた「ロイヤルウイング」(元 くれない丸)。
通常、船の寿命は20〜35年ぐらい。63年間活躍した「ロイヤルウイング」(元 くれない丸)は人間に例えると100歳以上。




そんな日本最高齢の船舶だった「ロイヤルウイング」(元 くれない丸)も、先日2023年(令和5年)5月14日(日)、ついに終焉を迎えた。
《終航式》




●母港・横浜港を後に
引退後、しばらく横浜港の大桟橋で最期の時を過ごしていた「ロイヤルウイング」であったが、
2023年(令和5年)6月27日(火)13時00分、曳船「ひろかい」の曳航により、母港・横浜港を後に、二度と戻らない最後の航海へ。
《大さん橋ライブカメラより》
曳船「ひろかい」に曳航され、横浜大桟橋を離れる「ロイヤルウイング」














●氷川丸とも数奇な出会いをしていたロイヤルウイング
横浜港旅立ちの日、横浜港の静態保存船「氷川丸」やレストラン船「マリンルージュ」に見送られたロイヤルウイング。横浜マリンタワーや横浜ベイブリッジもロイヤルウイングに合わせ、青色にライトアップ。
ロイヤルウイングは、当時の関西汽船「くれない丸」としてデビューした年、まだ現役の外洋貨客船だった「氷川丸」と、神戸港のどこかですれ違っている記録がある。
その後、「ロイヤルウイング」に改造され、横浜港にやってきた元「くれない丸」は、既に引退し横浜港で保存展示されていた「氷川丸」と再会。つい先日まで横浜港でお互い顔を合わせてきた。ロイヤルウイングファイナルクルーズ時には、「氷川丸」から惜別の汽笛が贈られた。






●行き先は長崎県の壱岐島、韓国行きまで僅かな間の係船
横浜港を発った「ロイヤルウイング」の行先は、長崎県の離島・壱岐島の郷ノ浦。船歴63年になる日本最古の客船であり、もはや部品調達困難で修繕もままならない老朽船であることから、壱岐島経由で韓国に曳航され廃船になる。





●63年前に誕生した関西汽船くれない丸(現 ロイヤルウイング)、故郷の瀬戸内海へ43年ぶりの凱旋
「ロイヤルウイング」(元 関西汽船くれない丸)は壱岐島への曳航中、瀬戸内海を航行。
本来は四国太平洋側ルートだったが、天候の関係で、前日急遽瀬戸内海ルートに変更になったそう。
63年前に三菱重工業神戸造船所で「くれない丸」として生まれ、1980年(昭和55年)まで大阪別府航路で活躍。瀬戸内海航路を退役後、43年ぶりに故郷・瀬戸内海に凱旋。そして最期の別れの航海。
2023年(令和5年)6月29日(木)23時05分頃明石海峡を通過(曳船「ひろかい」による曳航)。船内の照明を点け、「くれない丸」当時にはまだ無かった明石海峡大橋をくぐり、瀬戸内海を西へ。







●瀬戸内海の女王を導く大役を担うのは曳船「ひろかい」
かつて「瀬戸内海の女王」として君臨した「くれない丸」、横浜港では「皇帝の翼」の意味を持つ「 ロイヤルウイング」。
この名船を導く大役を担ったのは、近海区域を航行できる資格を有する曳船「ひろかい」(1986年(昭和61年建造))。
横浜港から壱岐島まで、一週間近くノンストップで、かつての「瀬戸内海の女王」を曳航した。曳船は、条件にもよるものの一ヶ月近くも燃料無補給で航行することができる。
瀬戸内海を往来する数多くの大型フェリーの先輩である元「くれない丸」。
かつての「瀬戸内海の女王」の先導に立ち、大役を担う曳船「ひろかい」、その勇姿は誇らしい。

《曳船ひろかい︰新興製作所ライブカメラより》






●60数年の時を超え、2隻の「くれない」が最初で最後の出会い
ロイヤルウイング(くれない丸)は、瀬戸内海曳航中、2023年(令和5年)6月30日(金)午前3時30分頃、播磨灘で「くれない」の歴史の襷(たすき)を受け継いだ、「さんふらわあくれない」(別府発大阪行き)とすれ違い。
深夜のため、お互い姿はほぼ見えないものの、かつての関西汽船の大阪別府航路「くれない丸」は、関西汽船の後継会社が運行する現・大阪別府航路「さんふらわあくれない」と反航。60数年の時を超えた新旧「くれない」の奇跡の出会いが実現。

《フェリーさんふらわあ公式ツイッターより》




右側が西へ向かう「ロイヤルウイング」(ひろかいが曳航)、左側が東(大阪)へ向かう「さんふらわあくれない」。この後、両船はすれ違い。

約半世紀の時代を超えて、新旧「くれない」が瀬戸内海で出会った奇跡






●くれない丸時代に通い慣れた瀬戸内海を曳航
「ロイヤルウイング」(元 くれない丸)は、曳船「ひろかい」の曳航により、瀬戸内海をゆっくり西航。2023年(令和5年)6月30日(金)午前9時05分頃、備讃瀬戸を通過。


そして「ロイヤルウイング」は、燧灘から因島大橋・三原瀬戸ルートへ。潮流厳しく渦巻く来島海峡は通らないルート。

島々の間を抜けて西へ曳航。






●関門海峡通過(ライブカメラ)
阪神と九州を結ぶ数多くの後輩フェリーたちとすれ違ったロイヤルウイング(くれない丸)は、2023年(令和5年)7月1日(土)17時頃、海流が西流に変わるのに合わせ関門海峡に入り、18時前後に関門海峡大橋を通過。



《彦島の(有)新興製作所のライブカメラ配信より》
ロイヤルウイング曳航を追跡配信

































関門海峡を抜けると、玄界灘に出て壱岐島(長崎県)へ向かう。






●壱岐島郷ノ浦到着
2023年(令和5年)7月2日(日)午前10時、曳船「ひろかい」に曳航された「ロイヤルウイング」(元 くれない丸)は、壱岐島郷ノ浦(長崎県)に到着。郷ノ浦港の「青い海と緑の広場」の岸壁に係留。

《曳船ひろかい航海士Twitterより︰許諾》






【ロイヤルウイングが眠る壱岐島に、迎えの韓国の曳船が到着】
壱岐島(長崎県)に留め置かれている「ロイヤルウイング」。
2023年(令和5年)7月7日(金)、韓国・釜山から曳船「ANETA」が対馬・厳原(長崎県)にやってきた。
対馬の隣の島・壱岐島(長崎県)に留置されている「ロイヤルウイング」をいよいよ韓国まで曳航するための迎えの曳船である。

対馬の厳原港から壱岐島に向かう韓国の曳船

ロイヤルウイングを曳航した韓国の曳船「ANETA」


2023年(令和5年)7月8日(土)、韓国からの迎えの曳船「ANETA」が、引退したロイヤルウイングが眠る壱岐島・郷ノ浦港に到着







【終焉の地・韓国へ旅立ち】
2023年(令和5年)7月8日(土)17時、ロイヤルウイング(元・くれない丸)は、韓国の曳船「ANETA」に曳航され、雨の中、壱岐島郷ノ浦港(長崎県)を後に…。
終焉を迎える地である韓国へ向け旅立って行った。








【ロイヤルウイング、契の友である「飛鳥II」と対馬沖で今生の別れ】
韓国・釜山に向け曳航中の「ロイヤルウイング」は、2023年(令和5年)7月8日(土)深夜25時頃、大雨の対馬黒島沖(長崎県)で、豪華クルーズ客船「飛鳥II」と、最後のすれ違い。
お互い横浜港大桟橋を母港とし、飛鳥IIが母港に戻る度に顔を合わせてきた「ロイヤルウイング」と「飛鳥II」。
母なる港・横浜にもう二度と帰ることのない「ロイヤルウイング」。
「飛鳥II」は、あと数時間で日本の海を離れるロイヤルウイングのすぐ近くを反航し、最後の別れ。

対馬沖で反航する「飛鳥II」と「ロイヤルウイング」。ロイヤルウイングは曳船「ANETA」に曳航されているため、「Aneta」と表記。



横浜港大桟橋に停泊中のクルーズ船「飛鳥II」と「ロイヤルウイング」《ロイヤルウイング公式SNSより》







【ロイヤルウイング、韓国・釜山港到着】
2023年(令和5年)7月9日(日)午前、「ロイヤルウイング」(元・関西汽船くれない丸)は、釜山・多大浦港に到着。





2023.7.15 韓国・釜山多大浦港のロイヤルウイング(韓国・Vladimir Tonic / lappino(ウラジミール・トニック / ラッピーノ)氏掲載許諾)








●韓国釜山から、終焉の地・木浦港へ曳航
韓国・釜山の多大浦港に留置中だった「ロイヤルウイング」は、2023年(令和5年)7月15日(土)、曳船「HA YUN T 1 HO」により、韓国・木浦港に向け曳航開始。韓国・木浦市は、「ロイヤルウイング」の前身である関西汽船「くれない丸」が通っていた九州大分県別府市の姉妹都市。
「ロイヤルウイング」は、2023年(令和5年)7月17日(月)韓国・木浦北港のスクラップヤードに到着。
ロイヤルウイングは、ここで解体される。
(曳船 HA YUN T 1 HO)





2023.7.17韓国・木浦港のロイヤルウイング(韓国・Vladimir Tonic / lappino(ウラジミール・トニック / ラッピーノ)氏掲載許諾)








●ロイヤルウイングの最後
2023年(令和5年)7月下旬、韓国・木浦北港のスクラップヤードにて解体に着手
韓国・木浦北港(韓国・Vladimir Tonic / lappino(ウラジミール・トニック / ラッピーノ)氏掲載許諾)





2023.8.9
割られた窓ガラス。船首には韓国旗




2023.8.15
解体が進むロイヤルウイング

煙突など上部構築物や操舵室のあったAデッキはすでに無い。



2023.8.21
解体が急ピッチで進む。船体の上半分(A〜Cデッキ)はすでに無くなっている。


2023.8.22


2023.8.24
2023年(令和5年)8月下旬、ロイヤルウイング解体完了


2023.9.6
木浦北港のスクラップヤードに残された船体

ロイヤルウイング(元・関西汽船くれない丸)の解体が完了し、瀬戸内の女王であり、横浜港のシンボルであった本船は、名実共に63年の歴史に幕を閉じた。
2023年(令和5年)8月下旬、ロイヤルウイング解体完了






終焉・ロイヤルウイング(元 くれない丸)
ファイナルクルーズ後、氷川丸に見守られながら、母港・横浜港を旅立った「ロイヤルウイング(元 関西汽船くれない丸)」。
かつて大阪別府航路で「瀬戸内海の女王」くれない丸として君臨した時代を懐かしむように40数年ぶりの瀬戸内海凱旋、生まれ育った故郷に別れを告げた。
「くれない」の襷を受け継ぎ、63年後の今年デビューしたばかりの大阪別府航路「さんふらわあくれない」と、深夜の瀬戸内海で時空を超えた偶然の奇跡の出会い。
壱岐島から韓国・釜山に向かう深夜の対馬沖では、同じ横浜大桟橋を母港とするクルーズ客船「飛鳥II」と最後の出会い。
ロイヤルウイング(元 くれない丸)は、韓国・木浦の終焉の地に到着。廃船・解体により、ついに長い生涯を終えた。
これからは思い出の中に生き続けるだろう。


※画像はオリジナルのほか、ロイヤルウイング公式HP・公式SNS、フェリーさんふらわあ公式HP・公式SNS、太平洋フェリー公式SNS、海上保安庁公式HP、艦船水上交通位置情報マリントラフィックHP、韓国・Vladimir Tonic / lappino氏、Wikipedia等より引用



★動画(2023.5.14 ファイナルクルーズ)↓↓


※2023.5.14ロイヤルウイングファイナルクルーズ記事は後日公開