世の中には、物事を自分に都合よく解釈して、自己の主張があたかも正しいものであるかの如く、多くの人に支持されているものであるかの如く、実しやかに喧伝する人は珍しくないが、それなりの発行部数を自称する新聞社でも、このような例があるとは、いささか驚きである。
産経新聞は、「夫婦別姓制度」を支持する「死刑廃止論者」の千葉景子法務大臣の存在を快く思っていないらしく、千葉景子前議員が落選したことを取り上げて、「有権者はこうした千葉氏の約10カ月の法相としての仕事ぶりも含め、『落選』という審判を下した」と断じ、「千葉氏の留任はこの民意を無視したもの」と主張している。
しかし、落選した千葉景子さんの得票は、696,739票もの多きに達している。この数は、福井、鳥取、島根、徳島、高知各県の有権者数を上回り、佐賀県の全有権者数に、ほぼ匹敵する。
これ程多くの人々が千葉景子さんを支持し、千葉さんに再度、参議院議員を務めて欲しい、法務大臣を続けて欲しいと願っていたにもかかわらず、千葉さんが落選したのは、1票の価値、すなわち人間の価値に著しい格差が存在する選挙制度そのものがおかしいのである。「民意を無視」しているのは、「千葉氏の留任」ではなく、70万近い人々の民意を無視する選挙制度そのものである。
ちなみに、比例区で出馬して落選した国民新党の長谷川憲正総務政務官の個人得票は406,587票であった。国民新党は、比例区で1議席を獲得した新党改革(1,172,395票、得票率2.01%)に次いで、1,000,036票(得票率1.71%)を獲得したが、今回、議席を得るには至らなかった。
ただし、もしも、比例区の定数が現行の48というような中途半端な数ではなく、50丁度であれば、他の政党の得票数からみて、国民新党が1議席を獲得し、長谷川政務官は、引き続き参議院議員を務めていた筈である。(この場合、公明党も1議席増えて、7議席となる。)
議員の当落は、民意の反映と言うよりも、選挙制度の反映と言う側面が小さくない。単純に、当選したから民意を得たとか、落選したから民意を得ていないとかいうような簡単なものではない。
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【主張】落選法相の留任 民意を無視する首相要請
【2010.7.16 産経新聞】
参院選で落選した千葉景子法相は菅直人首相に辞意を伝えたが、首相は「行政の継続性という観点から、続けていただくことが望ましい」とし、続投を求めた。理解に苦しむ判断である。
千葉氏は昨年9月の法相就任当初から、家族の絆(きずな)を壊す恐れがある夫婦別姓制の導入に強い意欲を示した。今年2月の法務省政策会議では、男女が婚姻時に同姓か別姓かを選ぶ「選択的夫婦別姓制度」を柱とする民法改正案の概要が示された。
先月、千葉氏は内閣府に政府から独立した人権委員会を設置する人権侵害救済機関設置法案の中間報告を発表している。人権侵害救済機関には政府や特定団体による恣意(しい)的な言論・表現統制の危険性が指摘されている。
いずれも閣議決定には至っていないが、千葉氏が早期実現を目指していた法案である。
その一方で、千葉氏は法相として一度も死刑執行の署名をしていない。弁護士出身の千葉氏は死刑廃止論者としても知られる。
有権者はこうした千葉氏の約10カ月の法相としての仕事ぶりも含め、「落選」という審判を下したのである。千葉氏の留任はこの民意を無視したものといえる。
菅首相は「大臣は議員である人が多いが、議員でなくても適任者であればなれる。千葉氏は法曹出身でもあり適任者だ」とも述べている。たとえ法曹出身者であっても、死刑執行の署名など法相としてなすべきことをしない人物が適任者とは、とてもいえない。
法相留任の背景には、千葉氏が辞任すれば、民主党内から内閣改造要求や党執行部の責任を問う声が激しくなりかねないことへの懸念もあったといわれる。こうした党内事情や「政局的打算」を優先させるのは筋違いである。
首相が求めた留任期間は9月の党代表選までとされるが、落選した閣僚が1カ月以上、内閣にとどまった例は過去にない。まもなく各省庁は来年度予算への概算要求の大事な時期に入る。適格性を備えた新しい法相がこれにあたるべきだ。
参院選で、郵政民営化の逆行路線を主導した国民新党は議席ゼロに終わったが、落選した長谷川憲正総務政務官も留任した。この続投も理解を得られにくい。
菅政権は千葉氏落選の結果を真摯(しんし)に受け止め、これらの政策をゼロから再検討すべきだ。
全国各地の自治体(主に都道府県)が医師確保を目的として、医学生向けの資金援助(奨学金)制度を設けている。
制度の内容は、自治体によって異なるが、概ね月額20万円を6年間貸与し、9年間、自治体が指定した医療機関等に勤務すれば、全額返済を免除するというような内容が多い。
つまり、最高で1400万円余りの資金を医学生に提供しようという制度である。
ところで、この奨学金制度には、大きな落とし穴がある。
通常の奨学金は、在学中はもちろん、卒業後、たとえ返済を免除されたとしても、税金を取られることはない。学費に相当する金額は貸与ではなくとも、所得税は課税されないとされているからである。(ただし、個人から年額110万円を超える学資金の贈与を受けた場合には、贈与税が課税される。)この場合の学費とは、授業料だけでなく、入学金その他、学校へ納めるものがすべて含まれる。
しかし、月額20万円、年間240万円となると、もはや学費とは言えない。生活費であり、給与である。
民間企業で、社員を国内外の大学・大学院へ留学させたりすることがあるが、このような場合、会社が社員に年間240万円も支払っていれば、所得税が課されてしまう。奨学金だと言い張っても、税務署は、まず認めてくれない。ただし、この程度の給与なら、各種控除もあるし、税率も低いので、納める税金は大した額にはならない。
年間240万もの奨学金を受け取った医学生についても、本来であれば、所得税や住民税が課税される筈であるし、親の扶養家族から外れる筈であるが、「貸与」という形式を取っているので、在学中は「所得」ではなく、「借金」とみなされ、課税されない。
しかし、医学部を卒業後、目出度く、医師となり、9年間の年季奉公を終えたところで、返済が免除となると、この時点で、1400万円の「借金」が1400万円の「収入」に代わり、一挙に課税対象となる。
実際には1400万円の奨学金のうち、授業料として大学に納めた金額ぐらいは、控除されるから、私立大学なら、収支トントンかも知れないが、授業料の安い国立大学であれば、それでも課税所得は1000万円近くなる。
さらに、卒後9年目の臨床医ともなれば、年収1000万円近いのが普通である。ここに1000万円の所得が加わって、所得税が課されるとなると、住民税や社会保険料と合わせて、納めるべき税金等は1000万円近くになるだろう。
これでは、たとえ返済を免除されたとしても、税金として国や自治体に支払うことになるだけで、医学生にとって何のメリットもない。
奨学金を受けない医学生や、卒業後、きっちり返済する医学生が多いのも当然である。
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首都圏の病院でも医師不足深刻 自治体、“卵”から確保
【2010/7/14 日本経済新聞】
首都圏の自治体が医師確保策を拡充している。埼玉県や千葉県は将来地元で働くことを条件に、医学生向けの資金援助制度を設けた。神奈川県は県内大学と医師を派遣してもらう協定を結ぶ。
医師不足は地方の問題のように思われがちだが、人口当たりの医師数は埼玉県などの方が少ない。特に産科、小児科は不足が深刻だ。医療ニーズが高まるなか、対応を急ぐ。
埼玉県は今年度から、県内の医学部の学生や臨床研修医に奨学金を貸与する事業を始めた。学生には月額20万円、研修医には10万円を1年間貸す。修了後、県内の医療機関に一定期間勤めれば、返済の必要はない。
埼玉県は人口10万人当たりの医師数が139人と全国で最も少ない。防衛医大を含めても医大が2校しかないうえ、卒業後は距離的に近い東京の病院に流れるケースが多いといわれる。援助でつなぎ留めを狙う。
人口当たり医師数が全国で3番目に少ない千葉県も学費助成を拡充する。医学部生だけでなく大学院生も対象にした。選考した15~20人に月5万円(私立は20万円)を支援。県外の大学院に通っていても、県内に住むか、県内出身なら助成を受けられる。県が指定する病院で一定期間働けば返済しなくてもよい。
神奈川県は産婦人科医を目指す研修医を雇う病院に、1人当たり月額約1万6000円を補助する制度を設けた。また、横浜市立大、聖マリアンナ医科大、北里大、東海大と今月末にも協定を締結。県が1大学当たり5000万円を寄付し、周産期医療の医師を県内の病院に派遣してもらうようにする。
東京都内は人口当たり医師数が全国で3番目に多いが、都立病院では産科、小児科などは不足しているといわれる。このため東京都は都立病院で働く専門医を養成する制度「東京医師アカデミー」を始めた。現在は約250人の医師が在籍。都は将来、都立病院の幹部として地域医療の中核を担ってもらおうと期待している。
制度の内容は、自治体によって異なるが、概ね月額20万円を6年間貸与し、9年間、自治体が指定した医療機関等に勤務すれば、全額返済を免除するというような内容が多い。
つまり、最高で1400万円余りの資金を医学生に提供しようという制度である。
ところで、この奨学金制度には、大きな落とし穴がある。
通常の奨学金は、在学中はもちろん、卒業後、たとえ返済を免除されたとしても、税金を取られることはない。学費に相当する金額は貸与ではなくとも、所得税は課税されないとされているからである。(ただし、個人から年額110万円を超える学資金の贈与を受けた場合には、贈与税が課税される。)この場合の学費とは、授業料だけでなく、入学金その他、学校へ納めるものがすべて含まれる。
しかし、月額20万円、年間240万円となると、もはや学費とは言えない。生活費であり、給与である。
民間企業で、社員を国内外の大学・大学院へ留学させたりすることがあるが、このような場合、会社が社員に年間240万円も支払っていれば、所得税が課されてしまう。奨学金だと言い張っても、税務署は、まず認めてくれない。ただし、この程度の給与なら、各種控除もあるし、税率も低いので、納める税金は大した額にはならない。
年間240万もの奨学金を受け取った医学生についても、本来であれば、所得税や住民税が課税される筈であるし、親の扶養家族から外れる筈であるが、「貸与」という形式を取っているので、在学中は「所得」ではなく、「借金」とみなされ、課税されない。
しかし、医学部を卒業後、目出度く、医師となり、9年間の年季奉公を終えたところで、返済が免除となると、この時点で、1400万円の「借金」が1400万円の「収入」に代わり、一挙に課税対象となる。
実際には1400万円の奨学金のうち、授業料として大学に納めた金額ぐらいは、控除されるから、私立大学なら、収支トントンかも知れないが、授業料の安い国立大学であれば、それでも課税所得は1000万円近くなる。
さらに、卒後9年目の臨床医ともなれば、年収1000万円近いのが普通である。ここに1000万円の所得が加わって、所得税が課されるとなると、住民税や社会保険料と合わせて、納めるべき税金等は1000万円近くになるだろう。
これでは、たとえ返済を免除されたとしても、税金として国や自治体に支払うことになるだけで、医学生にとって何のメリットもない。
奨学金を受けない医学生や、卒業後、きっちり返済する医学生が多いのも当然である。
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首都圏の病院でも医師不足深刻 自治体、“卵”から確保
【2010/7/14 日本経済新聞】
首都圏の自治体が医師確保策を拡充している。埼玉県や千葉県は将来地元で働くことを条件に、医学生向けの資金援助制度を設けた。神奈川県は県内大学と医師を派遣してもらう協定を結ぶ。
医師不足は地方の問題のように思われがちだが、人口当たりの医師数は埼玉県などの方が少ない。特に産科、小児科は不足が深刻だ。医療ニーズが高まるなか、対応を急ぐ。
埼玉県は今年度から、県内の医学部の学生や臨床研修医に奨学金を貸与する事業を始めた。学生には月額20万円、研修医には10万円を1年間貸す。修了後、県内の医療機関に一定期間勤めれば、返済の必要はない。
埼玉県は人口10万人当たりの医師数が139人と全国で最も少ない。防衛医大を含めても医大が2校しかないうえ、卒業後は距離的に近い東京の病院に流れるケースが多いといわれる。援助でつなぎ留めを狙う。
人口当たり医師数が全国で3番目に少ない千葉県も学費助成を拡充する。医学部生だけでなく大学院生も対象にした。選考した15~20人に月5万円(私立は20万円)を支援。県外の大学院に通っていても、県内に住むか、県内出身なら助成を受けられる。県が指定する病院で一定期間働けば返済しなくてもよい。
神奈川県は産婦人科医を目指す研修医を雇う病院に、1人当たり月額約1万6000円を補助する制度を設けた。また、横浜市立大、聖マリアンナ医科大、北里大、東海大と今月末にも協定を締結。県が1大学当たり5000万円を寄付し、周産期医療の医師を県内の病院に派遣してもらうようにする。
東京都内は人口当たり医師数が全国で3番目に多いが、都立病院では産科、小児科などは不足しているといわれる。このため東京都は都立病院で働く専門医を養成する制度「東京医師アカデミー」を始めた。現在は約250人の医師が在籍。都は将来、都立病院の幹部として地域医療の中核を担ってもらおうと期待している。
国政選挙が行われるたびに、1票の格差が問題となる。今回の参議院選挙でも4倍を超える格差が放置されたままで、選挙が行われた。
民主主義の根幹をなす選挙・投票は、一人一票が原則であり、議会(国会)に代表(議員)を送って行われる間接民主主義においては、議員を選ぶ権利は国民一人一人、どこに住んでいても平等であるべきである。
しかし、今の日本では、本来、平等であるべき、この権利において、大きな格差が存在する。
従来、地方と都市との間での一票の格差が問題視されることが多かったが、その度に投票率の問題(都市部は棄権率が高い)からやむを得ないとか、地方振興のために格差(地方優遇)はやむを得ないとか言ったことが議論されてきた。
しかし、最近の国政選挙では、地方と地方との格差、近隣の各県との格差が顕在化しつつある。
例えば、参議院選挙において、1票の価値が最も重い鳥取県や、その次に重い島根県、そして、1人区の中では最も1票の価値が軽い岡山県を含む中四国9県で、今回の参議院選挙における得票数を見てみると、以下のとおりである。
中四国9県(広島のみ2人区、他は1人区)の当選・次点の得票数
[県名の後の()内は有権者数]
鳥取(487,567) 当選 158,445 次点 132,720
島根(596,132) 当選 222,448 次点 151,351
岡山(1,582,018) 当選 474,280 次点 325,143
広島(2,332,870) 当選① 547,845 当選② 295,276 次点 261,210
山口(1,213,416) 当選 421,055 次点 256,562
徳島(661,032) 当選 142,763 次点 136,934
香川(832,500) 当選 236,134 次点 189,639
愛媛(1,202,024) 当選 351,624 次点 252,301
高知(643,207) 当選 137,306 次点 123,898
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岡山、広島、山口、愛媛の各県では、25万人以上の県民が投票した候補者が議員として、国会へ行くことができなかったのに、高知、徳島、鳥取の各県では、13万~15万人の県民から支持を得た候補者が議員として国会へ行くこととなる。
この約2倍の格差は果たして合理的なものであろうか。岡山、広島、山口、愛媛の各県と、高知、徳島、鳥取の各県との間で、一体、何が違うというのであろうか。
有権者数から見れば、鳥取と島根、高知と徳島は、それぞれ2県で1区でもおかしくないのに、なぜ、これらの県は各県1人の議員を国会へ送れるのであろうか。
格差社会とか、格差是正とか言われて久しいが、国政選挙における1票の格差について、是正が行われないのは国会の怠慢としか言いようがない。
議員定数の削減よりも前に、やるべきことがあるのではないだろうか。
民主主義の根幹をなす選挙・投票は、一人一票が原則であり、議会(国会)に代表(議員)を送って行われる間接民主主義においては、議員を選ぶ権利は国民一人一人、どこに住んでいても平等であるべきである。
しかし、今の日本では、本来、平等であるべき、この権利において、大きな格差が存在する。
従来、地方と都市との間での一票の格差が問題視されることが多かったが、その度に投票率の問題(都市部は棄権率が高い)からやむを得ないとか、地方振興のために格差(地方優遇)はやむを得ないとか言ったことが議論されてきた。
しかし、最近の国政選挙では、地方と地方との格差、近隣の各県との格差が顕在化しつつある。
例えば、参議院選挙において、1票の価値が最も重い鳥取県や、その次に重い島根県、そして、1人区の中では最も1票の価値が軽い岡山県を含む中四国9県で、今回の参議院選挙における得票数を見てみると、以下のとおりである。
中四国9県(広島のみ2人区、他は1人区)の当選・次点の得票数
[県名の後の()内は有権者数]
鳥取(487,567) 当選 158,445 次点 132,720
島根(596,132) 当選 222,448 次点 151,351
岡山(1,582,018) 当選 474,280 次点 325,143
広島(2,332,870) 当選① 547,845 当選② 295,276 次点 261,210
山口(1,213,416) 当選 421,055 次点 256,562
徳島(661,032) 当選 142,763 次点 136,934
香川(832,500) 当選 236,134 次点 189,639
愛媛(1,202,024) 当選 351,624 次点 252,301
高知(643,207) 当選 137,306 次点 123,898
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岡山、広島、山口、愛媛の各県では、25万人以上の県民が投票した候補者が議員として、国会へ行くことができなかったのに、高知、徳島、鳥取の各県では、13万~15万人の県民から支持を得た候補者が議員として国会へ行くこととなる。
この約2倍の格差は果たして合理的なものであろうか。岡山、広島、山口、愛媛の各県と、高知、徳島、鳥取の各県との間で、一体、何が違うというのであろうか。
有権者数から見れば、鳥取と島根、高知と徳島は、それぞれ2県で1区でもおかしくないのに、なぜ、これらの県は各県1人の議員を国会へ送れるのであろうか。
格差社会とか、格差是正とか言われて久しいが、国政選挙における1票の格差について、是正が行われないのは国会の怠慢としか言いようがない。
議員定数の削減よりも前に、やるべきことがあるのではないだろうか。