臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言 -23ページ目

臨遥亭の跡で働く医系技官の独り言

心に移り行くよしなしごとをそこはかとなく書き連ねています。

 人口2000人弱の山梨県道志村で、小児に対するインフルエンザ桿菌b型(Hib)ワクチン、おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン、水痘ワクチンの3種類の接種費用を全額公費で負担することにしたという。
 新聞などでは「無料化」と報じられているが、こういう表現は適切ではない。子どもを持つ数十人の親だけでなく、2000人の村民全員で、20人弱の子どもたちの接種費用を分かち合いましょうということである。薬屋がワクチンをタダでくれる訳でもなければ、医者がタダで接種してくれる訳でもない。

 前回(平成17年)の国勢調査によると、道志村の総人口は2051人、その内、15歳未満は252人となっている。平均とすると毎年17人の小児がワクチン接種を受けるという計算になる。
 この子どもたちに、3種類のワクチンを接種するために要する費用、総額約200万円(一人当たり約12万円)を道志村が全額負担するというのが今回の報道内容である。

 ワクチン接種の公費負担そのものに反対するつもりはないが、税金の使途として、いかがなものであろうか。
 僅か17人の道志村の小児に接種するだけで、200万円の費用を要するということは、全国の小児110万人を対象にした場合、毎年、1300億円の経費を要するということになる。この金額を大きいと考えるか、小さいと考えるかは、その人次第であろう。

 公務員改革と称して、公務員の削減を叫ぶ人もいるが、例えば、全国100カ所余りの検疫所(支所・出張所)で働く検疫官ら800人を全員解雇しても、削減できるのは、年間約50億円に過ぎない。
 1300億円の予算を人件費の削減だけで捻出しようとすると、約2万人の公務員を解雇する必要があり、現実には困難な数字である。
 従来の定員削減の多くは、自前の収入を持つ独立行政法人等へ職員を移管するという形で行われている。確かに見掛け上は公務員が減って、国の人件費支出は減るが、その分、国庫収入が減り、独立行政法人への補助金が増えるという計算になっており、差し引き、それほどの削減効果は生じない。
 2万人の公務員を解雇すれば、その人たちが行っていた仕事を誰かが肩代わりするか、その仕事そのものを廃止しなければならないのだが、マスコミ等が言うほどに、無駄な仕事はないものである。

 ところで、道志村で、ワクチン接種の公費負担が可能だったのは、人口に比して、村の財政規模が大きいからである。道志村の年間予算は約20億円、村民一人当たりにすると、約100万円となる。ただし、このうち、村民が直接納めている村民税は2億1718万円、村民一人当たり約11万円に過ぎない。

 一方、山梨県の県庁所在地、甲府市の場合、人口約20万人に対して、年間予算は約600億円しかなく、市民一人当たりにすると約30万円、道志村の3割に過ぎない。ただし、市民が直接納めている市民税は276億2135万円、市民一人当たり約14万円と、道志村より3割弱も多い。
 また、甲府市の15歳未満人口は道志村の約100倍、25,495人(平成17年国勢調査)である。
 甲府市が道志村と同様に、インフルエンザ桿菌b型(Hib)ワクチン、おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン、水痘ワクチンの3種類の接種費用を全額公費で負担しようとすると、約2億円が必要となる。
 鹿児島県の阿久根市のように、市議会を廃止して、議員への歳費(給与)支払いを止めれば、十分に捻出可能な金額ではあるが、果たして、それで良いのであろうか。


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任意の予防接種 道志村が無料化 県内初、ヒブワクチンなど3種
【2010年07月23日 山梨日日新聞】

 道志村は本年度から、任意の予防接種が推奨されている3種のワクチンについて、接種費用の全額助成を始めた。親の希望で受ける任意接種を市町村独自で無料化するのは県内では初めて。村は昨年度から中学3年までの医療費を無料にしており、乳幼児期にかかりやすい感染症の予防接種費用も全額補助することで「予防から治療まで子どもの医療費はほぼ無料化できる」としている。
 村住民健康課によると、独自に無料化したのは、細菌性髄膜炎の原因となるインフルエンザ菌b型(Hib)を予防するヒブワクチンのほか、おたふくかぜ、水痘の予防接種。ヒブワクチンは1~4回、おたふくかぜと水痘は1回の接種が必要で、いずれも1回当たり7千~8千円の自己負担が必要だった。医療機関で接種した後、村に母子手帳と領収書を提示すれば、かかった費用を払い戻す。
 村はこれまでも、努力義務があるポリオや麻疹(ましん)・風疹(ふうしん)混合、日本脳炎、結核、3種混合(ジフテリア、破傷風、百日ぜき)の五つのワクチン接種費用を全額助成してきた。今回の補助対象の拡大で8種類のワクチン接種が無料化された。村は新たに発生する助成額を約200万円とみていて、既に無料化しているワクチン分を含め約570万円を本年度当初予算に計上した。このほか、県が一部補助する子宮頸けいがん予防ワクチンについても全額助成している。
 国が任意での接種を推奨するワクチン9種のうち、肺炎球菌は確保が難しいことから助成を見送ったが、同課は「乳幼児期にかかりやすいワクチンはほぼ無料化できた」としている。少子高齢化が進む中、若い世代の医療費負担を軽減することで「子育てしやすい村」をアピールする狙いがあるほか、「重症化を防ぐことで医療費の抑制にもつながる」という。
 県健康増進課は「任意の予防接種費用を無料化している自治体は県内では聞いたことがない。全国的にも珍しい取り組み」としている。

 第一生命経済研究所の試算によれば、年収300万円で、3歳未満の子ども一人だけの世帯では、子ども手当の支給と、それに伴う児童手当と年少者扶養控除の廃止により、年間16,000円の負担増と言うことになっている。
 これは、3歳未満の子ども一人だけの世帯では、既に月額10,000円の児童手当を受け取っていたので、子ども手当が13,000円に据え置かれた場合には、実質的に月額3,000円、年間36,000円の増にしかならないためである。

 一方、年少者の扶養控除(所得税38万円、住民税33万円)が廃止されるため、所得税(5%、19,000円)と住民税(10%、33,000円)、合わせて年間52,000円の負担増となる。
 差引、年間16,000円の負担増と言う試算である。
 以下、所得が増えて、所得税の税率が10%、20%、23%と高くなるに従って、負担増の金額は大きくなるが、世帯主の年収が凡そ800万円(税込)を超えるサラリーマン世帯は、所得制限により、従来、児童手当を受け取っていなかったので、扶養控除を廃止されて、子ども手当が月額13,000円に据え置かれても差引き負担増とはならない。

 しかし、これは最初から分かっていたことであり、だからこそ、子ども手当の支給額を当初、月額26,000円としていたのである。
 また、半額支給の2010年については、年少者扶養控除は廃止されず、満額支給予定の2011年から、廃止されることとなっている。

 つまり、第一生命経済研究所の試算は、子ども手当の支給額が当初予定の半額、月額13,000円に据え置かれたままで、年少者扶養控除だけが廃止された場合には、どうなるかという仮定の計算であり、現在、3歳未満の子どもを一人だけ持つ世帯で、実際に負担増になっているという訳ではない。

 とは言え、子ども手当の満額(26,000円)支給には、2兆円を超える財源の問題をはじめ課題も多い。
 個人的には、子ども手当は将来に対する投資なのだから、公共事業を建設国債で賄うのと同様に、子ども国債を発行して賄えば良いとは思うのだが、国債の発行には抵抗を示す人も少なくない。
 そこで、支給額を20,000円程度に抑えようという議論も始まっている。計算上は、月額18,000円の子ども手当を支給すれば、年少者扶養控除を廃止しても、負担増となる世帯はない筈である。

 ところで、配偶者控除の廃止は、子ども手当とは全く別の議論である。
 配偶者控除の廃止は、共働き世帯が増えている事実と、将来の人口減少を見据えて、結婚・出産後も女性の労働力を活用しようという政策的な意図、そして何よりも、日本の国際的な競争力を維持する観点から、賃金を国際水準に照らして抑制する必要ために行われるものである。

 そもそも、配偶者控除は、夫婦の一方のみが働き、二人分の生活費を一人で稼ぐという状態を想定した制度である。
 しかし、中国などの途上国に限らず、欧米先進国でも夫婦共稼ぎが一般的になっている。一人の労働者に二人分の賃金を払う余裕は、もはや、日本の企業にも無くなりつつある。現実の問題として、年功序列の賃金体系が崩れ、労働者本人の能力による人事評価・給与体系が導入されれば、同じ能力の労働者に対して、配偶者の有無や扶養親族の有無で、賃金に差異を設けることは難しくなる。

 子どもの養育費に、費用が掛かるのであれば、その負担は、社会全体が負うべきなのであろう。
 そういう意味では、子どものいる世帯、高齢者や障害者のいる世帯に対して、賃金とは別に、現金給付を行うという考えも十分に成り立つ。


「再考 子ども手当の影響~子育て世帯を意識した給付付き税額控除導入が望まれる~」
【2010年7月2日 第一生命経済研究所マクロ経済分析レポート】
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/naga/pdf/n_1007a.pdf


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負担増世帯が続出=子ども手当、半額据え置きで-第一生命
【2010/07/02 時事通信】

 第一生命経済研究所は2日、子ども手当の支給額が現行の月額1万3000円に据え置かれた場合の家計(専業主婦世帯)への影響に関する試算をまとめた。それによると、2013年度までに所得税と住民税の年少扶養控除(16歳未満)が廃止されるため、3歳未満の子ども1人の場合では、年収700万円以下の世帯すべてで負担増となる。
 さらに、衆院選マニフェスト(政権公約)で打ち出した配偶者控除の廃止が実施に移されれば、年収300万円、500万円、700万円、1000万円世帯の大半が減収となる計算。財源不足を理由に満額支給(月額2万6000円)を断念した公約修正の問題点が浮き彫りになった。




 子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を予防するためのワクチンについて、公費助成を求める声が高まっている。
 先日の参議院選挙でも、何人かの候補者がHPVワクチンに対する公費助成を公約に掲げていた。

 公費で助成すると言うことは、つまり、ワクチン接種費用を、ワクチンを受ける人だけでなく、国民全員で幅広く税金として負担するということである。
 税金の無駄遣い削減が叫ばれている昨今、HPVワクチンの公費助成が税金の使途として妥当なものかどうか、冷静に考えるべきではなかろうか。

 まず、HPVは男性にも感染し、尖圭コンジローマなどを発症するが、今のところ、男性の陰茎がんなどとHPVとの関連は明らかになっていないので、ワクチン接種の対象を女児(10歳~14歳)に限ったとしても、対象者は、毎年約55万人となる。なお、もしも、男児も対象とすれば、この2倍、約110万人が接種対象となる。
 HPVワクチンの接種費用は、1人につき3回の接種で、合計約5万円なので、55万人に接種した場合、総額は約270億円となる。

 これに対しして、子宮頸がんの新規患者数は、毎年約15,000人、子宮頸がんによる死亡者数は、毎年約3,000人と推計されているが、HPVワクチンによって、すべての子宮頸がんが予防できる訳ではなく、凡そ7割程度が予防できるに過ぎない。HPVワクチンで予防できない残りの3割の子宮頸がんは、すべての女児がHPVワクチンの接種を受けたとしても、依然として発生し、その内の一部の人々は死亡する筈である。

 また、HPVに感染してから子宮頸がんを発症するまでには、10年以上、おそらく20年程度の歳月を要するので、ワクチンによる予報効果が現れるのは、早くても今から10年後、実際に子宮頸がん患者が減るのは、20年後である。
 つまり、毎年270億円の税金を投入しても、向こう10年は、目に見えた成果(子宮頸がん患者の減少や死亡者の減少)は現れず、医療費の削減効果もないということになる。

 結局、毎年270億円の税金を投入した結果として、10年から20年後に、子宮頸がん患者を10,000人余り減らし、子宮頸がんによる死亡者を2,000人余り減らすことができるだけである。
 患者一人当たりとしては、約270万円、死者一人当たりとしては、約1,300万円の税金を投じる計算になる。

 HPVワクチンの公費助成は、税金の使途として、妥当なものなのかどうか、国民・納税者各位、大いに議論して欲しいものである。


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子宮頸がんワクチン接種に公費助成を 厚労相前向き
【2010/7/21 日本経済新聞】

 若い女性に急増している子宮頸(けい)がんをめぐり、日本産科婦人科学会や市民団体など計23団体の代表が21日、厚生労働省で長妻昭厚労相に面会し、予防ワクチン接種の公費助成を要請した。
 厚労省や団体関係者によると、長妻厚労相は「重要な問題で前向きに取り組みたい」と表明。公費負担について議論を始めている厚労省予防接種部会に新たに小委員会を設置し、さらに検討を進めると説明した。
 要請に訪れた日本産科婦人科学会の小西郁生常務理事(京大大学院教授)は「毎年約3500人が亡くなっている。この病気を日本からなくしたい」と訴えた。
 子宮頸がんのワクチンは半年間に3回接種が必要で費用が5万円前後かかり、公費助成を求める声が高まっている。