不定期連載「蟹さんと読む韓国経済」 第1章貯蓄銀行構造調整 その2 | Korea Economic News by KANI

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ミ( ゚w゚)彡 <8月26日のエントリー の続きになります。コメントを参考にして記事引用部をイタリックにしてみました。


「蟹さんと読む韓国経済」
 第1章 貯蓄銀行構造調整

 これら貯蓄銀行の経営を悪化させた主犯は、PF(プロジェクトファイナンス)だと明らかになっているが、PFの不良化は貯蓄銀行だけではなく、大手都市銀行はおろか、不良債権処理を担う国策機関ケムコ(韓国資産管理公社)まで頭を痛めている問題だ。冒頭から貯蓄銀行事件を取り上げたのは、貯蓄銀行に限らず韓国経済に共通する問題として、経営陣の意識に注目する必要があるからだ。

 営業停止から1週間ほど経った2月28日、金錫東(キム・ソクトン)金融委員長は国会政務委員会に出席して「貯蓄銀行が大株主の個人金庫のように利用されることを防止して、貯蓄銀行の健全経営を誘導する」、「不良発生時には経営責任の追及を強化する部分も対策に含ませる」と発言している。
 韓国の企業オーナーにとって会社は我が物であり、公器という概念が薄いというのは、財閥家での資産譲渡の事例からもうかがい知ることが出来る。たとえば財閥家の子女は幼いうちから両親や祖父母が所有する企業株を譲り受け、10代にして所有株の評価額が億ウォン台に達している例も見ることが出来るほどだ。わざわざ「大株主の個人金庫のように利用されることを防止」と発言することが必要なほどとあっては、金融機関の経営どころか、信用経済に参加する資格を疑わなければならない。さらに大株主の個人金庫であるから、私的に流用したり、私的財産と混用して運用する行動がとられていても不思議ではない。
 このような乱脈経営を防ぐために、韓国の相互貯蓄銀行法では大株主とその家族(およびそれらが経営している企業)への融資は禁止されている。しかし3月2日には釜山貯蓄銀行グループの大株主と経営陣21人が検察に起訴され、釜山貯蓄銀行グループが他人名義で会社を設立し、大株主の力を背景に融資を行わせていた容疑が明るみに出た。

釜山貯蓄銀行PF不良の実態 【東亜日報 2011年3月25日】
http://news.donga.com/Economy/3/01/20110325/35864563/1
系列会社を装って巨額融資、ゴルフ場許可出なければわいろ攻勢

 大株主らは1998年の外国為替危機で不良融資規模が大きくなったことから、投資金回収リスクを避けるため、2002年にPF(プロジェクトファイナンス)関連特殊目的法人(SPC)のT建設を設立した。事実上の偽装系列会社であるT建設は、釜山貯蓄銀行グループPF融資の事業性検討を引き受け、直接施行事業に進出していたことが分かった。大株主らは投資成功可能性が高いと判断されれば、その事業だけ主管する新しいSPCを複数設立して事業を推進した。大株主らは銀行役職員の親戚の名前を借りてT建設の役員に登記し、2009年にはこの会社に95億ウォンを融資して、相互貯蓄銀行法に違反したという容疑がもたれている。

 大株主といえども、個人で不動産開発事業に乗り出すことは手にあまり、資金も不足する。しかし手元には貯蓄銀行という金庫がある。大株主が儲かりそうだと判断すれば、ろくに審査も行われないまま融資を実行させていたわけだ。こんな経営陣が取り仕切る貯蓄銀行へ預金した客こそ良い面の皮だが、経営陣の面の皮はとんでもない厚さに達していたようだ。見出しには「ゴルフ場許可出なければわいろ攻勢」とあるが、T建設が提案したゴルフ場建設に乗り出して土地を購入するところまでは事業を進めたものの、水源地に近いと言う理由で自治体から建設許可が下りなかったのだ。困った関係者は郡長に賄賂を贈って解決を依頼したという。もちろん、と言っていいのかよく分からなくなってくるが、大株主らはこのとき事業妥当性の調査などは行っていなかったとも記事は伝えている。

‘不良’釜山貯蓄銀行、大株主の息子に数百億違法貸し出し
http://news.khan.co.kr/kh_news/khan_art_view.html?artid=201103252137445 【京郷新聞 2011年3月25日】
銀行頭取など6人立件
 不良金融機関と指定されて営業が停止された釜山貯蓄銀行と系列銀行が、大株主の息子が経営する美術品ギャラリーに362億ウォンを違法に融資していたことが明らかになった。

 これも財閥家の資産譲渡と同根の問題がある。財閥家の子女が社会人になるにあたって、自分の会社に入社させる例と、会社を設立してやり経営を行わせる例がある。広告業や高級服飾品、高級飲食店が最近は人気だそうで、そうしたバブルな雰囲気をこのギャラリー経営者の息子にも感じることが出来る。

 2011年4月には、営業停止直前に大口顧客に預金引き出しの便宜を与えていたことが明るみになった。

6貯蓄銀で営業停止前夜に‘VIP預金’引き出し 【東亜日報 2011年4月26日】
http://news.donga.com/Economy/3/01/20110426/36693048/1
“役職員ら、親戚の預金引き出し”全3276件1056億ウォン
金融監督院、職員介入の有無捜査
 検察庁中央捜査部(部長キム・ホンイル検事長)は、釜山貯蓄銀行グループ系列銀行5行で、営業停止直前に大規模に預金が引き出された事実を把握して、不法性の有無を確認するために捜査を拡大している。

役職員、連絡つかない親戚の預金を勝手に引き出す 【朝鮮ビズ 2011年4月26日】
http://biz.chosun.com/site/data/html_dir/2011/04/26/2011042600095.html
金融どん詰まり…釜山貯蓄銀、財産家や医師などVIP30人にもあらかじめ情報提供
シャッター下ろして閉店後の夜中に'引き出し大騒ぎ'
貯蓄銀事態から2ヶ月が過ぎても、金融監督院は引き出し全貌把握できず
 釜山貯蓄銀行の4支店は、営業停止措置が下される前日の2月16日夜は不夜城と化した。午後4時に営業を終了してシャッターをおろしたが、内部では役職員とその親類縁者、そして一部VIP顧客の預金を確保するために忙しく動いた。営業停止が切迫しているという情報を事前に知って、急いでお金を引き出したのだ。一般顧客ははるか遠くに知らずにいて、次の日に営業停止通知という撤退をむかえた。
 営業停止を感づいて、事前にお金を引き出した役職員とその親類縁者だけで200人を越えていると金融当局は把握している。これらは営業停止前日の16日に、集中的に預金を引き出していたことが明らかになった。釜山貯蓄銀行の全役職員が97人(契約職24人含む)だということから見ても、少なくない職員がこっそりとお金を引き出すことに加担したわけだ。

 金融機関の営業停止という、場合によっては国家の経済を揺るがしかねない判断は秘密裏に検討が行われなければならないし、経営幹部がそれに感づいたとしても行動できないように監視していなければならないはずだ。当事者である金融監督院の監督が不十分だと指摘されたほか、監督院は営業時間外に顧客の要請もないのに引き出してはならないと文書で指導していたが、これを無視されたと主張している。さらに検察は、金融当局関係者が営業停止の情報をもらしていた疑いもあると見て捜査を開始した。検察が疑いを持っているというのは単に可能性レベルの問題ではなかった。この営業停止前夜の預金引き出しが報じられる前日の25日、宝海貯蓄銀行からの収賄で金融監督院の検査担当幹部が逮捕されているのだ。

宝海貯蓄銀行からわいろ…金融監督院幹部逮捕 【光州日報配信 東亜日報掲載 2011年4月26日】
http://localen.donga.com/News_List/Honam/3/0204/20110426/36696566/1
 光州(クァンジュ)地検特捜部(キム・ホギョン部長検事)は25日、宝海貯蓄銀行を管理・監督する過程で巨額の‘支援金’を受け取っていた容疑(収賄)で、金融監督院2級検査役チョン某氏を逮捕して取り調べている。
 検察は、金融監督院貯蓄銀行サービス局で貯蓄銀行管理業務を担当していたチョン氏が、宝海貯蓄銀行を管理する過程で数千万ウォンを受け取っていた情況を把握して捜査を行っている。

 さらに1ヵ月後の5月には金融監督院の幹部や預金保険公社職員も、検察の捜査対象に加わっている。

釜山貯蓄銀行検査に手心、金融監督院幹部に億台贈賄 【東亜日報】 
http://news.donga.com/Society/New/3/03/20110525/37504321/1
 釜山貯蓄銀行グループのロビー疑惑に対する検察捜査の過程で、金融監督院副院長補クラスの現職高位幹部が巨額のわいろを受け取っていた手がかりが捉えられ、検察が捜査中であることが24日確認された。
 大検察庁中央捜査部(部長キム・ホンイル検事長)は、釜山貯蓄銀行グループに対する検査結果を揉み消して、不良に目をつぶる代価として、現在の金融監督院副院長補で在職中のK氏に、数千万~1億ウォン台の賄賂を渡していたという関連者の供述を、釜山貯蓄銀行関係者から確保して、事実を確認している。
 検察は、K氏が2000年代初めから貯蓄銀行検査などを実務総括する職務を担当している間、釜山貯蓄銀行グループ大株主らと親交を重ね、検査に手心を加える代価として金を受け取ったと見ている。釜山貯蓄銀行グループが融資した2400億ウォンの資産健全性が不当に分類されて、貸し倒れ引当金が不足したまま積み立てられたほか、ハイリスクなプロジェクトファイナンシング(PF)事業を、大株主が直接運営している事実を摘発しても、これを黙認していたという。

 もちろん、こうした贈収賄の存在は営業停止直後からうわさされていて、金融当局だけでなく、主に釜山地域選出の国会議員が関わっているという疑いがもたれた。しかもややこしいことに、前盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領から現李明博大統領へ政権与党が交代しているために、与野党間で「A議員はこんな取引をしていた」、「そっちこそB議員がこんなことをしているではないか」と泥仕合が始まってしまった。乱闘がたびたび展開される韓国の国会だが、このときは国民の批判に耐えられなかったのか、2011年6月3日に無闇な暴露戦は止めようという紳士協定を結んでいる。しかし、同日開かれた司法制度改革特別委員会検察関係法小委では、最高検察庁中央捜査部の捜査機能廃止案に合意するという奇妙なことが起きていた。
 この中央捜査部はこれまでの記事に頻繁に出てきたように、貯蓄銀行事件捜査の中核を担っていた部署であり、突然の合意に強く反発して、取り調べ対象の参考人を帰宅させるなどで対抗した。もちろんこの件に関しては、事実上のストライキを行った検察も、保身のためだと言う疑惑から逃れられない与野党も強い批判を受けている。