福岡からの手紙 -25ページ目

私の上司

私の上司は左腕がありません。子どもの頃に事故で失ったのだそうです。

緩んだ靴ヒモを結び直す時、固いペットボトルのふたを開ける時、傘をたたむ時、重たいものを運ぶ時、資料をファイリングする時…

片腕だと、ちょっとしたことが不便です。何とか自分でやることもありますが、人に手伝ってもらうことが多いです。

ちょっとした身の回りのことを人に頼まなければならない。腕を失った当初は大いなる屈辱を感じたのではないかと思います。

しかし「片腕を失ったからこそ、今の彼がある」と思えるところがあります。

「人にモノを頼む立場」を強く意識して生きてきたのでしょう。彼は上司としての権威を振りかざしたり、横柄な態度をとることは絶対にしません。誰に対しても謙虚であり、誰のどんな話に対しても真剣に耳を傾けます。

彼は人一倍よく働きます。朝出社するのも一番早く、休日に事務所で仕事をしている姿もよく見かけます。人にモノを頼む以上、自分自身もできる限りのことを精一杯やる。そんな哲学を感じます。

そんな彼の周りには自然といろいろな人が集まってきます。私もそのうちの一人。そして彼はその人脈を利用して新しい仕事をプロデュースしていくのです。

また、何をしても人より時間がかかる彼は、常に人より一歩先を見て準備し行動します。飛行機や新幹線から降りる準備をするのは、いつも車内で一番。集合場所に来るのもいつも一番。

そんな彼は、仕事でも常に人より一歩先を見て、私たちに的確なアドバイスをします。

彼はまさに理想の上司です。そして、その資質は片腕を失ったことで身に付いたのではないかと思えてくるのです。

何かを失うということは、何かを得ていることなのかもしれません。

失った時には気が付かないけど、後で「そうだったのか」と思うものなのでしょう。

失ったことをいつまでも悔やむことなく、立ち直りが早いほど、得たものに気付くのも早いのかもしれません。

何かを失った時に、「今は何かわからないが、きっと何かを得ているはずだ!」と思うことができたら…

すでに彼はその域に達しているのかもしれません。

目標達成

元旦にランナー復活宣言してから2ヶ月弱。秋頃には10キロ完走できればいいなと漠然とした目標を立てていましたが、半年以上も前倒しで今日達成することができました。

今にして思えば、この目標は低すぎました。しかし始めた当初は1キロ走るのも辛く、仕事が忙しい5、6月にトレーニングを中断すると、目標達成は難しいかなと思っていたのです。

初めの2、3日は走るのが苦痛でした。復活宣言してしまった以上、止めるわけにもいかず、仕方なく走っていました。

しばらくすると、前回よりも速く、楽に走れるようになったことに気が付きました。走るたびに成長している自分に気が付いたのです。

こうなってくると、走るのが楽しくてしょうがない。今日はどのくらいで走れるだろう?とワクワクしながら走るようになりました。

少しずつ速く、少しずつ長く走るようにした結果、今日の目標達成となったのです。

それにしても、自分が成長しているという実感は強力なモチベーションですね。

いかにしてスタッフに成長実感を持たせるか?
上司の役割として、この重要性を改めて思い知ったのでありました。

上司も辛いのです

産休に入る人、産休から復帰したばかりの人、うつ病を発症して職場復帰を果たした人。いずれも私の部下です。

彼ら(彼女ら)はそれぞれ理由があって、残業ができなかったり、出張ができなかったりするため、業務量を手加減する必要があります。その分の負担は誰かが背負わなければなりません。

これをどのように負担させるか?そして快く負担を引き受けてくれた人にどのように報いるか?

上司が配慮すべきは彼ら(彼女ら)だけではありません。むしろ、彼ら以外の人たちに対する配慮の方が重要です。

それ以上に重要なのがチームの負担能力です。このご時世ですから、余力のあるチームは多くありません。大胆な業務の見直しをしなければ、彼らの受け入れ余地を見出だすのは困難です。そしてこれも上司の仕事なのです。

人材の多様化は、長期的に見ればチームに活力をもたらします。しかし短期的には現場の上司に大きな負荷がかかるのです。

上司の能力にも限界があります。このため、短期的に見れば、職場復帰する人たちの受け入れが進んでいないように見えることもあるでしょう。

復帰する人から見れば、自分自身が受け入れてもらえない、理解してもらえない、差別されていると感じるかもしれません。

しかし、長期的に見れば、事態は間違いなくいい方向に進んでいます。うちの事務所でも、子育てしながら働く女性が増えました。うつ病から職場復帰した人もいます。

受け入れる側も学習しています。最初は戸惑いも多かったのですが、慣れてくると彼らにも少々の無理を頼めるようになりました。

更に、今までは負担をかけていた人たちも、やがては負担を引き受ける側になります。彼らは経験者であり、よき理解者ですから、ここまで来るとそのチームは強いですね。

職場復帰する人も受け入れる側も、短期的には辛いかもしれません。しかし事態は確実にいい方向に進んでいます。更にいい方向に進めるためにも、お互いの立場を理解して、諦めることなく頑張るしかないのだと思います。