口屋内沈下橋へと降りていく。


川原でおじいさんとおばあさんが川漁の準備をしている。網を手入れしているのだろうか。たたんでいるのだろうか。


川漁をしている所を見るのが好きだ。


ついさっきも、舟が川面をゆったりと進むのを自転車を止めてしばらく眺めていた。


おじいさんとおばあさんは全く言葉を交わさない。黙々と作業を進めてゆく。きっとこれまで何十年も共にやってきたであろう、いつもの作業を黙々と。


沈下橋の縁に腰を下ろし、そんな様子をずっと眺めた。


前回ここを訪れた際は気が付かなかったが、口屋内沈下橋は他の沈下橋とだいぶ趣きが異なることに気がついた。


橋のすぐ横に民家が密集して建っている。

反対側の岸のすぐそばには小学校が見えている。


生活圏がものすごく近いのだ。

生活圏と接している。

いや、生活圏の中に沈下橋があると言っても過言ではない。


民家から、誰かを呼ぶ声が聞こえたような気がした。


なんかいい。


三里沈下橋ではトラックの轟音さえなければなぁ…と思ったが、ここでは民家から聞こえてくる生活の音がさらにいい感じを醸し出している。


あぁ、なんて居心地がいいんだろう。


半年間待ちに待ってやっと訪れた口屋内沈下橋は、予想以上に良かった。


今なら大丈夫だろうか?

左右を確認する。視界の中にはおじいさんとおばあさん以外に人はいない。


橋の縁に寝転がってみた。


むふ~ん♪


視界いっぱいに青い空と白い雲。

はるか上空には悠然とトンビが浮かんでいる。


水の流れる音が優しく耳をなでる。


時折、魚が跳びはねて着水する音がいろんな方向から聞こえる。


どこかでトンビが鳴いている。


トンビは見た目はカッコいいのに、鳴き声は素っ頓狂でかわいい。


民家が防音壁になっているのか、車の音は聞こえない。


あぁ、気持ちいい。


気持ちいいなぁ…


























…( ゚д゚)ハッ!


いかん!いつの間にか眠ってしまっていた。


キョロキョロ辺りを見回す。


良かった。通行人はいない。


あと目覚めた所が水の中じゃなくて良かった(笑)。


またいつ眠ってしまうかわからない。

やることをやっておくことにしよう。

通行人がいないうちに、「沈下橋に寝転がってみたい!」の達成写真を撮っておこう。


ボクのスマホのカメラのセルフタイマーは10秒だ。


タイマースタート!

ダッシュ!

急いで寝転がる!

待つ…

パシャ

むくり。


出来映えを確認する。

イマイチ


タイマースタート!

ダッシュ!

急いで寝転がる!

待つ…

パシャ

むくり。


5回くらい繰り返した。


はた目には、一人で橋の上でビーチフラッグでもやっているかのように見えたことだろう。


結局、満足な写真は撮れなかった。

まぁいいや。橋を独占するような行為だ。

あんまりやるわけにはいかない。



さて、本でも読みたいところだが、ブログネタもたまっている。

1ヶ月前の旅について書いているような状態がずっと続いている。


結局ブログを書いてしまった。


沈下橋で寝転がってみたい!は、達成できたが、本を読みたい!は、達成できなかった。


ブログを書いていたら、小学校の方からバイクがゆっくり走ってきた。


しゃえんじりで会った方だった。


しゃえんじりを出た後に、支流の黒尊川の上流を見に行ってきたそうだ。

黒尊川はボクも前回見に行った。

僕「中流と下流の美しさはどこにもない美しさですけど、上流の渓谷はどこの川もキレイだから、黒尊川もまぁ確かにキレイなんですけど、ま普通かなって思いました。」

と言うと、全く同感だと言っていた。


バイクの方は語る。

口屋内沈下橋が一番好きなのだそうだ。理由は生活圏が異様に近いから。

生活と景色が溶け合ってひとつになってる感じがする、と言う。

小学校が終わると、小学生がわらわらとこの橋を渡って帰るらしい。

前回それを目の当たりにして、いたく感銘を受けて気に入ったのだとか。

今回はそのシーンは見られなさそうだと、残念がっていた。


ボクとよく似た感性だ。

やっぱりあなたもその理由でここですか!

と意気投合し、上気して語り合った。


連絡先を聞いておけば良かった。



3時間くらい口屋内沈下橋でのんびり過ごしたが、地元の人の通行は一人か二人あっただろうか?ちょっと思い出せない。

はっきり思い出せるのは、ボクと全く同じ理由で口屋内沈下橋が一番好きだと言うバイク乗りが、一人通行したことくらいだ。

それと、おじいさんとおばあさん。



やっぱり口屋内沈下橋は最高だった。



すぐにでもまた行こう。



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しゃえんじりを出て駐輪場から自転車を出そうとしていたら、バイクが入って来た。


後ろにテントやら寝袋やらをたっぷり積んでいる。


こ~ゆ~バイクや自転車は大好物だ♪


まじまじと積んである荷物をなめまわす。


何だったか忘れたが、ずっと欲しいと思っているアイテムが積んであった。


「うわ!○○だ!いいないいな~。これずっと欲しいと思ってるんですよ~。」


少し話をした。


若い頃に日本中を旅してこの辺りをたいそう気に入り、転職の合間を利用して今回20年振りに再び訪れたのだそうだ。


今流行りの転職旅行だな。


転職旅行の市場規模は1290億円程、卒業旅行や野球やサッカーのアウェイ観戦旅行よりも大きな市場になっているそうだ。


なんだと?アウェイ旅行が負けているだと?そりゃいかん!もっとアウェイ旅行に行かねば!(ボクはJサポでもある。)


そう言えば、阿蘇で出会ったドイツ人ウルスも転職旅行中だったな~。


「ここめっちゃうまかったですよ。特にナスがうまかったです。」


バイクのおじさんと別れ、自転車に乗る。



口屋内沈下橋に着いた。

半年前に来た時はまだ補修工事中だったが、どうやら補修工事は完了したようだ。出来たてホヤホヤの真っ白なので、補修された箇所が一目瞭然だ。


なぜここが一番お気に入りなのかを説明したい。手短に説明するのは不得手なので、たぶん長くなります。お覚悟!(笑)。


初めて佐田の沈下橋を訪れた一年前…(そんなにさかのぼるの?うげぇマジ長そう)、カップルがこんな会話をしていた。


「こうやって縁に座るんだよ。」

「やだちょっと怖い~。」


あと一歩を踏み出せない若者の背中を、ポンとひと押ししてあげたくなる。そろ~り。


てかボクも座ってみたい!


そのカップルが去るのを辛抱強く待った。


そのカップルの会話から縁に座ることを知ったので、すぐに座るのはなんだか恥ずかしかった。


カップルは去った。座ってみた。


うひょ~♪気持ちいい~♪


これはいいわ。


プラプラさせた足の下を水と風が流れていく。


あぁ気持ちいい。このまま眠りたくなってくる。


( ゚д゚)ハッ!  閃いた!


寝転がったらもっと気持ちいいかも!


でもそれはちょっと無理。


観光客や地元の人が徒歩や車で後ろをよく通過する。


寝転がったら往来の妨げになる。


ボクは気に入った所では大いにはしゃいで走り回るが、周りの人の迷惑にはならないように注意しているつもりだ。


寝転がってみたい。

ゆっくり本を読みたい。

暖かいコーヒーを飲みたい。


願望は次々とエスカレートするが、無理だな。

てか、当たり前か。橋は本来、往来する所であって、寝転がる所ではない。


危ない危ない。ヒンシュクな観光客になる所だった。



その半年後、前回の四万十旅で初めて口屋内沈下橋を訪れた。


補修工事中のため車輌通行禁止、と書かれた車どめが橋の入り口をふさぐように置かれていた。


こっ!これは!


車が入ってくることは絶対にない。

他の沈下橋のように大きな案内看板はない(たぶん)。

川沿いの道と橋の間にはたくさん民家が建っているので、道からはほぼ見えない。

よそ者にはとてもわかりにくい所にある。

観光客はまず来ない。

言うなれば、隠れ沈下橋だ。


ベストオブのんびり過ごせる沈下橋発見!

ヒーハー!!!


しかしその時は他にも回りたい所がたくさんあり、そこでのんびりする時間はなかった。


ぬぐぐぐ…!せっかく最高にのんびり過ごせる沈下橋を見つけたのに…!

次回こそは!次回こそは必ずここでのんびり過ごしてやる!

それまで待ってろよ!覚えてろよ!じゃあな!あばよ!いい夢見ろよ!…オレが!


いい夢を見て、半年間想いを熟成させた。


今度こそあそこでのんびり過ごすぞ~♪

地元の人の散歩や通行に注意すれば、少しくらいなら寝転がっても大丈夫かな?

本は何を持って行こうかな~?
読み終わったお気に入りの本がいいかな?
まだ読んでない本がいいかな?

コーヒーは、近くの自販機でミニペットカフェオレだな。マウントレーニアは近くにコンビニがないから無理だろう。


今思うとその日が雨という可能性もあるのに、半年間の妄想の中ではもし雨だったらどうしよう?という考えは微塵も浮かばなかった。


アホなんだな(笑)。
ホントにいい夢見まくってるよ(笑)。


口屋内沈下橋は一番お気に入りの沈下橋だから、きっと文が長くなるだろうと思ってはいたけど、やっぱりベラボーに長くなってるや(笑)。

あんまり長いので一度ここで切ることにします。



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折り返し地点の岩間沈下橋を出発し、川沿いの道を下る。



川沿いの道の上流の方には、車一台しか通れないような道幅の狭い区間がままある。



ボクは普段からめっちゃ車に道を譲るが、ここは大好きな土地だ。その意識はさらに高まる。

車に気付くと素早く避けられるスペースを探して退避し、スマホをいじったりペットボトルの飲み物を飲んだりする。

あ、別に道を譲ってるわけじゃなくて休憩してるだけですから、どうぞお気になさらず。



しかしそんな風に譲りまくっているにも関わらず、相手も譲らない。じゃなくて譲ってくる。

いやいや、ボクはこのヘコんだ所にうまいこと退避してますから、どうぞどうぞ。

いやいや、あなたは自転車なんだし、観光でどこか遠くから来てくださってるんでしょ?どうぞどうぞ。

しばし譲り合うものの相手は折れない。最後にはボクが折れ、頭を下げて車のそばを通過する。



小さなコミュニケーションだが、こんな所も気持ちいい。



口屋内沈下橋に着いた。

通過する。



通過するの?

うん、通過するの。

行きも通過したやん!

帰りに寄るから行きは通過するって言うてたやん!

うん、通過するの。

口屋内沈下橋に行く前に、すぐ近くの農家レストランしゃえんじりで昼メシを食うから通過するの。



しゃえんじりがどんな所なのかは、よく知らなかった。なので、どんな所なのかを知るために行ってみた。



1000円で時間制限なしのビュッフェスタイルか。

いやバイキングスタイル?



ビュッフェとバイキングの違いをググってみた。

ビュッフェとはセルフ方式で好きな食べ物を取り、取った分だけ精算するスタイル。

バイキングとはセルフ方式で好きな食べ物を取り、固定料金で食べ放題。

てことは、しゃえんじりは食べ放題だからバイキングスタイルだな。



最近、食べ放題なのにビュッフェスタイルと言ってる店が多いような気がするけど、あれはビュッフェって言った方がオシャレな感じがするからそう言ってるんだろうな。

てかそういう使い方が多いから、もう本来の意味は薄れて、ビュッフェという言葉も食べ放題のバイキングと同義になってそうだな。



料理はこんな感じ。

どれもめちゃめちゃ美味しそうだ!



テーブル席に座っているおばちゃん達がめっちゃ話しかけてきてくれる(笑)。

僕「まずはちょっとずつ全部取って、2回目で気に入ったのをたくさん取ります!」

リュウキュウの酢の物を取っていたら、おばちゃんが覗き込みに来て言う。

おば「ほらほら、魚を全然取ってないじゃない。小さな魚の身が隠れてるからそれも取りなさいよ。」

僕「あ、ホントだ。ありがとうございます。ところでリュウキュウってなんですか?」

おば「え?知らないの?ホントに知らないの?こっちにおいで!見せてあげるから!もう!どんどん教えてあげたくなっちゃう!」

言われるままにおばちゃんに走ってついて行く。

店の外に出て、裏へと向かう。

おばちゃんは裏の勝手口を開けて入っていく。

えぇ?勝手に入っていいの?

おば「ほらっこれよ。これがリュウキュウ!」

後で調べたところ、リュウキュウとは高知や徳島特産の農産物で他県ではハスイモと呼ばれることもあるらしい。

それにしてもさっきのおばちゃんの勝手に勝手口進入はなんだったんだろう?

それくらい許される程の常連さんなのだろうか?

それとも普段は厨房の中にいるスタッフさんなのだが、今日は休みで昼ごはんを食べに来ているということだろうか?



まぁいいや、取りまくり再開。

つがに飯!右にちょっと写ってるチラシ寿司もめっちゃうまそう!どっちにすればいいんだあぁぁぁぁ!よし!チラシ寿司はどこでも食える!ここはつがに飯だ!だ!

あめごとイノシシ!

どっちも食べたい!両方取る!

厨房のおばあちゃん「それはどっちかよ~。」

僕「マジすか!ぐわあぁぁぁぁ!どっちにしようぅぅぅぅぅ!」

あめごは石田ゆうすけさんの本に何度も出てきた。気になる度はあめごの方が上!

この二択はあめご!ご!



全部をちょっとずつ取ったのがこれ。

盛り方が下手くそだから絵ヅラは汚いが、全ての料理が感動するくらいすごく美味しかった。

1回目はちょっとずつ全部取って、2回目で特に美味しかった物をたくさん取るという作戦だったのだが、あまりにも全部美味しいので2回目もちょっとずつ全部取った。

さらに2回目を食べて終了のつもりだったのだが、まだ食べたくて3回目を取りに行き、またちょっとずつ全部取った。

普段の昼メシはパン1個という超少食のボクがだ。

バイキングはちょっとしか食べられなくて割高になるから絶対行かないと決めているボクがだ。



昨日のHata's Kitchenもすごく美味しかった。でも、あとほんのちょっと何かが足りなかった。

それが何だったのかが、やっとわかった。

おばあちゃんの味だ。

しゃえんじりの厨房には地元のおばあちゃんが三人いる。

並んでいる料理は、地元の食材を使った地元の郷土料理だ。



Hata's Kitchenがダメという訳ではない。

Hata's Kitchenもすごく美味しかった。


でもHata's Kitchenの料理は、地元の食材を使ったおしゃれカフェ料理で、

しゃえんじりの料理は、地元の食材を使ったおばあちゃんの手による田舎料理だ。


もしボクが四万十市に住んでいたら、Hata's Kitchenを多く利用するだろう。

だが旅の途上においては、是非ともしゃえんじりに行きたい。



この店は最高だ。

もっと早く来ておけば良かった。

地元の新鮮食材をたくさん食べることができる。

地元の郷土料理をたくさん食べることができる。

おばあちゃんの優しい味をたくさん食べることができる。

地元のおばちゃんが大勢たむろしていて、気さくに話しかけてくれる。

そして1000円ポッキリで食べ放題。

この店は最高だ。

もっと早く来ておけば良かった。



次回からは、元屋とここには必ず来ることにしよう。



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