前々回の記事にてコメントをいただいたので、私なりに回答させていただきます。
非常に長いです。
以下、ご質問です。
「過去のブログを拝見すると、TACの論パタの後は、新司法試験の過去問を解いていたとのことですが、
①過去問は司法試験受験までに何回回しましたか?
②過去問を回す時に、1回目、2回目、3回目…司法試験前最後に解く時の具体的なやり方はどのようなものですか?
(例えば1回目は答案構成のみで、解答を見る。司法試験で問われている内容を把握するだけ。2回目は実際に時間を計って解くなど…)
③新司法試験の過去問だけではもちろん論点のカバー範囲が狭いと思うのですが、他にどんな問題集を過去問を解く時に並行して使っていましたか?
④旧司を解いていた時期もあるとブログで拝見しましたが、どの科目の旧司をどのレベルまで解きましたか?
(例えば新司法試験に出てない部分の答案構成だけしたなど)
(中略)
なぜ私がこのような質問をしたかと言うと、毎日降ってくるローのタスクや課題があるので、過去問が1番大切だと分かっていながら、最優先に取り組めない状況にあります。
また私自身も力不足で、過去問の何も見ずに起案をできるレベルにありません。
時間的制約と自分の力不足という状況の中、どのような方法で過去問を解いていけば、自分がどんな知識や力を身につけられるか?を、けんさんの方法を参考にして、より深く検討したいなと思ったからです。」
このご質問、私も去年同じような悩みを抱いていました。
そういった悩みも含めて、なるべく具体的に書くように努めてみました。
結果的に、私が勉強したことのほぼすべてが記載されている記事となりました。
まず、①についてだけ先に回答すると、
①過去問を回した回数
憲法 1~2回
行政 1~2回
民法 0~4回
商法 1~4回
民訴 0~4回
刑法 1~5回
刑訴 2~6回
となっています。
ロー入学までにだいたい1周、刑事系はだいたい2周しました。
その後、司法試験までに回したすべての合計回数が、上記です。
基本的にH25~H28については多めに解いていますし、H18~H20あたりは0回のものもあります。
本来ならもちろんすべて解きたかったのですが、以下の理由でこうなっています。
【TACの論パタ終了後(2015年6月頃)からロースクール入学(2016年3月)まで】
時系列としては、勉強を始めた2014年10月から2015年6月まではTAC論パタと短答過去問(Wセミナー)だけしかやっていませんでした。そして、6月中旬の予備試験論文模試(辰巳・伊藤塾)を受験し、下位10%程度の成績でした(「メンタル面でマイナスになったとき」という記事の下の方参照)。そのため、成績の悪かった科目は何かしら勉強の方向性を変えないといけないと思っていました(なお、TAC論パタがダメだという趣旨ではありません。)
また、勉強開始から約9か月とはいえ、あまりに論文の成績が悪かったため、その時期にロースクールへの進学や転職活動もより詳細に検討し始めました。具体的には、ロースクールの説明会に参加したり、1~3月あたりにも行っていた転職活動の情報収集(転職エージェントとの面談やモアセレクションズという法務求人を扱う会社の説明会参加等)をしたり、TOEIC対策をしたりしました。そして、いろいろと検討した結果、某ロースクールを受験することに決め、当面はそこに合格することを目標として8月から再度勉強を開始しました。
とはいえ、なんだかやる気がでず、8月はダラダラとロースクール演習刑法を解いていました。
このような背景事情の中で、最終的なゴールを把握しておくために新司過去問に着手しました。
具体的には、憲法ガール・行政法ガール・商法ガールと、辰巳ライブ本を使用して、30分くらいで一応問題の分析をしてみて、解説を見るという形をとりました。1回目は、出題趣旨や採点実感もそこまで読み込んだわけではありません。とりあえずどんな雰囲気なのかを把握することに主眼を置いていました。
憲法なら、「なんか3段階で書いてるけど大島先生レベル高すぎでしょ。こんなん書けるのか?」とか、刑法・刑訴なら「事実めっちゃ多っ!書いてる量やばっ!」みたいなレベルです。
ただ、解説に比べると、1桁レベルの再現答案ですら見劣りしたので、「完璧を目指す必要はないんだな。」というのは実感できた気がします。そして、これが大事だったのかもしれません。
着手時期としては、9月15日に刑法の、9月20日に刑訴の、10月5日に行政法の、10月6日に憲法の、10月11日に商法の、10月13日に民法と民訴の過去問を初めて解いた記録があるので、そのあたりからやりだしたのだと思います。
また、10月から、どうせ答練を受けるならゴールに似ているほうがいいと思い、伊藤塾のペースメーカー論文答練を受講しだしました。基本的に答練の日程に合わせて、できるだけ過去問を解いていきました。
もっとも、11月中旬にロー入試があり、統治や手形なども必須だったので、10月中旬くらいからそういったマイナー科目も併せて勉強していました。そのため、そこまで過去問検討が進んだわけではありません。
ロー入試後、民法を中心に苦手だと感じていた科目を底上げするよう努めつつ、答練に合わせて新司過去問をやりました(答練の結果は過去記事にまとめました)。
このブログを始めたのもこの時期ですね。
2月くらいから短答もやり、3月中旬にTKC全国模試を受験しました(ちなみに模試は総合E判定でした)。
新司過去問は、民事系の大大問を除き、だいたい全科目1周はしたかなというくらいでした。刑事系は2周くらいしました。
そのあとは体調を崩したりしたので、あんまり勉強していなかったです。
【ロースクール入学(2016年4月)後】
ロー入学後は、授業の予習・課題・自主ゼミの答案作成・短答の勉強などで、新司過去問をほとんど解けませんでした。つまり、私もりんさんと同じように、目の前の課題をどうしてもこなさなくてはならない状況でした。時間的制約と力不足については後述しますが、諸事情を考慮した上でローのタスクを優先するのはやむをえないと思います。
予備短答後も、予備の過去問を解く程度が限度でした(しかも民法や民訴は予備過去問すらできず。)。そのすぐ後に定期テストがあり、8月上旬の夏休みにやっと過去問ができる、という感じでした。
ただ、夏休みも勉強以外の予定をわりと入れてしまい、「どうせ予備もダメだろう」と思っていたので、苦手意識のあった民法と民訴の旧司や問題集などをダラダラやっていました。9月になって民法・民訴の新司過去問を3年分くらい解いた記録はあります。
10月になって、予備に受かっていることが判明し、口述の勉強を必死でしました。11月は放置していた授業の遅れを取り戻しつつ、選択科目の勉強を始め、12月末までは選択科目をメインでやっていました。1月からはテスト勉強のためそちらに集中しました(サマクラ等の就活に影響するため)。
2月になって、ようやく論文過去問をがっつり解いていきました。ただ、選択科目が全然進んでいなかったので、選択科目にそれなりに時間を割きました。TKCでは短答がゴミだったので、そこから毎日3時間くらい短答に費やしました。
ということで、H18~21あたりは1回しか解いていないことも多く、比較的最近の問題で冒頭の回数、という感じです。
なぜこんなに後手後手にまわってしまったかというと、繰り返しになりますが、わりとロースクールの勉強が重かったからです。そして、予備試験合格後もローを中退しなかったからです(中退しなかった理由は後日書くかもしれません)。
確かに、以下の③で書くように、網羅性の比較的高い問題集を授業で扱っていたので、一定の事項は書けるようになりました。そのため、全く無関係な勉強をしていたわけではありません。しかし、いかんせんハイレベルすぎて、直接的に点に結びつかない(しかし、定期テストを考えると手も抜けない)ものも多かったです。
ただ、だからといって、「ロースクールはダメだ」ということには必ずしもならないと思ってまして。このあたりの話は本筋とずれるので今回は書きませんけど。
②具体的な解き方
ロー入学前の分(つまり、ほとんどの問題の初回)については、上述のとおり、答案構成のみ30分くらいして、全然わからなくてすぐ解答を見た感じです。問題の傾向をなんとなくつかむことを意識していました。
ただ、直前期の2月あたりで、H27やH28の問題のうちやっていなかったものが一部あったので、そういうものは初見で答案まで書きました。
この辺の時期は、どちらかといえば、再現答案を市販の本やネットで集めて、500番~1000番くらいの人ができている部分とできていない部分をざっくりと見極めることを意識していました。
2回目以降で時間を計って答案化したものは3通くらいかなと思います。初見の問題の答案化は答練や模試でやればいいと思っていました(結局、司法試験受験の年の答練はすべて答案化できませんでしたが…)
他は、30分くらいで構成だけして、論点抽出ができるかとか、典型的な規範を記憶できているかとか、充実した当てはめを書くとしたらどう書くかとかを考えつつ解いていました。
民事系なら法律論がメインになりますし、刑事系なら当てはめがメインになりますね。公法はそんなに繰り返さなかったんですが、誘導にのって枠を外さないことくらいですかね。
③問題集
憲法 なし(新司過去問と答練のみ)
行政 授業、事例研究と原田演習のつまみぐい(特に救済法)
民法 授業、民法総合事例演習(授業で使用。1部・2部・少しだけ3部)、伊藤塾予備試験用試験問題集、工藤北斗の実況論文講義、少しだけ事例で学ぶ民法演習と池田事例演習1・2
商法 授業、会社法事例演習教材(授業で使用。1部・2部)、少しだけ論文演習会社法上下、数問は事例で考える
民訴 授業、伊藤塾予備試験用試験問題集、少しだけ基礎演習民事訴訟法とロースクール演習民事訴訟法
刑法 授業、ロースクール演習刑法、事例演習教材(半分くらいを1周だけ)
刑訴 授業、工藤北斗の実況論文講義、事例研究刑事訴訟法(半分くらい)、事例演習刑事訴訟法(さらっと1周)
選んでいる基準としては
①授業で使用しているもの
②基礎を固めるためのもの
③書評等で定評のあるもの
です。
おそらく誰でも知っている問題集ばかりだと思います(なお、オススメできる問題集のリストであるとは必ずしもいえないのでご留意ください。)
時間的制約もあるため、もっといろいろやりたかったのですが諦めました。
伊藤塾予備試験用試験問題集と工藤北斗の実況論文講義は、かなり基礎的な問題が載っています。民法、民訴、刑訴は、予備試験であまり評価がよくなかったため(民法民訴は捨てていたのもありますが)、基本から学び直すために用いました。
あとは、見解が錯綜している場合の受験生通説を参照するため、工藤北斗の合格論証集(民・商法民訴・刑法刑訴)はちょこちょこ参照しました。
④旧司過去問
憲法 ロー入試前に統治のみ1周(統治がロー入試必須科目のため。柴田先生のもの)。人権はなし
行政 そもそもなし
民法 ロー入学前と既修1年の夏休みに菅野先生の合格思考民法を2周くらい。貞友ライブ本ももっていたが、結局ほとんどやれず。
商法 論文演習会社法に載っていた問題5問くらいを1周。手形についてはロー入試用に旧司ライブ本の典型っぽい問題10問くらいを2周くらい。
民訴 和田ライブ本を10問くらいと、藤田解析民訴の既判力のところの問題を1周。
刑法 ロー入学前に柴田先生のものを1周。
刑訴 工藤北斗実況論文講義にのってた問題2周くらい
旧司はもっときちんとやりたかったのですが、新司すら全部やれていなかったため、優先順位は落としました。
⑤悩んでおられる事項について
コメントしていただいたりんさんのお悩みとして、時間的制約と自分の力不足の2点が挙げられていました。
まず、時間的制約については、ローのタスクや課題を優先するのは仕方ないと思います。実際、私もローのものを優先していました。
ただ、過去問の傾向や相場観をなんとなくでよいので感じておくと、ローのタスクや課題と司法試験対策をリンクさせやすくなると思います。
具体的に書くとネタバレしてしまうので書きませんが、わりと幅広く出題されているので、ざっくりと論点を押さえておくだけでも条文や判例を読むときの意識が変わってくると思います。
その意味では、過去問への取り組み方も強弱をつけて、構成30分、解説と出題趣旨・採点実感を流し読みして1時間、みたいなやり方も取り入れてもいいかもしれません。私は、ロー入学前は基本書1冊すら持っていなかったので、調べるにも調べようがなく、こんな感じで1周していました。
あとは、私が実践しているのは、週ごとに時間配分を決めて、ローの予習・復習はなるべくその見積もり時間内に終わらせるようにすることです。
たとえば、週に56時間(8時間×7日)の純勉強時間(ストップウォッチ等で計測した時間)が現実的に確保できるとして、授業時間合計と科目ごとの予習・復習時間との合計時間を差し引きます(授業9コマなら13.5時間、予習復習に仮に20時間とすると、合計33.5時間)。そして、残り22.5時間の中で、ゼミや論文・短答の過去問に要する時間を配分します。ローの予習・復習は終わりがないのと、「できるだけローに残って勉強する」という姿勢だと体調を崩しやすいので、私はこうしています。
次に、自分の力不足について、私も過去問の起案は相当に心理的ハードルが高かったです。
というか、2時間での起案そのものが非常にしんどかったんです。なので、ロー入学前は、高い金を払ってわざわざ答練を受講して、起案をやらざるを得ない環境を作りました。
また、自分のできなさをあまり悲観しないように意識していました。というのも、出題趣旨・採点実感の記載内容をすべて網羅した答案を現場で書くことは不可能です。1位の人でもすべての網羅はできていないでしょう。その意味で、おそらく、「力が十分つく」という状況は永遠に訪れないと思います。私自身、直近の司法試験もいろいろやらかしていますし、予備試験もAが取れた科目でさえ不十分な部分はたくさんありました。
ただ、司法試験も経てみて思うのは、「典型問題を確実に解く」ことももちろん大事ですが、「わからない問題をなんとか時間内に形にする」ということも同じくらい大事だということです。そして、わからない問題は本番でも必ず出ます。そのような問題のさばき方は、力不足の状態で趣旨から規範をひねり出して、なんとか時間内に三段論法にするといった練習の中で培われるものだと思います(私自身まだまだ不十分ですけどね)。
また、勉強が進むにつれて、応用論点に悩むようになるとともに、ある程度完全解が頭の中にあるためどうしても書きたくなってしまい、全体の時間配分がうまくいかなくなりがちです。そういったことも、時間制限内で起案をする中で見えてくると思います。
そうすると、時間的制約があるためあっさりと過去問を検討すべきなのか、司法試験を解く力を身につけるためにがっつり起案をする形で過去問を検討すべきなのか、悩むと思います。
正直、私もわかりません。
私自身は、過去問は最初にあっさり検討して、起案は答練を通じて行うという形をとりました。
確かに、答練の問題は過去問に劣りますし、過去問を起案した方が力がつくのは間違いないと思います。
しかし、上記の通り、過去問の起案は心理的ハードルが高すぎましたし、各科目のゴールを知るために過去問をやるという側面が強かったので、過去問は基本的にあっさり検討するにとどめることにしました。
その上で、過去問を内容を忘れた頃にまた解いてみて、再現答案を見ながらなんとなく合格レベルを把握して、自分の弱点を分析して、次の答練や定期テストに活かす、といったことをしていました。
なお、力が不十分な状態でも解いてみるべきと書きましたが、民法と民訴については、ある程度網羅的に基本問題をやったあとで過去問に取り組んだ方がいいと思います(ただ、雰囲気を知るために解くのはアリだと思います)。
他の科目はどちらかといえば時間との戦いという側面が強いですが、民法と民訴は法律論レベルで難しいので、ある程度法律論を知識として入れておかないとどうしようもない面があると感じます(私が民法と民訴が苦手なだけかもしれませんが。)
こんなところでしょうか。
重複している部分もありますが、ご容赦ください。
何らかの参考になれば幸いです。