スイートルーム争奪戦 34 条件部屋にて | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

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V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


あの忘年会からしばらく経った仕事納めの日の条件部屋。



俺は着物姿でごろんとソファに寝転がっていた。



ストーブの上ではケトルがシュンシュン鳴って湯気を立てている。



結露した窓の側には盆栽と多肉植物が並び、条が指で窓をこすり、雪雲を眺めている。



宝はポケットからハンカチを取り出し、それでケトルの持ち手をくるんで持ち上げると、コーヒーを入れてくれた。



白シャツにベスト。ガタイのいいうちのマスター。立ちのぼる湯気に宝のきれいな顔が霞む。コーヒーのいい匂い。




「コーヒー入ったよ」



宝はサーバーをテーブルに置き、カップを3つ持って来て並べた。



うん。無駄の無い動き。職人だな。



俺はソファに起き上がると、正面に座ってカップにコーヒーを注ぐ宝を見た。



「あ。そうだ。健くん、聞いた?」



「なに?」



「実はイブの日にスイートルームに泊まったの、ラムちゃんなんだってさ」



「え?ほんとに?誰に聞いたの?」



「井ノ原校長本人から」



すると、窓際に立って外を見ていた条が振り向いた。



「マジか⁇やっぱ一緒に泊まろうって口説いてスイートルームゲットしたんだな。あのスケベ校長」



ニヤニヤしながらこっちにやって来る。




「んふふっ。それがさぁ、一緒に泊まった相手は井ノ原校長じゃないんだって」



「え?」



「どういうこと?」




条と俺は並んでソファに腰掛け、宝と向き合った。



宝の話では、お相手は、ベトナムから来たラムちゃんの恋人だったらしい。


井ノ原校長がわざわざ彼を日本に呼んで、ふたりにイブのスイートルームをプレゼントしたそうだ。



「ハッ!なんだよそのサンタ気取り!」



条はソファの背に腕を置いて足を組んだ。なんか俺、条に肩抱かれてるみたい。



「いや、でもそれ聞いたらね、スイートルームゲットできたの井ノ原校長で良かったなって思ったよ」



宝がそう言ってコーヒーカップに口をつけた。



「いやいや、お前もお人好しだな」



条が足を組んで、そんな宝を可愛い奴めって感じで見た。



「いや、だって井ノ原校長じゃないとできないでしょ。そんなこと。ラムちゃん嬉しかっただろうなぁ。やっぱ校長すごい人だよ」



宝はちょっと興奮気味に言って腕を組んで俺たちを見た。



俺は髪をかき上げ、目を細める。


「単に一緒に泊まる相手がいなかったからでしょ?俺だって、独り身だったらそうしたかも」



すると、隣で条も頷いた。



「俺もそうしたな」



「いや、お前はしない!」



俺は瞬時に条を振り向き、指差して言った。



「え?するよ」



「しないよ!お前こそ、彼女がいなかったら絶対ラムちゃんと泊まるだろ!ラムちゃんを彼氏から奪ってるって絶対!」



「絶対絶対ってお前、俺の何を知ってんだよ!」



「全部に決まってんだろ!」



「は?ふざけんなよ!」




「ちょっと!」



宝が俺たちの間に割って入る。



「ケンカすんなよ!ってか、健くん、冬期講習の時間大丈夫なの?」



って自分の腕時計をツンツン指差す。



「あ!まずい!今何時?」



俺は腰を浮かせて、宝の腕時計を見た。


自分の見ろよって条が突っ込んだ。