「すみません。ダメでしたか?」
「いや、ラムちゃんがいいならいいけど…って、え?何?もう勝敗決まっちゃってる感じ?俺はどうすりゃいいの?」
「あ、井ノ原校長、まだ口説いてなかったっけ?」
「口説いてないよ!お前ら年功序列とか言っときながら、勝手にどんどん順番抜かししてさー。坂本くんも宝も健も帰って来ねーし、どうなってんのかと思って見に来たら、お前…なに抜け駆けしてんだよ?ふざけんじゃねーよっ」
俺が怒ってるのに、条は腕組んでニヤニヤ笑ってるだけだし。まあ、本気で怒ってるわけじゃないけど?
すると、ラムちゃんが、
「あ、井ノ原さん、最後ですネ。はい、行きましょう」
って俺の腕を取った。
その事務的な態度に条がウケる。
「頑張って口説いて来いよ!」
「ふざけんなっ」
ラムちゃんに引っ張られる感じで、その場を離れた。
「で?どうする?ラムちゃん」
「井ノ原さんがどんなふうに口説くか見てみたいです」
「悪趣味だね。もう抱かれたい男は条に決まってんだろ?」
「うーん」
ラムちゃんが首を捻る。
「まだわかりません」
「ほんとに?でもキスしてたじゃん」
「井ノ原さんともしたくなるかもしれません」
ある意味プロだな。6人全員に口説かれるのが仕事だから、最後までちゃんとその仕事を全うしようとしてるのかな。
「条くん、セクシーだと思います。でも、抱かれたい人は絶対優しい人じゃないとイヤです」
「あ!じゃあ、条だよ!あいつの優しさ宇宙レベルだから」
「ほんとですか?井ノ原さんも優しそうです」
「いや、俺のは地殻レベル」
「地獄⁇」
「いや、地殻‼︎ 地獄レベルの優しさってどんなだよ!あ、地殻ってわかんないか。地球がお饅頭だとすると、皮だよ。宇宙に比べりゃ薄っぺらいもんですよ」
「はあ…。昌さんも、長野さんも、ジェントルマン。とても優しい。健くんは、サービス百点」
「満点ね」
「万点?百点じゃない?」
「まあ、それでもいいや」
「でもみんな…女の匂いがします」
「え?」
「女の匂い、プンプンします。心に思ってる人、いますね」
「ああ。そりゃまあ…だってスイートルームをゲットしようっていうんだから、一緒に泊まる相手が…あれ?でも坂本くんと長野くんはいないって言ってたけど?」
「でも、好きな人います。私、わかります」
「ふぅ〜ん」
「抱かれたい人、優しくてセクシー。でも、一番大事なのは…何ですか?」
「何ですか?って俺に聞かれても…。いや、でも一番大事なものっていやあ、そりゃ、愛でしょ!」
「ピンポーン!」
ラムちゃんがパチパチ拍手をする。
「みんな彼女に愛あります。私じゃない」
そりゃ、そうだ。ラムちゃん、これはゲームだよ?
そう言おうとして、言えなかった。
ラムちゃんの横顔があんまり寂しそうだったから。